■【from Editor】見えてこない「小沢政権」(2009/03/03 08:23)
 政治学の泰斗(たいと)である佐々木毅前東大学長が怒っている。むろん、現在の政治情勢についてだ。

 共同代表を務める新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調)が先週発表した緊急アピールは、「日本政治は危機にある」と断じ、「余計な小細工を弄したり、これ以上確たる目途もなく政権を持続させることは、国民の利益と両立し得ないし、危険でさえある」と麻生太郎首相に衆院解散・総選挙の決断を迫っている。

 まさにその通り。米国発の大不況は麻生首相のせいではないが、景気回復のカンフル剤ひとつ打てていない。小泉純一郎元首相を激怒させた発言の軽さも相まって、総選挙の結果、政権交代が実現する可能性は極めて高い。

 だが、新政権の主役になるはずの民主党に国民の熱い期待が寄せられているかといえば、そうとも言い切れない。それはなぜか。最も大きな原因は、政党としての透明性が自民党よりも欠けていることではないか。

 民主党を中心とする新たな政権が、政府をどのような形で運営し、どんな政策をどのような手順と財源で実現させるのか、さっぱりわからない。鳩山由紀夫幹事長ら幹部や個々の議員は、「中央省庁の局長以上に辞表を出させる」など新政権発足後の青写真を口にし始めているが、ほとんどが党内論議を経て正式に決定された政策ではなく、個人的見解のレベルにとどまっている。ある幹部は「重要な案件は最終的に小沢一郎代表の判断に委ねられている」と自嘲(じちょう)気味に語るが、それでは「民主」の看板が泣く。

 きのうからスタートした連載「民主党解剖」は、民主党や小沢代表のちょっとした欠点や瑕疵(かし)をとらえ、攻撃することが目的ではない。政権交代が実現すれば、この国はどこへ向かい、何が変わるのか。政官癒着は本当に打破できるのか。民主党に政権を担当できる人材はそろっているのか。首相候補の小沢氏はそもそもどういう政治家なのか、といった日々小社に寄せられる読者からの疑問に答えようと企画されたものだ。

 前出の緊急アピールが、「現在の政権党に代わる政党が同様の醜態をさらけ出すならば、政党政治そのものが崩壊しかねない」と指摘しているように、政権奪取後に醜態をさらしてもらっては、この国は沈没する。修正が可能な今こそ、問題点を指摘するのがメディアの役割と心得、今後も民主党を大胆に解剖していきたい。(政治部長 乾正人)







救われないのは国民か