厚生労働省の研究班が行っている大規模疫学調査の
結果などを中心に説明します。この調査は、ガンや心
筋梗塞、脳卒中などの発症に、食習慣や飲酒、喫煙、
運動などの生活習慣がどのように関連しているかを
明らかにするため、日本各地の住民約10万人を対象
に一定期間追跡調査したものです(「多目的コホート
研究」と呼ばれています)。
まずガン全体の発生率と飲酒との関係ですが、男性
では「時々飲む」グループのガン発生率が一番低く、こ
れを1とすると、アルコール摂取量が日本酒換算で「1日
2合未満」のグループでは発生率は高くなりませんが、
「2合以上3合未満」では1.4倍に、「3合以上」では1.61倍
にもなっていました(日本酒1合はビール大ビン1本、ワ
インではグラス2杯、焼酎で約0.6合)。女性は定期的に
お酒を飲む人が少なく、はっきりした傾向がみられませ
んでしたが、毎日2合以上の飲酒は慎んだほうがよさそ
うです。→「飲酒とガン全体の発生率との関係について」
参照。
胃ガンに関しては、たばこを吸う人は吸わない人の2倍
胃ガンになりやすいことがわかりましたが、お酒の量とは
関連がありませんでした。ただし、胃の上部(噴門部)の
ガンについては、お酒を飲むと2~3倍発生率が高まって
いました。飲酒は口腔、喉頭、食道といった上部の消化管
のガンを起こしやすいことが知られていますが、胃も噴門
部ガンに限っては飲酒はリスクになりそうです。→「たばこ
・お酒と胃ガンの関連について 」参照。
コーヒーと各種ガンとの関係は多くの研究報告があります。
厚労省研究班が最近発表した調査結果では、コーヒーの摂
取量と大腸ガンになる危険性との関連はみられませんでした。
しかし女性では1日3杯以上コーヒーを飲むグループで大腸ガ
ンの一部である結腸ガンのリスクが低い傾向がみられました。
→「コーヒー摂取と大腸ガンとの関連について」参照。
コーヒーと肝ガンの発症リスクに関しては、毎日飲むグループ
のリスクはほとんど飲まないグループの半分に抑えられていた
という結果が出ています。→「コーヒー摂取と肝ガンの発生率と
の関係について」参照。東北大学や名古屋大学でもコーヒー飲
用者のほうが肝ガンの死亡率や発症率が低いという結果を発表
しています。ただ、肝炎や肝硬変の患者は肝機能が低下して
コーヒーが飲めなくなるので非飲用者の発症率が高くなってい
る可能性もあり、また日本人の肝ガンは肝炎ウイルスの感染が
原因となっているものが多いため、コーヒーが肝炎ウイルス感染
者の肝ガン予防に効果があるかどうかはさらに詳しい研究が必
要です。
胃ガンと緑茶との関連では、緑茶を1日5杯以上飲む女性は胃
ガン(特に胃の下部のガン)の発生リスクが3割ほど抑えられまし
たが、男性では緑茶によるリスクの低下は明らかではありません
でした。胃ガンについては喫煙と高塩分食品の摂取が発生リスク
を高めることがわかっていますが、緑茶も多く飲めば胃ガン予防
の一助になるかもしれません。→「緑茶飲用と胃ガンとの関連に
ついて」参照。
< 回答率 >
1 ガン全体の発生率は、アルコール摂取量が日本酒換算で1日
平均2~3合飲む男性グル^ープが最も低い 4%
2 胃ガンでは、たばこを吸う男性は飲酒量が増えると発生率が
高まるが、胃の上部(噴門部)のガンについては、お酒の量と
発生率とは関係がない 9%
3 コーヒーを多く飲む人は、大腸ガンの発生率が高い 10%
4 コーヒーをよく飲む人は肝ガンの発生率が低い 38%
5 緑茶をよく飲む男性は胃ガンの発生率が低い 37%