『なでしこはなぜ、金メダルを逃したのか』の連載9

第5章 INACコーポレーションは文弘宣氏のパチンコ在日企業

  ホマさんはINAC神戸と文弘宣さんに恩義を感じすぎる?

 INAC神戸レオネッサ会長の文弘宣氏に対しては、女子サッカーを、なでしこジャパンを、INACをこれだけ強くしてくれたことに、感謝しなければならない。しかし、特にワールドカップ制覇以降の文氏やINACコーポレーションを見ると、なでしこに対する露骨な利用主義、もうけ主義によって、女子サッカーを、なでしこジャパンを、INAC神戸を商業主義、もうけ主義に転落させてしまったと断言せざるをえない。澤選手を襲ったさまざまなトラブルに、文氏は第一義的な責任があるといわざるをえない。

澤は「練習に専念できる環境を整えてくれた」INACの文氏に恩義を感じているようだ。彼女は『負けない自分になるための32のリーダーの習慣』の中に述べる。

「プロである以上は、自分を高く評価してくれるチームにいくべきです。移籍に関する話し合いの中で、INAC側の自分に対する評価が高かったことと、サッカーをする環境を聞いて、決断しました。そのときのわたしにとって、優先順位が高いのは、『プロサッカー選手としてもっと成長する』ということでした。それが、INAC神戸を選んだ最終的な理由です」

また、『夢をかなえる』の中に述べる。

「充実した心と体をつくる源は、生活環境を整えることにあると思います。

幸い、所属するINAC神戸レオネッサは、私と大野選手がプロ契約、ほかの選手はみんなサッカーに専念できるINAC神戸の社員扱いです。……INAC神戸は昼間にサッカーをすることができる。朝食を食べて、練習をして、昼食を食べて、夜には自炊をしたり友達と外食したりして、日付が変わる前には眠りに就くことができる。……現在のINAC神戸で得られた生活環境は、本当に嬉しいかぎりです」

レオネッサのほうは、その代表者は佐古田修という人物で、外観上はNPO法人のようになっているが、文氏は、ここでも実質的にはレオネッサの「会長」あるいは「部長」として君臨している。インターネットの「佐古信五の活動報告」では、全日本女子サッカー選手権大会優勝祝賀会で澤穂希が、文弘宣氏とならんで談笑している写真が掲載されている。何か非常に親し過ぎる関係があるのだろうか。

INAC神戸の会長でもある文氏も「プロ契約を交わしているのは澤や大野など数名ですが、他の選手はグループ企業で雇用(社業免除)することで、選手全員にプロ同様の環境を与えています」と述べている。INAC神戸には「ホームスタジアム神戸」など3つの試合会場があり、「アスコ・ザ・パークTANBA」など4つの練習場があり、競技施設も整っている。また、関連組織として若手育成の「INAC神戸レオネッサU‐18」、東京にはジュニアなどを対象とした「INAC多摩川」がある。

文氏はこのような選手たちの待遇改善、環境整備のために「10年間に15億円ぐらいは使った」と豪語しているが、このような露骨な表現は、旧日本船舶振興会の故笹川良一的であり、あまり好きではない。

なでしこメンバーは、これほどまでにINACコーポレーション、INAC神戸に貢献したのだから、もはや必要以上に恩義を感じる必要などないのである。世界のなでしことして堂々と自己を主張すべきである。要求すべきは要求し、拒否すべきは拒否すべきである。折り合わなければ、別のクラブチームに分散移籍すればよい話だ。なでしこであれば、引く手あまただ。

文氏に少し反省してもらいたいからいっているのである。例えば澤選手が幾つかのトラブルを起こして、それが文さんにもダメージを与えたはずである。京川の大ケガにも同じことがいえる。それには文氏にも責任があるはずだ。ここで軌道修正をしないと、また、同じような問題が発生する。筆者はあえてリスクを冒して、諌言役を引き受けているのである。

INAC神戸は在日の超大物、文氏のおかかえ企業

「INAC文王国の組織図」「INAC文王国の地政図」見てもらいたい。INAC神戸レオネッサは、その運営会社が、株式会社INACコーポレーションで、その親会社がアスコホールディングスであり、いずれの代表取締役も文弘宣(ムン・ホンソン)氏である。INACコーポレーションの代表者は文氏であり、その事業内容を見れば、「スポーツ事業(主にサッカー)のチーム運営に関する営業・企画。他、広報誌の作成やイベント企画の運営」とある。つまりINAC神戸に所属するなでしこメンバーのコマーシャル、テレビ出演、グッズの販売なども取り仕切っているのである。彼らにとって、レオネッサはサッカーという営利事業の道具にほかならないのであり、このような営利体質は、変わりようがないのだろうか。

アイナックコーポレーションの親会社は、アスコホールディングス。設立が1953年で資本金がグループ合計で1億9000万円、年商は2011年2月期で215億円。グループ企業は、エイチアンドアールコーポレーション、アイナックコーポレーション、アスコテクニカなど。パチンコ、パチスロ事業、スポーツ事業、不動産、外食、居酒屋、IT事業などを手広く展開する。神戸市中央区の三宮駅の一等地にあるアビック一番館、弐番館、3番館が、アスコグループのパチンコ、パチスロ、映画、遊興事業を展開している店である。

文一族は、先代からパチンコ業で日本の庶民のなけなしの金を、パチンコ台とパチスロ台を通してかき集め、財産を築き、事業を拡大してきたのである。パチプロと言ってパチンコだけで儲けて生活できている人もほんの一握りであるが、ほとんどすべてがパチンコ、パチスロで小金を日々吸い取られてきたのである。INAC神戸の「王国」はパチンコ、パチスロ事業によって築かれたものである。

INAC神戸レオネッサは金にあかせて有名選手をかき集める

INAC神戸レオネッサの前身は、2001年に設立されたレオネッサ。国内外から選手を移籍させ、05年には女子サッカー2部リーグ優勝、06年にはL1リーグに昇格、08年には川澄がなでしこジャパンに選出されている。09年にINAC神戸レオネッサに改称、2010年の第32回全日本女子サッカー選手権大会で初優勝している。11年には澤、大野、近賀、南山を日テレ・ベレーザから移籍、7月のワールドカップには7人がINAC神戸から召集され、世界一に貢献した。なでしこリーグでは無敗で優勝、全日本女子選手権も連覇し、2冠を達成している。レオネッサは11年の関西スポーツ賞、関西元気文化圏賞も受賞している。いまやINAC神戸は国内では敵なしの「王国」を築いているかのようである。

しかし、何の勝負事でもそうであるが、1個人、1団体があまりに強すぎて、あとはすべてかなわないという場合、見るほうとしては、試合がつまらないものになり、その競技全体の人気も落ちてしまうことはよくあることである。

2011年のなでしこリーグでは、INAC神戸が13勝0負3分で得点49、失点8で、それまで強豪チームであった日テレ・ベレーザさえもぶっちぎりで引き離して優勝。リーグ戦としての妙味も半減してしまった。試合内容も8―0などの一方的なもので、勝負としての興味も失ってしまう。