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 タイトルの「子供」とは、ブリュノとソニアの間に生まれた赤ん坊ジミーのことではない。父親・ブリュノのことだ。20歳で定職につかず、仲間と盗みを働いて生計をたてている。父親の自覚はまるでなく、ソニアに乞われてもジミーを抱くことすらしない。職業斡旋所へ行っても行列を見ただけでやる気をなくしてしまう。子供が子供を作ってしまったとき何が起こるのか。ブリュノはまるで盗品を売りさばくかのようにジミーを売ってしまう。ソニアに相談することもせず。ジミーが売られたことを知ったソニアはショックのあまり気を失い、病院へ運び込まれる。驚いたブリュノはあわててジミーを取り戻す…。


 『ロゼッタ』、『息子のまなざし』 のダルデンヌ兄弟の新作。『ロゼッタ』に続き、2度目のカンヌパルムドール受賞を遂げた。『ロゼッタ』では救いのない貧困の世界を淡々と描き、『息子のまなざし』では暗闇の中での微かな希望の兆しを、そして本作では厳しいだけではない、暖かなまなざしで若者を見つめた。一作ごとに、ドキュメンタルからエモーショナルへ、良い意味で変遷を遂げ、カンヌに愛される作品を作り出した。


 ラスト近くでのブリュノが自首をするシーン、そして涙を流すシーンは、彼の成長、心の優しさ、美しさを表し、ひとすじの光としてとらえることができる。だが、個人的な視点で言えば、果たしてブリュノの自首の目的とは、実社会で得ることのできない、雨風をしのぐ屋根と暖かな食事を得るためだけだったのではないか、とも思える。判断は、観るものの視点の意地の悪さによるのかもしれない。

 とにかく、この作品がダルデンヌ兄弟の一つの到達点であり、必見であることには間違いない。


2005(ベルギー・仏)

監督・脚本 ジャン・ピエール&リュックダルデンヌ

出演  ジェレミー・レニエ

     デボラ・フランソワ

公式HP http://www.bitters.co.jp/kodomo/index.html



     息子のまなざし