これも、今年の国慶節の話題作のひとつ。
面白いという評価は高いが、あまりヒットしなかった。新聞の映画評によれば、見る人の層に広がりがなかった、とのことだ。
私は、今年の4つの話題作の中では、『夏洛特烦恼』と並んでおもしろかったと思う。

ちなみに4つの話題作とは、
 •『港囧』Lost in Hong Kong、
 •『九层妖塔』The Nine-Story Demon Tower、
 •『夏洛特烦恼』Goodbye Mr. Loser
 •『解救吾先生』Saving Mr.Wu


『解救吾先生』の内容は、誘拐事件。
大スターが誘拐され、身代金を要求されるというストーリー。
脚本の構成がうまく、最後まで飽きることなく見ることができる。


加えて、俳優たちの熱演。
なんといっても、大スター役の刘德华(劉徳華・アンディ・ラウ)。
刑事物だが、今回はアクションはなし。誘拐されて、ずっと縛られてるから。笑。身体表現が制限されているなかで、ほぼ顔の表情だけで全て演じる。
この人は、演技もうまい上に、アクションもかっこよくこなし、歌もうまくてチケットはすぐ売り切れ。軽々やってるように見える所がすごいです。リアルでも、大スター。


そして、この刘德华を食ってしまう勢いで犯人役を演じたのが王千源。
日本では、第23回東京国際映画祭で主演男優賞を受賞して、よく知られている。
受賞作『鋼のピアノ』(中国語では『钢的琴』、英語は『The Piano in a Factor』)では、娘を一流ピアニストにするために苦労する貧しい父親を演じている。
こんな風貌。


一見、普通の人っぽいのだが、すごい演技派。味のある演技で、存在感がある。映画のたびに違う人物になりきって登場するので驚く。体重が増えたり減ったり、髪を抜いたり、ではありません。笑。
今回は、無情な誘拐犯を演じた。見終わった後、1番印象に残った。


あらすじ
吾先生(刘德华)は、夜の北京の繁華街で偽警察に尋問され、車に押し込まれて連れ去られてしまう。一緒にいたマネージャーが警察に通報し、誘拐事件だということになる。

実は、ここ数ヶ月の間に、似たような誘拐事件が多発していた。警察の邢峰(刘烨)や曹刚 (吴若甫)たちは必死の捜索をしているが、犯人が分からず困っていた。
しかし、吾先生が誘拐された場所や時間はマネージャーが把握していたので、街の監視カメラの影像を捜し、だんだんと人物が絞られてきた。警察は一人一人を当って、ついに张华(王千源)、通称・华子が犯人だと特定する。华子には前科があり、刑務所で知り合った者たちと、誘拐を繰り返していたのだ。

一方、华子たちは、北京の郊外の一軒家に吾先生を拉致してきた。そして、24時間以内に、身代金を出せと脅迫する。
吾先生の家は香港にあり、北京のマンションは仮住まい。だから、マンションにある現金と、カードで引き出せる分しか渡せないと、吾先生は交渉を始める。(←吾先生もしたたか。負けてない交渉ぶり。)結局、友人・苏先生(林雪)に現金を持って来させることになる。

連絡を受けた苏先生は、速攻で警察に連絡。警察の働きにより、お金の受取りなどで出て来た华子を、逮捕することはできた。しかし、华子は、重要なことは何もしゃべらない。
警察は、24時間以内に吾先生を救わなければいけない。いままで誘拐された人は、みんな殺されてしまっているから。しかし、拘束されている場所が分からないまま、どんどん時間は進んでいく。

华子の仲間たちは、時間が来たら吾先生を殺すようにと、指示を受けていた。それを知った吾先生は、逃げ出そうとするが、うまくいかない。
警察は、吾先生のいる場所を探し出せるのだろうか。時間は、間に合うのだろうか・・・。


時間の構成
あらすじを書くと、すごくべたな誘拐事件。笑。
しかし、見ていると、そんなことは全然感じない。脚本に工夫があるからだ。
劇中では時間が過去と現在を何度も前後する。そして、新しい、いままでとは違う趣きの誘拐ストーリーを作っている。時間の構成だけで、こんなに違うものになるのかと驚く。


また、ところどころ、ユーモアのあるシーンがはさみこまれているのがいい。

実は、誘拐されて連れて来られた家には、もう1人、先に誘拐されてきている男性・小窦(蔡鹭)がいた。彼は、吾先生の大ファン。だから、誘拐されているのに、吾先生に会えてうれしい。笑。
逃げられないように鎖で繋がれた小窦と吾先生とのやり取りは、緊迫する物語の中で、ほっとするアクセントになっている。

国慶節ではない時期に公開したら、もう少しヒットしたのじゃないだろうか。
おもしろいのに、もったいなかったかな。


◆観客からの評価点は、7.7点。



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