朗読劇「猫と裁判」感想 | てつこ日次記

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ご覧いただきありがとうございます
由無し事を書き連ねる?と思ってたけど、
気がつけば村井良大さんのことか宝塚のことを書いてる感じです


いろいろ、どよめいたことがあったけど感想。
長いよ。
聞いて、観て、感じ取ったことなので、
好きなところとう~んというところ、入り乱れている。
こころ穏やかに読めそうにない、というのであればお戻りいただきたく。

【朗読劇の割に出演者が多かった件】
大勢出て来たけれど、観てみたら違和感なかった。
法廷劇という設定であるなら、ある程度人がいた方が良い。
敵側、味方側と、別れていた方が構図が分かりやすい。
人を分けたのは私には正解。

【原作について】
小説としての体を為していないというか(個人の感想です)。
和也が犯人で出てくるところとか?となる。
その前後のつながりを確認したけどなんだったっけ?ってなる感じ。
エキセントリックな作りって言葉はないのだけど、そのぐらい不思議。

【衣装・照明・映像】
全員白を基調とした衣装が良かった。
和也はスニーカーに汚し。
公園や街をミーを捜すために、
あるいは身代金を受け取るため、動き回ったりしたからだろうか。
照明は青の使い方が特に良かった。
啓子の服に染まる赤も結構好きだったかも。
映像も助けになっていたと思う。
ただし、時計の針が一分を秒針のテンポで動いていたのには違和感。
すーっと動いて音は無くても良かったかも。

【朗読について】
最初の方で一斉に同じせりふを話すのだが、
そこがどんどん早くなったので
音楽で言うならカウント合わせようっていう気持ちになっていたのかも。
音楽をやっていたころの数少ない経験から考えると、
どういう訳だか合わせようとすると早くなってしまうことがあった。
そんな感じに思えた。

囁く声と通らない声は違う。
サイド席のときは囁き声がかなり聞き取りにくかった。
センターだときちんと聞こえたので
これは音響によるものだったのかもしれない。
役柄があるから仕方ないけど、
一番小さい声のレベルを上げてもらいたかった。
啓子も高ぶると声が大きくなるので、そこはリアルで良かった。

【声】
片桐弁護士の声は温かみに溢れ、いつまでも聞いていたかった。
DVDが来たらやはりヘッドフォンして聞くのだと思う。

【人物造型】
よく分からなかった。
啓子のように痛めつけられて育っていたら、ヘンに従順というか
流される生き方になるのかも。
和也の万能感の根拠は原作も今作も薄かったので
そういう人がいるのだろうとしか言えない(実例を見たことはある)。

【好きな場面】
法廷で山田検事が論告・求刑する時、和也が声を合わせ、
最後は和也の声のみが響く。
啓子が和也の悪意に戸惑い、苦しめられて起こした事件を
和也の悪意が断罪している。

【村井さんの様子】
影にうっすら見える首の筋。美しかった。
これは横から観る時の特権だろうな。

【劇の構成について】
原作は主人公の生い立ちエピに入る頃から
言ったらなんだけど安っぽくて
謎の失速感を感じて仕方なかったのだが、
ドラマエピとしてはだいたい良い感じに収まったので、
エピソードのチョイス、テンポについてはセンスを感じた。
今回はいろいろな原作を当たり、
かなり苦労して朗読としてドラマが際立つような作品を選んだ模様
(公演の際、それとなく教えていただいた)。

今回のキモはスマボさんに記載してあるあらすじと
村井さんがおっしゃっていることにあったんじゃないかな~と思う。
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【あらすじ(スマボニュース)】より
「誰にも理解できぬ彼女の心の深い闇と、法の落とし穴」

ここにフォーカスを当てるため、
それ以外の要素を排除した脚本だった気がする。

(村井さんのインタビューもスマボニュースより引用)
最初に台本を読んで、その後に原作を読ませていただきました。
人間の悪いところや闇の部分がたくさん書いてある作品なんですけど、
「これって自分の身近でも起きる可能性があるんじゃない?」って
いうぐらいの距離感で書かれているんです。
「人間って、こんなに簡単に裏切ったり人を傷つけたりするんだ」と思うとゾッとしました。
(引用〆)
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これね、法廷という装置を借りているだけで、
そういう劇じゃないんだと思う(最初のホメが崩れるけどw)。
法廷劇とすると証拠固めなどがお話しにならないくらい、
きちんとしていない。
共感されるかどうか分からないのに、延々と啓子の状況が語られ
(一点、子どもを宿したときのエピに入ると、場内すすり泣きだったので
そこは共感フラグが立ったか)、
命(尊厳かな?)もランク分けされている実情を
啓子と和也の双方が訴えかける。
なんで訴えかけたかったのかが分からないんだけど(・・;)
動物愛護ものだったりすると、募金箱設置とかありそうなのに、
そういうの無かったし(発想が貧困なもので訴えかけの成果を測る
装置がないと落ち着かない...)。
場所を変えながら
人間関係もすぐ共感←→対立に変わるんだよ、と示していたのが
今回の朗読劇だったのではないだろうか。



ものがたりの内容や誰にも共感できない点など、
否定の要素にしかなりえないけれど、私、この朗読劇は好きだった。
この内容をよく、ここまでかっ捌いて、劇に仕立て上げたなあと
それだけでも感心できる。
朗読よりはダイナミックで、演劇よりはクセのようなものはなく。
出入りのスピード感や消音にも気を配り、
法廷で、喫茶店で、少ない装置であってもきちんとその場面が見え、
終始緊張を生み出す、良い舞台だった。