『がんばろうKOBE』 | 中華の足跡・改

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大震災の悲劇から、11年。

11年前といえば・・・高校生か。

そういえば、震災の翌年に修学旅行で神戸にも行ったな。

そのころには震災の爪跡はごくわずかで、復興のスピードに驚いたものだった。


震災の後、プロ野球界の主役に一躍飛び出したのが、まさにその神戸を本拠地とする、オリックスブルーウェーブだった。

被災者たちに勇気と希望を、ということで、球団が選択したスローガンは「がんばろうKOBE」。

天才・イチローがチームを引っ張り、数年後にはリーグを制すると、その後数年は日本一を含め優勝を繰り返し、一挙に常勝球団にのしあがった。

もっとも、後にイチロー、田口などの主力選手が抜け、ここ数年はめっきり弱体化してしまったが・・・。


オリックスが人気・実力とも絶頂だったころ、ちょうど俺は大学生で、マリンスタジアムでビール売りのアルバイトなどをやっていた。

完全歩合制なので、なかなか厳しい仕事ではあるが、俺としてはタダで試合が見れるというメリットの方が大きかった、という事情もある。

それはともかく。

売り手にとっては、客は多ければ多いほどいい。

そして、その頃一番客が入るカードが、対オリックス戦だったわけだ。


時には、明らかにイチロー目当てでやってくる客もいた。

ある日、試合開始前にライトスタンド付近を歩きながらビールを売っていると、どうみても球場には縁のなさそうなオバサン四人組に声をかけられた。

「ねえ、イチローってどこ守るの?」

そのくらい調べてから見に来いよ、とか思ったが、バイト中の身なのでここは愛想よく答えておこう。

「ライトですよ」

するとオバサンはすかさず、

「ライトってどこ?」

「・・・ここです」

うーむこういうことすら知らずに球場に来るってのも、ある意味ツワモノかもしれない。

「じゃあ、ここで見てればイチロー見れるのね?」

どこにいたって見れらぁ、といいたいところだが、このあとビールを買ってくれるかもしれないし、我慢しよう。

「はい、打球を追いかけてすぐそこまで来ることもありますよ」

と、サービスコメントをつける。

「じゃ、ここでイチローの応援しましょ!」

と、オバサンがたはその場に陣取り始めた。

うーむイチローの応援するんならレフトスタンド行った方がいいんだが・・・ここはロッテファンに囲まれるぞ・・・?

――ちなみに、腰を下ろしたオバサンたちは、もう既に俺のことはすっかり忘れてしまったようで。

ビール4杯売れるかな、との俺の淡い期待は、あっさりと裏切られたのだった・・・。