あらすじはいかがでしたでしょうか??

ここからは、感想となりますので、まだ読んでいない、という方は、ネタバレにご注意ください!💦


【感想】
生と死、性、正義など、語るに十分なテーマが非常におおく見受けられる作品だと感じました。
様々なことに対する倫理観が揺らいでしまいそうなストーリーですよね…

特に、私が印象に残っているのは、環の「世界はもともと残酷で、残酷の形が変わっただけだ」という言葉です。世界がもともと残酷だ、というのは、村田さんの思想が現れているように感じました。

しかし、自分にとって優しい世界になったから、殺意を表出させることが合法的に許されるから、という理由で、その世界を「正しい」と表現してしまうのは、育子や環の自己満足なのではないか?と感じてしまいました。
もちろん、育子も環も、幼少の頃から殺意という感情に苦しめられていたことはわかりますし、その苦悶から解放してくれる世界を賞賛したい気持ちもわかります。しかし、命って、価値のつけられるものでない以上、産んだから殺していい、という方程式は、成立しないと思うのです。

それに、この物語では、10人の出産に対して1人の殺人が許されていますが、10人分の生が1人分の死に値するという考え方、なんだかおかしいように思いました。
もちろん、10人産むまでの苦労だとか、時間の消費だとか、そういった10人の出産に付随する事象の多くが、この物語の独特な価値観を生み出していると思いますし、もともとそのための設定だったのかもしれません。
ですが、生と死の重さをイコールで考えているような人物が、物語の中に出てこないことには少し違和感を感じました。

ここまでの設定を、しかも現代社会の問題を的確に捉えつつ、短編に詰め込む、ということは、本当に尊敬するところだな、と思いますが、やはり、短いせいか、たった100年でここまで考えの画一化された世界になるのかな?とは思ってしまいました…


また、私が気になったところは、男性も人工子宮で妊娠ができる、という点です。

現代社会では、女性の出産や育児の問題が、かなり重要視されていますが、この世界では、そのような感覚がないのではないか?と感じました。

登場人物は女性がほとんどでしたが、男性で産み人となった人の描写も出てきていて、そこはとても興味深いところでしたね!
生死観だけでなく、性別観も特殊な作品で、見所が多いな、と思いました!



かなり長くなってしまいましたが…
ひとまず今日はこのくらいですかね!!

考えさせられる作品ですが、文章がわかりやすくてとても読みやすいので、まだ読んでいない方にも是非、お楽しみいただきたいです!


それでは、失礼しますψ(`∇´)ψ