今回は遺伝について、理科の授業のような記事になってます。




遺伝情報は、染色体の中に書き込まれています。

染色体は、
22対(1番~22番)の常染色体と、
2個の性染色体、合わせて46個あります。

↓こんなの。カッコ内の数は、その染色体1本に含まれる遺伝情報の数です。
$ヒトを科学する-男性染色体

で、性染色体がXYなら男性、XXなら女性になりますので、上の画像は男性の染色体ということです。

にしても、Y染色体って短いですね。
(その理由については、ここでは触れませんが)


こんな感じで全てが対をなしている理由は、「両親から1セットづつ受け取るから」なのです。


どういうことかと言いますと、まず精子を作るときは、
"1対"の1番染色体から、ランダムに遺伝情報を抜き取り、組み合わせ、"1個"の1番染色体を作ります。

そして、
"1対"の2番染色体から、ランダムに遺伝情報を抜き取り、組み合わせ、"1個"の2番染色体を作り…というように22番染色体までが作られ、
性染色体はXかYのどちらかを受け取ります。

それで計23個の染色体を持つ精子が作られるわけです。

ちなみにこの過程は、
染色体の数が46個から23個に減りますから、減数分裂といいます。


卵子も同様に減数分裂によって作られますが、女性の場合は性染色体がXXなので、卵子の性染色体は必ずX染色体になります。


その精子と卵子が合体し、
22対の常染色体と、2個の性染色体を持つヒトが誕生するのです。

↓こんな感じで。常染色体を1本のみ描いてみました。
ヒトを科学する-減数分裂

ちなみに、卵子の性染色体は必ずX染色体なので、精子の性染色体がXなら女性、Yなら男性が生まれます。

つまり、性の決定は精子に委ねられているということです。




さて、ここまでが、遺伝子を受け継ぐ仕組みです。

ここからは、
両親から受け継いだ遺伝子が、どのように"個性"として表現されるかを説明していきます。




まずは、優性の法則(メンデルの法則)について。


遺伝子には、優性遺伝子と劣性遺伝子というものがあります。


先ほど説明したように、
遺伝情報は、両親から1セットづつもらうため、ヒトの設計図は、誰でも必ず2セット持っているのです。

つまり、髪の色、鼻の高さ、耳たぶの大きさ、外向的か内向的かなど、心と身体を形成する全ての設計図を、
父方母方の、どちらからも受け継ぎ、持ち合わせているということです。

そして、その2セットの中から、
髪の色は父から、鼻の高さは母から…というように、どちらか一方が表現型として現れるのです。
("表現型"とは、遺伝情報が身体的心理的に表に現れる形質のことです)


例えば、目の色に関する遺伝子で、
母方から黒色(優性)、父方から青色(劣性)、の遺伝子を受け継いだ場合、
目の色は、黒と青の中間色になるのではなく、優性遺伝子の表現型である"黒色"になるのです。

しかし、目の色が例え黒色だとしても、「青色の劣性遺伝子が表現型に現れない」というだけであり、持ってはいるのです。



ちなみに、血液型も優性の法則があてはまります。

AOならA型、BOならB型、ABならAB型、OOならO型です。

つまりAとBは優性、Oは劣性ということですね。


ちなみに、ここで言う優性・劣性は、遺伝子的に優れている・劣っているという意味ではありません。
ただ単に、表現型として現れるのがどちらになるか、ということです。


この優性の法則により、
「ある特性の遺伝情報を持っていても、表現型として現れないこともある」ということが言えます。


隔世遺伝が起こるのも、このためです。


ヒトの遺伝情報は、目に見えるものだけではないということですね。




それからもう一つ、優性の法則の他に"不完全優性"というものがあります。


これはアサガオの花色を例にしてみましょう。


アサガオの花色には、赤と白の遺伝情報があり、
そこには優性・劣性という優劣がありません。

その為、
遺伝情報が"赤・赤"の場合は、花色が赤になり、
遺伝情報が"赤・白"の場合は、花色がピンクになり、
"白・白"の場合は花色が白になるのです。


こういった、優性・劣性がはっきりと区別されていない遺伝を、"不完全優性"と言い、両方の中間が表現型として現れるのです。




そして、さらにもう一つ、"遺伝子のメチル化"というものがあります。

メチル化が起きると、その部分の遺伝情報を読み取ることが出来なくなるのです。

上記のアサガオを例にすると、
遺伝情報が"赤・白"のアサガオの花はピンク色でしたが、
"白"の遺伝情報にメチル化が起きると、花の色は"赤"になるのです。

また、優性だった遺伝情報にメチル化が起これば、劣勢遺伝子が表現型に現れることもあるでしょう。


これはどういった原因により生じるのかはっきり解明されていませんが、
育つ環境次第で、使う遺伝子と使わない遺伝子を区別する、ということが起こるのです。

100%同一の遺伝子を持つ一卵性双生児でも、年を経るごとに相違点が大きくなっていくのですが、
これが原因の一つのようです。



遺伝にも、いろいろあるのですね。



さて、ここまでが遺伝の基礎です。

ここからが更に重要なのですが、さすがに長すぎるので次回に先送りします。

お疲れ様でした。



つづき→多因子遺伝



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