こんばんは。

9210と申します。

ブログ内容は主に小説となります。でも、ときどきイラストも描くかもしれません。


ただいま公開、完結しているタイトルは、こちらです↓

『暇神 ~Idle Hands of Llighter~

【TUNAハウンテッド】※001~008(ページ数)

http://ameblo.jp/kunito-9210/entry-10380081583.html


※小説のキャラクターイラストを募集しております。


●募集しているタイトル

『暇神 ~Idle Hands of Llighter~

【TUNAハウンテッド】


●募集しているキャラクター

・マスケン(枡居ケンヂ)

・カツヲ

・クロレラ(女の子です。カツヲの幼馴染)

・鍵盤ハゲ

・由良(カツヲの妹)

・母親

・父親


小説内の情報があまりにも少ないので、イメージが掴み辛いかと思いますが、そのあたりは自由にお願いいたします。応募された作品は、随時公開させていただきます。

※非公開を希望される方は『非公開』と一文、付け足してくだざい。


添付先はこちらにお願い致します。aibyouka@hotmail.co.jp



参考なまでに、僕の中のマスケンを置いておきます。



9210-masukenn

玄関に三人が並ぶ。由良、父さん、それに、

「だーかーら、マスケンでいーって」

それにマスケン。舛田ケンヂ先輩。確かに恩人だ。クロレラの言っていたとおりだ。

「マスケン、ひとつお願いがあるんだけど」

「なんじゃらほーい」

チュッパチャプスを口に入れる動作を一時、停止する。

「クロレラにさ、礼をいっておいてくれないかな。あいつには色々、気を使わせてしまったみたいだし。」

「あー、はいはい、彼女も若干、視えちゃう体質だからねー、オーケーオーケー、今度、購買であったら伝えとくよ」

あんな危険地帯に下級生はいねえ!

「あ、それとさ、ひとつ疑問なんだけど、一番最初、教室でマスケンを呼んでくれた鍵盤ハゲ、いや、スキンヘッドの先輩って、俺のこと視えてたようだけど、あれは……」

「あっは、あはっは。鍵盤ハゲ! 最高なネーミングだね。カツヲ君やっぱりあだ名つけるセンスあるよー、で、あー彼ね。うん、たぶんそれで正解だよ。彼も結構視えるからね。ほら、僕が携帯で電話していた相手いるじゃん? あれも彼だよ。休み時間に学校のPCで調べてもらってね。まぁ、僕の助っ人みたいなものだよ。っていうか僕の周りはわりとそういの人多いよ? べつに視えはしないけど、僕がこれだからさー、馴れちゃったーっていう。だからカツヲ君が気にする必要は全くないよー」

なるほど。なるほど。

「じゃあ、カツヲ君、またね」

マスケンが玄関のドアを開ける。途端にあたりが暗くなる。

「お兄ちゃん、」

妹が抱きつく。俺はそれを力いっぱい抱きしめる。

お互い、もう温もりと感触を、分かち合うことはできてないのに。

「カツヲ、待っててくれよ、俺も、もうひと頑張りしたらすぐ行くからさ」

父さんが妹の頭をなでながら言う。

「あぁ、あんまり遅いとおいてくけどね。でも、お互い気長に、ね」

おう、と、ぐしゃぐしゃの顔を拭う父さん。

「じゃあ、みんな、ありがとね。また、な」

そう言って手を振る、ゆっくりと扉が閉まってゆく。光が、どんどん小さくなる。そして、

「ガチャ」

のこりわずかの隙間に挟む足。

「……匂いを辿ればいけるから、ね」

その足の主は、最後の一本に火をつけたようだ。

あぁ、もう大丈夫。忘れるわけがないよこんな強烈な臭い。臭くって臭くってたまらないからさ。

「ありがとね、マスケン」

いえいえ、お邪魔しました。そう言って挟んでいた足が抜ける、同時に、キーっ、と、閉まる扉を、俺はゆっくり見守る。

暗い静寂の中、独り、目を瞑った。

瞼の裏に映し出される記憶。

新築の独特の匂い、ピカピカのフローリング、真っ白な壁。父さんがテレビをつけているのか、聞きなれたアナウンサーの声が聞こえる。そこに妹の声。また、チャンネル争いか。ほんとこりないなぁ。そんな呆れ顔の俺に向かって母さんがいう。

