<季節はずれとは?>
「ねえ!スコップない?スコップ!!」
「・・・・・・・。」
いきなりだったので、私も、向日葵も固まっていた。
「あ、これね!ありがとありがと!」
そういって誰とも言葉を交わしていないのに、彼女は
入り口に立ててあったスコップを借りて走っていってしまった。
―――・・・・・数分後。
雪なのか汗なのか、髪もコートも冷たくなった彼女が帰ってきた。
「・・・・・・だめだわ・・。車・・・・置いて帰ろうかな・・・・。」
とても寒そうにしている彼女に、暖かい飲み物でも
いかがですか?と言ってみた。
すると彼女は「何かもらおっかな・・。」
と言って濡れた髪のけを、ゆっくり耳にかけた。
あまりにも会話が自然だったので思わず向日葵が
わかるんですか?と聞いていたのを覚えている。
いつものあの感じで「は?」と聞き返されていたのは
初めて会ったときから変わらないやり取りである。
コートを脱いで、よかったらと渡したバスタオルを
頭からかぶって、ソファーに座っていた彼女が
ちょいちょいと、手招きをした。
なんだろうと近くまでいった次の瞬間、私はえい!という
掛け声とともに、暖かい腕の中に居た。
「この子かわいいー!呼んだら来るなんて!!」
そう彼女が言いながら
「あったまるまでここに居てね。」
なんて少し申し訳なさそうに笑った。
「おまたせしました・・・。」
向日葵が持ってきたのは、ホットココアだった。
「ココア?コーヒー屋さんかと思ってたのに。」
そういって一口、飲んだ。
「・・・・・・・おいしい。」
彼女の唇が、だんだんとぴんくになっていくまでに、
そう時間はかからなかった。
雪は、まだ止まない。