結局その病院にはそれから2週間に1度、1年半ほど通いました。
その間血液検査ではCRPと、GOT・GPTが上がったまま。触診でも毎度肝臓腫れっぱなし。そりゃぁだるかろう。
尿検査でも潜血と蛋白出続けてたし。
血圧は100を越えたことはないし、脈拍は100を切ったことがないし、白血球は増えてるわ、高熱もたびたび。その度に扁桃腺とか腎盂炎とか言われました。

今ほど検査機器もない時代。1年かかって内臓1つひとつ調べていきました。
いろんな検査しました。

何を調べても異常が出ます。

でもその原因が、見つからない。


内臓で検査に引っかからなかったのは、肺だけでした。

「このままじゃ白血病になっちゃうよ」
「このままじゃ慢性腎盂炎になっちゃうよ」
「このままじゃ子供生めないよ」いらん。
「このままじゃ将来、骨粗鬆症になっちゃうよ」

だからって、どうせいっちゅうの。


しまいには心臓発作まで何度か起こしましたが、先生には内緒にしてました。
もう面倒で(笑)。
脈がすごく変なのがバレて運動負荷後の心電図もとりました。
「軽い狭心症ですね」
軽い? 発作の時はこのまま死ぬんかって思ったけど。

でもこれ以上生活制限とかうるさく言われたらいやだったから、先生には内緒・・・。


通い始めて1年がたつ頃、いつものように病院に行くと先生が改まった様子で言いました。

「結局、癒着性腹膜炎だと思います」

お腹の傷の癒着がひどくて、こすれる、ねじれる、熱をもつ。
軽い腹膜炎の状態で、免疫反応が起きる。
熱で周りの臓器が軒並み弱る。
そこに血が集まるから頭に血が行かなくて貧血状態。
でもって心臓に負担がかかっている、だそうです。

理路整然としているように思うのですけど、この病名、怪しいらしい。
その後数々の病院に行った時に病歴にこの病名、必ず書いておくんですけど、先生が全員首をかしげます。
ほんとに全員が首をかしげるので、「あぁいまあの辺見てるのね」とわかります。
医学書の隅から見つけ出してきたんでしょうか。

更に先生言いました。
「あなた免疫不全の気があるからね」

それからおもむろにいつも座ってる事務机の引き出しをガラガラ開け、茶褐色のビンを取り出しました。中には白い粉が入っています。

「これ飲んでね。1日1回3日間。毎日同じ時間に。空腹時に」
薬包紙にキッチリ薬包包みで包まれた3包、渡されました。

あやしい。あやしすぎる。

あまりのあやしさに、薬の名前、聞けませんでした。
インフォームドコンセントなんて言葉もまだない時代。私はまだウブな患者でした。
これはいまでも後悔。なんの薬だったんでしょう。

先生の言うとおり、3日間のみました。


それから3ヶ月が過ぎる頃。体調は、冗談じゃないくらい悪くなっていきました・・・
って、おい。

ほとんど這うようにして病院に行きました。
「先生、ぐ、具合悪い」

先生、お気楽。
「なぁに、それは薬が効いてる証拠だよ。これからだんだん良くなっていくから」
なんですかそれはー。

でも先生の言うとおり、それからだんだん体調は良くなって行き、更に3ヶ月が過ぎた頃、あれだけ毎度出続けていた検査の異常がピッタリとなくなりました。
うっそ~。

「でもね先生、まだダルくて微熱も下がってないんですけど?」
「それくらいはね~、仕方ないよ」
先生お気楽。
「でも、10年たったらどうなるかわからないよ」

とにかく検査の異常もなくなったし、吐くこともなくなったし、ダルイのもそれまでに比べれば格段に楽になったので「これくらいは仕方ないのか~」と通院終了。

何しろあれだけの検査異常を治してくれた先生の言うことですから。


それにしてもあれは、何だったんでしょう。引き出しから取り出したビン入りの薬って・・。