ダブリン・バスのオスカー・ワイルド | 4ALLMOVIEBUFFS

ダブリン・バスのオスカー・ワイルド

ダブリン・バスのオスカー・ワイルド  A MAN OF NO IMPORTANCE
1994年/アイルランド・イギリス/98分
監督:スリ・クリシュナーマ
出演:アルバート・フィニー(アルフィー・バーン)、ブレンダ・フリッカー(リリー・バーン)、
   マイケル・ガンボン(カーニー)、タラ・フィッツジェラルド(アデル・ライス)、
   ルーファス・シーフェル(ロビー/ボージー)他


 1963年、ダブリン市。アルフィーはバスの車掌で大のオスカー・ワイルド好き。バスの中で乗車客に得意の詩を朗読する日々を送っている。乗客もそれを聞くのが毎日の楽しみ。アルフィーの相棒でバスの運転手の名はロビーなのに、アルフィーは彼を「ボージー」と呼ぶ。オスカー・ワイルドと言えばボージー(アルフレッド・ダグラス卿)の名が思い浮かぶ。しかし、ロビーは何故自分がボージーと呼ばれるのかさっぱり分からない。アルフィーは乗客者たちと共に劇をするのが趣味とういか、芸術こそが彼の全て。ある日バスに乗り込んで来たアデルという女性と出逢い、オスカ-・ワイルドの『サロメ』をやろうと立ち上がる。教会の神父の承諾は得たものの、友人カーニーが『サロメ』に大反対。他の敬虔なカトリック教徒たちからも反感を買うはめに。アルフィーの『サロメ』の行方は如何に。

 『ダブリン・バスのオスカー・ワイルド』という楽しげなタイトルに惹かれて何気なく見たのに、すっかり作品に見入ってしまった。確かに前半は楽しげだが、後半からはアルフィーの苦悩がじわじわと描かれていく。彼が胸の内に秘めた想いはある事件をきっかけに周囲に伝わる。それでもアルフィーは非観的にならず自分の信念や本質を変えたりはしない。年老いても彼の心は純粋で真直ぐなまま。緑のカーネーションに象徴される彼の心を誰もねじ曲げることはできない。たとえ親類でも宗教でも。

 ミサの帰りにカーニーがアルフィーとリリーに向かって許し難い罪とは何かを声高に言う。姦通罪が2番目に許し難い罪なそうだが、カーニーが言う1番の罪は姦通罪よりも大きな罪では決してない。人は自分が理解できないものを恐れる。その恐れこそが最も醜い。人々はアルフィーの胸の内を知り、侮辱する者もいればやさしく理解する者もいる。前と変わらずアルフィーと接する人々がいることに大きな希望と安堵を感じた。そして、最後はとても素敵な人がアルフィーの元に戻って来る。