ドロシー・ワーズワースの生涯 第2部 (26) | 草村もやのブログ

ドロシー・ワーズワースの生涯 第2部 (26)

結婚指輪

ドロシー・ワーズワースの生涯 第2部 (26)


「1802年10月4日月曜日。

私の兄ウィリアムは、メアリ・ハッチンスンと結婚した。

     ☆

私は、前夜、たっぷり眠って、朝、元気に、新鮮な気分で、起き出した。

8時すぎごろ、私は、彼らが、教会へ向かって、大通りを下っていくのを見ていた。

     ☆

ウィリアムは、2階で、私と別れていった。

私は、兄に、結婚指輪を渡した。ーー深い深い祝福を籠めて!

     ☆

私は、その指輪を、ひとさし指から、抜いたのだ、昨夜、一晩中はめていたその指から。ーー兄は、それを、ふたたび、私の指にはめた。

私は、そっと、祝福した。」

     ☆

この、最後の数行は、誰かの手で、黒塗りにされている。

研究者によっては、

「兄は、それを、ふたたび私の指にはめ、私に、情熱的な祝福(のキス)をした。」

と、かなり刺激的な解読をしている。

     ☆

ウィリアムが、おそらくフランス滞在中に、金の指輪を買い、旅の間中、妹が、ひとさし指にはめて、持ち帰ったのだろう。

なくさないように、との配慮なのか、妹が望んだのか。

     ☆

夜明けに、結婚式に行く兄が、妹のベッドで指輪を受け取り、兄は、妹の気持ちを思って、もう一度彼女の指にはめてから、また抜いて、メアリとふたり、教会に歩いていった、ということなのだろう。

この兄妹の、不思議シーンのひとつである。

     ☆

「彼らがいない間に、かわいい(義妹)セアラが、朝食を用意してくれていた。

私は、できるだけ、気持ちを落ち着けようとしていたのだが、ふたりの男性が、路を走ってあがってきて、式が終わりました、と告げると、もう立ってはいられず、ベッドに倒れ込んだ。

     ☆

しばらく動かないでいたが、何も見えず、何も聞こえなかった。

セアラが上がってきて、

『帰って来たわよ』

と言った。

     ☆

それで、ベッドから身体を離し、まっすぐに、どうやって身体に力を入れたものかもわからないが、進んでいって、愛するウィリアムのもとに、彼の胸に、倒れ込んだ。

     ☆

彼と(メアリの兄)ジョン・ハッチンスンが、私を、家に、かかえて入り、そこで、私は、メアリを迎え入れた。

     ☆

朝食を済ませると、すぐ、私たちは、出発した。

出たとき、雨が降っていた。

     ☆

かわいそうに、メアリは、兄弟や妹たち、彼女の家(ホーム)に別れるとき、心が揺さぶられていた。

カービーに着くまで、何事もなかった。…」

     ☆

6日にダヴ・コテッジに帰るまでの、たった2晩の<新婚旅行>だが、ドロシーの記述は、非常に詳しく、長い。

     ☆

3人の旅で、ドロシーは、とても機嫌がいい。

「日当たりも雨もあり、楽しいおしゃべり、愛と陽気さがあった。」

     ☆

馬に飼い葉を与える待ち時間には、妹セアラに、短い手紙を書き、教会のそばの墓地を散歩する。

5年の間に、5人の子どもを埋めた、育った子でも4歳、という墓。

それから、陽気なバッキンガム公爵が住んでいたが、今は廃墟となっているヘムズレー城…。