「いってらっしゃい、気をつけてね」

その声を聞いて妹が飛んでくる、テレビのリモコンを持ったままで。

「お兄ちゃん、いってらっしゃーい! お土産買ってきてね」

んな、無茶いうんじゃない、と、父さんが妹の頭をパシッと叩く。

今度は妹が、手に持ってるリモコンで父さんの尻を叩く。

甲高い音と共に、おぅっ! という声もした。

っはは、面白いなぁ。

「いってらっしゃい。あー、それと帰りは遅くなるんだろ、迎えにいってやるか?」

まったく、この人は。

「逆だろ? 父さん」

あぁ、そうか、と照れている俺の父親。



うん、それじゃ、と、俺は扉のノブに手をかける。



「ガチャ」



開いた扉からは真っ白な光が。それと、なんとも憶えがある甘くて強烈な臭いが鼻に過る。

こりゃ、迷う心配はなさそうだ。ありがとさん。

そして、

俺はもう一度振り返り、玄関に並んだ家族に、三人に、言う。

今なら、言える。心の底から、感謝を込めて。



「いってきます」









ほんと馬鹿だ、俺。


「あっは、カツヲ君、キミは本当に大馬鹿者だねー」

我に返る。彼は俺の目の前にしゃがんでいた。

「キミは勘違いをしているねー」

そういって俺の胸ぐらを掴んで無理やりこの体を立たせた。

「ここはキミの部屋だよ、キミの手で開けるんだ」

俺の部屋、俺が自殺を図って、俺のせいで父さんが死んだ部屋。

そして、ここに妹の由良がいる部屋。

俺の本来の目的、ここに来た理由。それがここに全て詰まっている。

手が震える、まともじゃない。でもここに妹がいる、妹の由良がいるんだ。

俺はこの日、三度目の意を、決した。

「ガチャ」

キーっと音を立てて扉を開けた。まぶしい。まぶしくて、目を開けてられない。でも、それでもなお、俺は、扉の向こうに足を踏み入れる。そこには。

「お兄ちゃん! 」

「由良……え、」

飛び込んでくる妹を抱えてやっと気付く、

「と、父さん」

そこには死んだはずの父親がいた。

「カツヲ、カツヲだな? 」

これは、いったい。

「カツヲ君、キミは勘違いをしているといっただろー? まぁ、そのへんは妹さんに聞くといいさー」

やれやれ、と、だるそうに手を横に振る。

「えっとね、お兄ちゃん。あの日、お兄ちゃんとお父さんは病院で運ばれたんだ。それでね、お父さんはすぐ手術することになったの、お医者さんももう駄目かもしれないって言ったけど、ほんと奇跡的に意識を回復したんだよ。だから、お父さんは死んでなんかいないんだよ、お兄ちゃん、だからお兄ちゃんは何も悪くないんだよ」

妹は半分泣きべそをかきながら、ニコリと笑った。

そうか、あの時、俺は意識をなくしたから気付かなかったのか。

あれ?

「カツヲ、帰ろう」

父さんが俺の腕を掴む。

「お父さん……」

妹が不安な顔をする。

「よし、帰るぞ。家に帰るんだ。母さんが待ってる家に、みんなで帰ろう」

どしどし、と階段を下りる父さん。それに引かれる俺の体。後ろから妹がこまった顔をしている。どうした? 由良。

「カツヲ君の親父さーん。ちがうでしょー」

後ろから彼の声がする。同時に父さんが立ち止まる。ちょうどそこは階段を下りた場所。玄関である。

「なにも、違わない。こいつは、俺と一緒に帰るんだ」

父さんの声は震えていた。

由良は、

「お父さん! だ、駄目だよ、できないんだよ……」

泣いている。

「帰る? あっは、どこへですかー、カツヲ君の家はここですよー」

「だから、」

父さんの言葉を被せた言葉。

「だからって、あなたも死ぬつもりですか?」

ひっ、と、妹が言う。父さんは何も言わない。

「あなたも」


あぁー、そっか。俺、


死んだのか。


「ごめんなさい、ごめんなさい」

由良、なんで謝るんだよ。

「すまん、すまん、すまん」

父さん、なんで泣いてるんだよ。


ほんと馬鹿だ、俺。

自分が死んだことに気付かないなんて。

学校も、授業も、彼に相談したときも、母さんのそばにいたときも、

そうか。ここの家は俺の記憶でできていたんだ。

 でもどうして、ここに妹と父さんがいたんだ。

「今日で四十九日目でしょー? 逢いたかったんじゃないの、カツヲ君にさー」

涙を拭いながら妹が頷く。

「それでー、帰ってこない由良ちゃんを心配して、親父さんもここに来たわけだー」

父さんがゆっくりと頷く。

「じゃあ、由良がここに閉じ込められてたのは俺のせいなのか」

なんてこった。とんだピエロじゃないか。元凶は俺なのに、俺自身なのに、それを助けようなどと。どんだけ馬鹿なんだ、俺は。

「お兄ちゃん……」

「由良、ごめんな。俺、とんでもないことしていた。お前が恋しくて、たまらなくて、ずっとここに閉じ込めていた、最低な兄貴だよ、俺」

それは違うと妹は言った。

「お兄ちゃんのせいじゃないよ! 私が逢いたいと思ってきたんだもん。お母さんと喧嘩して……寂しくて、この家に行けばお兄ちゃんに逢える思った。そして……本当に逢えたもん!」

そうか、あのときの居間で見た光景は俺の幻想だけではなかったのか。

そこにいた、由良と父さんは、本当にそこにいたのか。

「カツヲ君、どうしたい? かな」

彼が問う。口から出したチュッパチャプスを俺に向けながら。

あぁ、なんだ。この言葉は俺自身に対して、だったのか。

「生きたいって言ったら怒るんだろ?」

「あっは、怒りはしないよー、でも、うん。まぁね、もう一度いうけど、心中ってのは本人が同意した上での死だからね。誰にも文句はいえないかなー」

まったく、ようやく心中立の話を俺にした意味がわかったよ。

「あんたさ、ときどき俺にヒントみたいのだしてくれただろ? 自分が死んでることを気付かせようとさ、しかも悪魔で自然にっていう。いやー俺、馬鹿で鈍いからさ、結局、最後の最後まで気付かなくてさ、ほんとさ、ほんと、なんかさ……ほんどぉ……」

涙が、

「ほんどに、ありがどうございまじだぁ!」

止まらない。


この人は最初から気付いてた。それでも俺の話を全部聞いて、相談に乗ってくれた。

原因が俺なのに。なにもかもが無駄だというのに。最初から、わかっていたことなのに。

死人に口は、ないはずなのに。聞いてくれた。先輩。