間 黒助です。
『 正常細胞は酸素があれば酸素を使ってエネルギーを生成する 』
『 ガン細胞は酸素があっても酸素を使わない 』
『 HIF-1 の役割り 』
『 ガン細胞が酸素を嫌う理由 』
『 ガン細胞におけるワールブルグ効果の重要性 』
の続きですが、
嫌気性解糖系が亢進しているガン細胞は、
正常細胞と比較して、
数倍から数十倍のエネルギー産生と物質合成が行われています。
これはガン細胞が数を増やしていくには、
莫大なエネルギー(ATP)と、
細胞構成成分(たんぱく質や脂質や核酸)が必要だからです。
そして細胞は、
解糖系やペントース・リン酸経路などといった細胞内代謝系によって、
ブドウ糖から細胞構成成分を作ることができるため、
ガン細胞では、
正常細胞よりもブドウ糖の取り込みが増えているのです。
また、
ガン細胞はミトコンドリアでの酸化的リン酸化を低下させることで、
細胞死を起こしにくくしている(アポトーシスに抵抗性)ことが知られています。
細胞分裂しない神経や筋肉細胞を除いて、
正常な細胞は古くなったり傷ついたりすると、
アポトーシスというメカニズムで死にます。
人間の細胞は、
毎日3000億個以上(約200g)の細胞がアポトーシスで死に、
新しい細胞が増殖してい入れ替わっています。
このアポトーシスが起きる際には、
ミトコンドリアの電子伝達系や、
酸化的リン酸化に関与する物質(チトクロームCなど)が重要な役割を果たすのですが、
ガン細胞では、
アポトーシスを起こりにくくするために、
あえてミトコンドリアにおける酸化的リン酸化を抑え、
必要なエネルギーを細胞質における解糖系に依存していると解釈できるのです。
実際、
ジクロロ酢酸ナトリウムという薬を用いて、
ガン細胞のミトコンドリアにおけるTCA回路を活性化させると、
ガン細胞にアポトーシス(細胞死)を引き起こすことができることが報告されています。
このため、
ジクロロ酢酸ナトリウムは、
ガンの代替医療として臨床でも使用され有効性が報告されています。
※このジクロロ核酸については明日詳しく書こうと思います。
また、
嫌気性解糖系でのブドウ糖の代謝によって乳酸が増えると、
ガン組織が酸性になり、
ガン細胞の浸潤や転移に好都合になります。
なぜなら、
ガン組織が酸性化すると、
正常な細胞が弱り、
結合組織を分解する酵素の活性が高まるため、
ガン細胞が周囲に広がりやすくなるのです。
さらに乳酸には、
ガン細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞の増殖や、
サイトカインの産生を抑制する作用や、
ガンに対する免疫応答を低下させる作用があります。
加えて嫌気性解糖系でエネルギーを産生するということは、
血管が乏しい酸素の少ない環境でも増殖が可能になるということです。
また酸素を使わないことで酸化ストレスを軽減できるという点も、
ガン細胞にとってメリットになります。
以上のような複数の理由から、
ガン細胞では嫌気性解糖系、及び、ブドウ糖の取り込みが亢進しているのです。
そして、
このブドウ糖の取り込み亢進こそが、
ガン細胞の生存や増殖や転移を支えていると言っても過言ではありません。
※ガン細胞では、ブドウ糖の取り込みと嫌気性解糖系が亢進し、
ミトコンドリアでの酸化的リン酸化が抑制されています。
この現象(ワールブルグ効果)は、
様々な点でガン細胞の増殖や生存に有利な効果を与えています。
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