舞台演劇「蛙の子は蛙」
作者:小唄 楼

徹……男性
秋子……女性
父……男性
母……女性



徹の家に、徹と秋子、対面に徹の両親が座っている。
照明をつける。


父「在日、朝鮮人だと?」

秋子「はい、そうです」

徹「ああ、確かに秋子は在日朝鮮人だ。でも、結婚にそんなの関係無いと思うんだ!」

父「馬鹿を言うんじゃないよ!馬鹿を!」

母「お父さん……」

父「結婚するのに、在日朝鮮人だなんて関係ない?馬鹿も休み休み言え!いくら今の日本が人種に寛容になったとは言え、差別は必ず存在する!それがわかっているのか!」

徹「そんなのわかってるよ!それでも、俺は必ず秋子を守ってみせる」

父「だから馬鹿だと言っているんだ!差別を受けるのはその娘だけじゃない、配偶者になるお前もだ!」

徹「それでも構わない!秋子と一緒になれるなら、俺はどんな差別を受けても構わない!」

父「じゃあ、それがお前たちの子供に及んでもか?」

徹「それは!」

父「いいか、徹。混血児と言うだけでも差別され安いと言うのに、相手はその上在日朝鮮人だ。お前たちの子供は必ず差別される。それを、お前は守れると言うのか!」

徹「それは!」

秋子「……徹さん、もう良いよ」

徹「秋子!お前何を言って!」

秋子「やっぱり、在日朝鮮人の私が日本人の徹さんと結婚しようなんて、おこがましい事だったんだよ」

徹「そんな事無い!俺はお前と!」

秋子「ありがとう。でも、私は徹さんそう言ってもらえただけでもう充分だよ」

徹「……諦めるかよ」

秋子「えっ?」

徹「そんな事で、俺が諦めるかよ!……親父!お袋!俺は二人に大事に育ててもらった事は恩を感じてる。でも!秋子との結婚を認めないって言うのなら、こっちから絶縁してやる!」

秋子「徹さん……」

父「徹、それは本気で言っているのか?」

徹「本気だ!これは、俺が秋子と俺が結婚する決意の現れだ!」

父「徹……」

母「……お父さん、もう良いんじゃありませんか?」

父「母さん、だが……」

母「あのね、徹。実はお母さんはね、部落の生まれなの」

徹「部落……?」

母「そう。だから結婚する時は、お父さんの家族から猛反対されたの。そしたらね、お父さんは今の徹みたいに、ご両親と絶縁してでも私と付き合いたいって言ってくれたの」

秋子「そう、だったんですか……」

母「結婚してからも大変だったわ。お父さんは、徹がいじめられないよう八方手を尽してくれたの。お父さんも、私と結婚してから沢山差別を受けたわ。それでも私を愛してくれたわ」

徹「それじゃあ、なんで俺たちの事を反対したんだよ?」

父「お前に、私と同じ苦労をかけたくなかったんだよ。だが、やはり蛙の子は蛙だな。その決意、しかと受け止めたぞ」

徹「ということは!」

母「秋子さん。これから沢山大変な事があると思います。徹の事を、支えてあげてくれますか?」

秋子「はい。徹さんの気持ちに、私も応えるつもりです」

父「……なら決まりだな」

母「二人とも、お幸せにね」

徹「親父!お袋!……ありがとう!ありがとう!」

父「二人とも、必ず幸せになるんだぞ」

徹・秋子『はいっ!』


暗転。







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原爆の次は人種差別問題となかなか重いテーマが続きますね。

この作品自体はありがちな話ではありますが、わざわざ「在日朝鮮人」と「部落」というタブーであるはずの言葉を使っていることに意味があると思います。

現在インターネットの普及により、ありとあらゆる物を簡単に調べられるようになりました。

上記のキーワードを調べてみて、過去にどのような問題があったのか、そしてそれは今どのような形で続いているのかなどを勉強してみるのはとても大切な事だと思います。

ちなみにネットの世界では嫌韓の人が多数存在します。

これらもまた過去から続く一つの形として見ていただければと思います。



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