私のウソで、奥さんの人格が崩壊した。

須賀さんと私は友達ではあったけれど、いわゆる不倫の関係ではなかった。
廊下で会えばちょっとおしゃべりをしたり、何人かで昼食を食べたりする会社の中だけの付き合いだった。

でも、私は噂を否定しなかった。私は須賀さんを愛していたから。
須賀さんと会社の外で一緒に過ごすことを何度となく空想していた。
だからあの日も幸せだった。

あの日、私は残業して帰りが遅くなって、駅までの道を一人で歩いていた。そこに須賀さんが車で通りかかり、拾ってくれた。
駅まででいいと言ったけれど、須賀さんは通り道だからと家まで送ってあげると言ってくれた。

須賀さんと初めて会社の外で2人で居ることが出来た。ずっと夢に見ていた。
私は自分の家が近づくにつれて、この楽しい幸せな時間が永遠に続いたら、私は何も要らないと思った。
そして、私は叫んだ。何かをはっきり言ったわけではないが、積もり積もった思いが溢れた。
驚いた須賀さんが助手席の私を見た。

それが、須賀さんの最期だ。何も言わなかった。何も言えないまま、一瞬で死んでしまった。
須賀さんがハンドル操作を誤り、塀に突っ込んでしまったのは、私のせいだ。
ハンドルを掴んで塀に突っ込ませたのかも知れない。


私は須賀さんの思い出と共に、この秘密を私の胸にしまっておくつもりだ。
須賀さんは私を受け入れてくれるだろうか。
私のウソを責めるだろうか。

それでも私は須賀さんに会いたい。
私は今夜、須賀さんの元に行く。