異端児
ミヒャエル・ハネケ監督の新作
愛、アムール
AMOUR
を観て来ました。
ミヒャエル・ハネケ
ラース・フォン・トリアー
M・ナイト・シャマラン
↑ 最後の方は大分意味合いが異なりますが...(・Θ・;)
いずれも観る前にかなり身構えてしまう作品を出して来る監督さん達です。
しかし、今回の「愛、アムール」は、
観る者の神経を逆撫でする過去のハネケ作品とは作風が異なり
感動作だと云う噂から幾分気を緩めて挑んだのですが...
いやいやいやいやいや
限りなくトラウマ映画に成り得るジワジワ痛い作品じゃないですか...
元音楽教師の老夫婦
ジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)と
アンヌ(エマニュエル・リヴァ)は、
パリのアパートで充実した老後を過ごしていましたが、
ある時アンヌが倒れ後遺症で半身麻痺になってしまいます。
突然、夫婦に降り掛かる介護という問題をミヒャエル・ハネケ監督は、
独自の針のような無機質な視点で断片的にその生活を切り取って行きます。
多くを語らず
唐突にそれぞれの場面をバサッと切り捨てる構成は、
常に不穏と不安をはらんだモヤモヤ感を観る者の中に蓄積させて行きます。
自宅療養を望んだ妻の思い通りに夫は献身的に介護に勤しみますが、
病状の悪化は留まる事を知らず
食事にすら支障が出始め
派遣の介護士を頼んでみても心ない行為と
アンヌ自身の外の力への拒絶から長続きせず
目に見えぬ重圧が夫のジョルジュにのし掛かってきます。
たまに訪れる嫁に出た娘は、口先だけで行動を伴わないので父には重荷でしかありません。
実際に介護の経験があるとないでは、
当然、この作品の見方は変わってくると思います。
かなりストレートな模写もあり痛々しく衝撃的なのですが、
それでもまだ綺麗ごとでは済まない現実がその間に隠れているはずなので
それを思うと劇中はおろかメインとエンドタイトルにすら一切の音楽を排した
思いのほか静かな作品の佇まいなのに
その実は、棘が刺さり続けるような痛みの連続なのです。
娯楽性も感動も全くないミヒャエル・ハネケ監督独特の世界観は、
とにかく辛辣の極みですけれど
これは、ハネケ流のラブ・ストーリーでもある事実が奥深いのです。
全く人にはお勧め出来ない作品なれど
映画好きなら観てしかるべき作品ともいえます。
苦痛と分かっていながらこれからもハネケ作品は観続けることになるのでしょう...
実は、この作品
結末のある核心部分を冒頭に見せてしまいます。
観終わってスッキリしない部分も含めて
コンセプトは全く違いますが、
「アラビアのロレンス」とその構成がよく似ていると思ったのは、
やっぱり自分だけでしょうねぇ...(・Θ・;)
余談ですが、
先の米アカデミー賞の主演女優賞が、
ジェニファー・ローレンスで喜びました。
しかし実際に、この作品のエマニュエル・リヴァの完璧な恍惚演技を見てしまうと
オスカー像...本当はエマニュエル・リヴァのものだったかなぁと感じました。
もちろんジェニファーも、それに十分値する名演ではあるのですが...
2年連続で仏の俳優に主演賞を与えるのを
ハリウッドがたばかった...と云う勘繰りをしてしまう自分がいます。