ふぉんと | 真夜中の日蝕 くろはた出張所

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アメブロには変なこと書けないのでゴク真面目なことだけ書きます

 先の記事の画に使った立て看文字のフォントには「HGS創英角ポップ体」を使用した。

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 デヘ「おう、くろはた。立て看書くの手伝ってくれよ」

 なにやってるんだろう、地味で面倒そうなことやってるな、と友人のデヘ君が作業やってるのをこっそり覗きに行った時だった。見つかってしまった。
 デヘというのはいつも「でへへへ」と笑うので付いたあだ名だ。

 くろ「ぼくは字が汚いしそんなもん書けるわけないじゃん」

 字はへたくそだ。絵心もまったくない。そんなやつに書かせたらアカン。

 デヘ「大丈夫だって。塗り絵とおんなじ。下書きに沿って字を太く書けばいいだけ」

 Noと言えない日本人だったので、立て看書きをやらされることになった。

 くろ「どう書けばいいのさ?」
 デヘ「ハケで、ばーっと書くの。端っこは四角くなるようにして。線があったら線の内側がへこむようにする」

 あれだ、ドーリア式の柱の逆だ。ドーリア式の柱は頭と足が細く胴体が太い。胴体が細くなるように書けということらしい。

 デヘ「お。うまいじゃん」

 えへっ。ほめられて伸ばされるタイプだから。乗せられて喜ぶ。
 そこへ近くで別の立て看書いてた党派のおばさんがやってくる。

 おば「えー、なに? くろはたくん、立て看書くの初めて?」
 くろ「はい、そうなんです。なんか書くときに気をつけることありますか?」
 おば「今の調子で書いてていいと思うよ。字、うまいじゃん。ああ、文字はね、白いところが少なくなるように書くとカッコ良くなるよ」

 『国』という字があれば、国構えの中の白い部分が少なくなるように『玉』を書けということらしい。
 おだてあげられていい気になったもんだから、それから何度も立て看を書くようになってしまった。

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 『全』とか『今』の『入』の部分は三画で書くのがうちのスタイルだった。頂点部分に一本水平に線を入れるのね。これはガリ版鉄筆で文字を書くとき鋭角な部分を減らしてロウ原紙が切れないようにするための書き文字癖なのだろうと思う。立て看はその内容や署名(立て看の右下や左下にどのグループが作ったのか名称を入れる)だけじゃなくて、こういう書き文字や色遣いを見るだけで、どこの誰が書いたのか判るようになる。党派によっては使用するフォントが決まっているようで、奇妙なことに全国で同じ文字フォントで書かれる。彼らの機関紙に掲載される写真によって共有されていたのかもしれない。

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立て看samp

 このフォント、私の立て看文字にそっくりなのね。びっくり。