この度、フォロワーさんのお誘いに乗り成龍主演最新作「ライド・オン(原題:龍馬精神)」を観てきた。
予告編から成龍作品の総決算的なモノを予測させていたので気にはなっていたので観た訳だがはてさて。
当たり前ですが完全ネタバレなのでまだ未見の方でネタバレしたくない方はご注意!!
ストーリー
かつて香港映画界で知らぬ人はいないと言われたスタントマン、ルオ・ジーロン(演:成龍(ジャッキー・チェン))
しかし今では愛馬チートゥと共に時折撮影所でエキストラや見学客に対しての客サービスで小銭を稼ぎ、借金取りのダミー(演:安志杰(アンディ・オン))から逃げながら細々と暮らしていた。
そんなある日、鼎苑資本の社員がチートゥを引き取りに来た。
元々チートゥは3年前に友人であり靚馬公司の社長だったワン(演:呂良偉(レイ・ロイ))が所持していた馬から生まれたばかりの仔馬をジーロンが譲り受けた馬だった。
靚馬公司が破産し鼎苑資本が買収した為、チートゥを靚馬公司の資産として受け取りに来たという。
急な話でジーロンは拒否をするものの、鼎苑資本の社員は後日裁判所に強制執行を依頼して引き取りに来るという。
悩むジーロンに弟子のスタントマンであるインズ(演:容祖兒(ジョーイ・ヨン))、シアマオ(演:余皚磊(ユー・アイレイ))は娘のシャオバオ(演:劉浩存(リウ・ハオツン))に頼ればと勧める。
シャオバオはジーロンの娘だが、2歳の頃に親が離婚した為たまにしかあっておらず、更に母(演:郎月婷)が病気で死亡した時も葬式の最後でやっと顔を出したジーロンを許せず疎遠が続いていた。
ジーロンは事の次第をシャオバオに伝えるもののシャオバオに追い返されるが、シャオバオは母の遺言を思い出し一晩考えた後、一日ジーロンとチートゥの今の仕事を見届ける。
不器用な父の姿を見たシャオバオは彼氏であり新米弁護士のルー・ナイホァ(演:郭麒麟(グオ・チーリン))に協力を依頼、なんとかチートゥを手元に残せるように情報を集める。
しばらくしてジーロンの元に同じスタントマンであるデビッド(演:行宇(シン・ユー))が現れ、昔の腕を見込んで仕事をお願いしたいという。
久々のスタントで気持ちが高ぶったジーロンはチートゥに特訓を課し、撮影当日現場に赴く。
シャオバオが見学している中、撮影が始まるもののチートゥは緊張して動きが悪く、撮影が進まない。
業を煮やした監督はジーロンとチートゥを下がらせ別のスタントマンと馬を使うと癇癪を起すが、チートゥの顔にシャオバオが触れ、声をかけるとチートゥは落ち着いたのか用意された馬を押しのけ、撮影に参加、撮影は成功しジーロンとチートゥは再び脚光を浴びることに。
それからしばらくはジーロンとチートゥはスタントの仕事が舞い込み、シャオバオがマネージャーとして法的に問題が無いのか書類を確認する毎日を送る。
ある日、騰雲の総裁ホー(演:于榮光(ユー・ロングァン))がジーロンにチートゥを譲ってほしいとやってきた。
ホーは無類の馬好きで、先の映画撮影でチートゥを見ての事だった。
ジーロンは断るもホーは諦められず、金で解決できない事を知るとジーロンの周辺を調べ上げ鼎苑資本に接触を試みる。
水面下でそんな話が出ているとは知らず、ジーロンは変わらず仕事を続けていたがある撮影で問題が起こる。
チートゥと共に崖を飛び移るスタントだが、資料を確認して高さは理解していたもののセットの奥行きが狭く、飛び移った後のブレーキに必要な距離が足りなかった。
これでは事故が起こりかねないとシャオバオは監督に訴えるものの、監督は事前に資料は渡していてセットも組んだ以上撮影をしないと業務不履行で違約金を払ってもらうとシャオバオに詰め寄る。
ジーロンは無謀と知りながらもスタントに挑み、なんとかこれを成功させる。
それからもジーロンとチートゥは危険なスタントを顧みずに受け続け、毎日傷だらけの一人と一頭をみてシャオバオは辞めるように忠告するが、元よりケガがつきまとうスタントマンを辞めるつもりはなく、子供には理解できないとつっぱねる。
しばらくしてインズが撮影中に大怪我を負う事故が起こる。
発破のタイミングが予定より早く爆発に巻き込まれ2階の高さから吹き飛ばされてしまったのだった。
連絡を受け病院に向かったジーロンは付き添いで来たシアマオから命は助かったものの後遺症が残る可能性があると伝えられる。
シャオバオは生前の母にジーロンの仕事を聞いた事を思い出していた。
後日、シャオバオはジーロンと一緒にルーの両親に挨拶も兼ねて食事をする事に。
しかしジーロンの粗野な部分が出てしまい、微妙な空気感が漂う食事会となってしまい、解散した後もジーロンとシャオバオの仲も再びぎくしゃくしてしまう。
それからしばらくしてジーロンもついに大怪我をしてしまう。
足を痛めたチートゥが体勢を崩し投げ出されたのだった。
連絡を聞いたシャオバオはジーロンの身分証を探していたが、その中でDVDとUSBと書類を見つけ出す。
