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先日、やま、さんの放送に凸をした際に、準強姦罪の抗拒不能は催眠術を利用した際も認められた事例があるという話題になりました。私は、その判決を知らなかったので、探してきました。裁判所のホームページにも載っておらず、また、その他のネット上にも見つかりませんでしたので、大学で探してきました。判例タイムズや判例時報にも載っておらず、唯一、東京高等裁判所判決時報の27巻に載っておりました。ここでも、判決文は抜粋でしたが、催眠術がどのように東京高裁で判断されたかの部分のみ、記載しようと思います。

東京高判昭和51年8月16日では、

刑法178条にいう抗拒不能とは、成功やわいせつ行為を拒否することが社会通念上不可能な場合であればたり、抗拒不能に陥った原因の如何を問わないと解すべきである

としたうえで、原判決(東京地裁)の判示を引用し、

「同女にいわゆる後倒法、鈴振りなどの施術をして催眠状態にし、さらに、真実治療に必要な施術を行うものと誤診している同女を、椅子にかけた自分のひざの上にあおむけに寝かせ、片手で同女の目を押さえ、ひざで同女の体を揺するなどして、身動きのできない状態にして抗拒不能に陥らせたうえ…」

と催眠術による抗拒不能の事実を細かくあげています。
そして、

右事実においては、催眠状態と同女がとらされていた姿勢とがあいまって抗拒不能の状態にあったものと認定していることは判文上明らかであって、右のような事情が刑法一七八条の抗拒不能に当たることはいうまでもない。

と判示します。

また、

所論は、催眠状態においては、性交、わいせつ行為を拒否することが可能であるという。なるほど、所論引用の著作物には、催眠は、昏睡とか嗜眠とかいわれる意識の障碍のように、刺戟が与えられてもそれに反応しなくなった状態とは考えられない旨の記述があり、また原審証人○○○○(註:筆者が割愛)の供述中に、「催眠中においても人間には護身の本能というのがあり、自分に都合の悪いことは抵抗する本能を持っている。」旨の部分があることは所論のとおりである…

催眠状態の深浅、施術者に対する信頼の程度、被施術者の性格、被施術者が自己に対する攻撃を、攻撃と理解しているか、治療行為と誤信しているか等によって、抵抗本能が残っているとしても、これが常に発揮されるとは限らず、従ってまたわいせつ行為や性交を常に拒否得きるとは限らないと解するのが相当である…

と判示しています。

つまり、当該事件については、催眠術による催眠を認めた上で、それが刑法上の抗拒不能を誘引するというか、抗拒不能にさせる場合があるとしたわけですね。
しかし、鈴振りだとか後倒法なんて、たまにテレビで見る催眠術と同じように思えるのですが、あれってほんとうに効くんですかねぇ。