熊宮佳輝ブログ

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精神世界や思想に関心を持っています。さまざまな社会問題について考えていきたいと思います。

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 まずは、性同一性障害の具体例について、見ていこう。

(例1)
『幼少時より女の子としか遊ばず、女の子の服装をしたいと思っていたが、父親が厳格な人であったため、実際に女の子の服装をしたことはない。母親と一緒に料理をするのが楽しみであったという。幼少時には性別については特に意識しなかったというが、小学校高学年頃から、体は男性であるが、気持ちは女性だと確信するようになり、次第に男性としての体に対する嫌悪感が強くなった。』
(山内俊雄「性同一性障害の基礎と臨床」株式会社新興医学出版社、二〇〇四年)

 この男性は、男Sだと思われる。男Sは、女Sと同様に、ソフトな感覚を持つため、フリルなどのついたデザインを好む。そのため、女の子の服装をしたいと思っていたのだろう。また、この男性が、気持ちは女性だと確信するようになった理由の一つは、女の子の服装を好むなど、自分の感覚がソフトであるためだと思われる。
 ハードな感覚の男Nは、男全体の中で、90%くらい存在して、ソフトな感覚の女Sは、女全体の中で、90%くらい存在するため、ハードな感覚が男性的で、ソフトな感覚が女性的というのが社会一般的なスタンダードになっている。しかし、実際には、ソフトな感覚の男Sが、10%くらい存在して、ハードな感覚の女Nが、10%くらい存在するため、その感覚は、多数派のものでしかない。必ずしも女性の服装でなくても、男性用の服でも、ソフトスーツのように、男Sが好む、ソフトなデザインのものはある。
 次の例を見ていこう。

(例2)
『私は男女両方とも好きだが、女性に対しては、精神的にしか好きになれず、性的魅力を感じませんでした。一方、男性には性的魅力を感じていたので、「これはマズイ」と思っていました。そこで、自分がゲイかどうか確かめるために彼女と会ってみたのです。彼女と会ってみてもやはり自分の性的指向は変わらず、その後夏過ぎまでずっと考えて、そして、「自分はホモだ」と秋に答えを出したのです。』
(矢島正見「男性同性愛者のライフヒストリー」株式会社学文社、一九九七年)

 この男性は男Sで、彼女は女Sだと思われる。男Sと女Sの関係では、性的感覚が小さいため、彼女に性的魅力を感じなかったのだろう。そして、女Sは、女全体の中で、90%くらい存在するため、一般的に、女性に対して性的魅力を感じないという答えを出したのだろう。しかし、この男性が、もし、女Nに出会えば、男Sと女Nの関係はストレートになるため、答えは違っていたかもしれない。
 法律では、次のように定められている。

『性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律
第二条  この法律において「性同一性障害者」とは、生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別(以下「他の性別」という。)であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって(以下略)』

 男Sが、「他の性別であるとの持続的な確信」を持つ理由は二つあり、一つ目は、(例1)のように、ソフトな感覚を持っていることである。しかし、ソフトな感覚を持つ男Sは、男全体の中で、10%くらい存在するため、ソフトな感覚が、女性の感覚であるという認識は誤りである。二つ目は、(例2)のように、女全体の中で、90%くらい存在する、女Sとの関係で、性的感覚が小さいためである。しかし、10%くらい存在する、女Nとの関係では、性的感覚がある。以上のことを理解すれば、男Sが、「他の性別であるとの持続的な確信」を持つことはないのではないだろうか? 女Nも同様である。