書類には自身に何か起こった際の財産はシャオバオに譲り渡す遺書的な内容が書かれており、USBには過去出演した映画のスタントシーンが、DVDには昔シャオバオと会っていた時の映像が残されていた。
退院したジーロンは何故一度はスタントマンを引退したのか、それは8年前のある事故が原因だったと語り始める―
てことで、本作はまさに成龍の人生をなぞったような主人公の時代が変わったと思わされた作品でしたマル。
…で終わるとアレなので。
とにかく成龍作品のオマージュを過去作品映像の流用もあわせてそこかしこに散りばめられており、過去作を観ていれば観ているほどに気が付いて楽しくなる。
それに加えて、御年70になる成龍の変わらぬアクション(撮影時は68あたりだけど)。
流石に全盛期のようなバトルは無理だが、小道具を使ったアクションはまだまだ健在。
今まで培ってきたテクニックは衰え知らずというのが今回のバトルを見てもわかる。
とはいえ、今回の骨子はスタントマン一筋だった男の栄光と衰退であり、アクションは添え物。
栄光の道をひた走ってきたジーロンがその為に何を犠牲にしてきたのか、そしてそれは成龍自身も進んできた道だからこそこの役に深みを与えていると思う。
…とここまでは成龍ファンとして、成龍映画大好きな人にとっての目線というか見える所というか。
逆を言えば成龍にそこまでして興味ない人の目線で見ると「全盛期を過ぎた老兵の最後の輝き」かな。
「全盛期は滅茶苦茶凄い事していたけど今では一線を引いて隠居生活、でもきっかけがあって返り咲く」
こう書けば実は本作以外にも普通に探せばありそうな映画や創作物のネタであり、それ以上のモノでもないんだな。
ここでサポートに入るのが実の息子や弟子ではなく、愛馬と言うだけの事な訳で。
この愛馬である赤兎もといチートゥは所々でジーロンが愛情注いで育ててるというのが挿入されるんだが、生まれつき弱い仔馬を育て上げたのは良いとして、何故その馬をスタントの一員として活躍させたのかが今一入ってこないんだよな。
映画村での撮影要員としてはともかくとして、スタントを仕込むのが結構急に感じてストーリーにそこまで関わらせる必要があったのかなと思ったのよ。
引退したスタントマンという話なら態々チートゥという馬を設定せずともジーロンだけでも良い訳だし、知り合いの会社の社長から譲り受けて丹精込めて育てた、までは良いんだけどスタントマンを半ば廃業していた状態でスタント用の馬に育て上げていた訳でもなく(冒頭の流れから考えて仕事が来て急に仕込みはじめた?)冷静に見返すと、妙にノイズがちらつくというかブレているというか。
後は、本作自身が成龍の自伝的な要素があるから仕方のない部分ではあるんだが、なぜそこまでスタントに固執する?って所を掘り下げてほしかった。
わざわざ発破ミスでのインズの大怪我や8年前の大事故みたいな命と隣り合わせな描写を盛り込んでいる割にはそこの描写があんまりないのでしっくりこない。
余談だが、容祖兒が吹っ飛ばされるのは「群狼大戦」を思い出した。
もちろん根底としてはスタントマンしか無かったというのがあるんだろうけど、言語障害を起こすほどの大事故を起こした後、他の方法は無かったのか、それだけの大怪我をして引退しかけていたのに何故再び元の世界に戻ってきたのか。
スタントマンの世界は身体張ってなんぼで何かに魅入られたからこそケガをしながらも続けられるものなんだろうとはおもうが、そこが無いからか何故固執するのかがわからないんだよな。
そこの穴埋めというかサポートとして過去映像を流しつつシャオバオがジーロンの表に出さなかった苦労を理解するという流れにしたんだろうけど。
ここら辺は演じているのが成龍だからというので納得させてるようにも見える。
で、最後は有名アクションスターのユェン・ウェイ(演:呉京(ウー・ジン))に誘われ、スタントに参加するものの上手く行かず、肉体や実写での限界がきてCGやVFXがスタントに変わりの主流になるという暗示が流れて完全にジーロンは引退する。
チートゥも穏やかに暮らせるのならと反撃できる要素を捨てて裁判からも手を引く訳だが、最後はわかってはいるが予定調和でハッピーエンドな流れ。
ちなみにこのシーンの監督役は「ポリスストーリー3」他で成龍と何度も組んでる唐季禮(スタンリー・トン)。
なので本作は本当に成龍という役者、作品に対してどれだけ入れ込んでいるかで評価が変わると思う。
実際様々なオマージュや小ネタも仕込まれているが、これは過去作見てないとなかなかわからないしね。
ただ不器用ながら家族を大切にするジーロンという人物は成龍だからこそ出来上がったキャラだと思うし、"アクションスター"でなく"役者"成龍を堪能できる作品というのも事実。
成龍初心者にはおススメしづらいけど、成龍好きならいずれは観てほしい作品かなと感じました。