ターン・アラウンド・スペシャリストとして中小企業再生を手がけている筆者による、債務問題解決による事業再生手法を解説した本。

日本のこれまでの経済政策は大企業中心だが、中小企業こそ救済しなければならないという信念に基づく。そのためには債務に関する意識を改革し、しぶとく「守り」を固めることが重要である。また、中小企業の再生は金融機関の再生にもつながると考える。

第1章で、デフレスパイラルに苦しんだ後「産業再生機構」が誕生したことで、「日本型社会主義システム」が終了した、と考える。「事業再生こそが国是である」という政策の流れを解説する。

そのほか事業再生のための法律としてサービサー法、民事再生法、産業活力再生特別措置法、中小企業挑戦支援法、産業再生法、会社分割法、特別調停法と、様々な法整備がなされてきたことを紹介する。

第2章で、事業再生のためには再生対象の詳細な分析と共に、金融機関との交渉が重要であるとする。金融機関から受けている評価を元に本音を引き出す。

再生するにはその経営者の資質や環境が十分に整っていなければならない。

中小企業の場合、V字回復ではなくL字回復を目指して事業継続を重視すべきであるとする。

第3章で、いくつかの事例を紹介する。成功例も失敗例もある。中小企業の再生案件は事例ごとに対応策がまったく異なってくる。

第4章で、日本経済をデフレ対応にするために、「再保障制度の充実」「連帯保証人制度の廃止」「マイホームファンドの設立」の三つを提言する。
アメリカでは再保障制度が充実しているため、新事業を始めやすいらしい。

第5章で、回収業務に携わっていた筆者が、事業再生を始めるに至った半生を書く。

目次
 第1章 これが日本の中小企業再生スキームだ
 第2章 復活を可能にする心得とテクニック
 第3章 具体的な再生のケースに学ぶ
 第4章 「敗者復活アリ」の社会を創るための三つの提言
 第5章 なぜ私はターンアラウンド・スペシャリストになったのか

経済をマクロから見るわけではなく、現場の問題点にエネルギッシュに対応していく筆者の活動が良く分かる。

法制度が準備されても、これまでの慣習からか活用が進まないようだが、筆者のようにその法律をとことん使って事業を再生する取り組みは心強く感じる。

「日本の中小企業は、経営者の人生そのものが事業であり、人格そのものがビジネスモデル」という言葉からは、現場と人を良く見ていることが伺える。


事業再生と敗者復活 (講談社現代新書)