長期優良住宅では、配管の維持管理の容易性 が求められます。
ちいの家の水道管は、基礎立ち上がり部(布基礎)に全て貫通させてあります。
基礎立ち上がり部の打設前に、配筋にスリーブを仕込み、
後から水道管を通すので、
出来上がると、給排水管共に、配管本体と基礎開口部の間に隙間が残ります
そのまま残しておくと、虫や小動物、特にシロアリの侵入が懸念されるので、
何かで埋めなければなりません。
ちいの家では、こうなっています。

配管と基礎コンの隙間を、追従性のあるシーリング剤でシールしています。
こうすると、地震が起きても配管や周囲の基礎コンの破損を防ぎつつ、虫や小動物の侵入も防げるようです。
基礎断熱のお家は、おそらくもっと念入りにされているかと思います(ちいの家は基礎通気工法です)。

ところで、この方法をとる場合、同時に「ソルベントクラッキング現象」の防止を念頭におかねばなりません。

接着剤製造メーカーや配管資材製造メーカーでは常識のようなのですが、
たまたまかもしれませんが、ちいの家を担当した工務店は知らなかったので、下記に抜粋引用してみます。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
日本シーリング剤工業会 2015
 ◇◇硬質塩化ビニル管・継手に対するシーリング材の適用◇◇

 集合住宅給水用配管(HIVP 20*)周りに1成分形シーリング材を使用したところ,配管に亀裂が発生し漏水を引き起こしました。
 塩化ビニル管・継手協会と共同で実施した不具合原因究明及び対策等に関しお知らせしますので,これらの部位に対するシーリング材の適用については十分注意を御願いします。
 注)HIVP:JIS K 6742(水道用硬質塩化ビニル管)に規定される「耐衝撃性硬質塩化ビニル管」

《不具合現象について》
 室内に配管されている給水用塩化ビニル管・継手の貫通部周りに1成分形シーリング材を適用したところ,時間経過後に配管が破損し室内に漏水を引き起こしました。

《不具合原因について》
 一般的にシーリング材にはゴム弾性を付与したり,施工時の作業性能を改善するため,液状の可塑剤や非反応性高沸点希釈剤(有機溶剤など)等が成分として含まれています。
 また,最近の上水道はレバーの開閉により瞬時に水を止める機構が増え,止水した際に一瞬圧力が上がり配管に膨張方向の応力が発生するケースがあります。
 硬質塩化ビニル管(以下塩ビ管という)に発生する変形(応力)とシーリング材に配合された液状成分の影響により塩ビ管に微細なクラック(亀裂)が発生し,さらに応力が繰り返し加わることによりクラックが成長し破壊に至ったものと推察されます。
 なお,圧力が加わらない排水用配管での破損事故は報告されていませんが,同様の現象が発生する恐れがありますので,ご使用の際は十分にご注意下さい。

《シーリング材成分の影響について》
 通常,同用途に使用されるケースが多いと考えられる1成分形のポリウレタン系,シリコーン系及び変成シリコーン系シーリング材 で配合されている液状成分の影響を確認しました。
 その結果,フタル酸エステル系可塑剤及び非反応性高沸点希釈剤の少なくともどちらか一方を配合しているシーリング材で,変形状態の塩ビ管表面にソルベントクラックの発生が認められました。 

《硬質塩化ビニル管・継手に対するシーリング材適用時の注意》
 クラック発生の原因がシーリング材に含まれるフタル酸エステル系可塑剤及び非反応性高沸点希釈剤であるため,これらの成分の有無をMSDS(製品安全データーシート)で確認されるかシーリング材メーカーへのお問い合わせをお願いします。
 なお,1成分形シリコーン系シーリング材はソルベントクラックの原因となる上記成分の配合は少ないものと考えられますが,シーリング材表面への被塗装性(シリコーン表面には塗料は付着しません。)及び雨掛り部で撥水汚染(目地周辺部の汚染)が発生しますので,仕様の事前確認をお願いします。


《硬質塩化ビニル管・継手に対するシーリング材推奨品》
注:プライマーを塗布しないこと
1成分形変成シリコーン系
会 社 名      商 品 名            備  考
サンスター技研  ペンギンシール2550HM       高モジュラス
          ペンギンインドアシールMS2551 室内専用
シャープ化学工業 シャーピーヘンセイシリコーンLM JIS F-20LM-8020低モジュラス

1成分形シリコーン系
サンスター技研  ペンギンシール2510       JIS G・F-25HM-9030 高モジュラス
                            脱アルコール形
          ペンギンインドアシールSR2512 JIS G・F-25HM-9030室内専用
                          高モジュラス 脱アルコール形
東レ・ダウコーニング SE960           JIS G・F-25HM-9030  高モジュラス■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
配管資材メーカーカタログの施工注意書を読むと、もっと詳しく書かれています。
また、シーリング材は、他メーカーからも適合するものが販売されていると思います。

ちなみに、ソルベントクラッキング現象は、水道管以外でも、意外とトラブルの原因になっています。
例えば、洗面化粧台の鏡が樹脂製扉から外れたという事例。
検証により、化粧品の成分が検出されたそうです。
化粧品(クレンジングとかマニキュアや除光液等)には、この現象を起こす成分がたくさん含まれています。
なので、お家を建てた人以外にとっても、知っておいて損はない知識と思います。

さて、写真の配管。普段は・・・


このような板金のカバーを被せています。
実は、3月16日の記事に書いたように、サッシ屋さんが網戸取り付け時に、網戸を落として配管を割ってしまったのです。
入居してからそのようなことが起きると復旧が大変なので、3人目と4人目の監督さんが、わざわざ作ってくださいました。

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