己を鼓舞する挑戦 | 九段の真希のパッチワークな日々

己を鼓舞する挑戦

フィギュアスケートフランス杯のSPが行われる夜。
夕方仮眠した昨夜は、 遅くまで目が冴えていたので、 過去に録画したTV番組を流しながら、 夜なべ仕事(裁縫) をしつつ、 ライストが始まるのを待ちました。


フランス杯のショートは午前2時頃から~ということで、 それまではフィギュアとは違う番組を見よう…と、 盲目のピアニスト、 辻井伸行さんのドキュメンタリーを。




そうしたら、 途中からその演奏に目が釘付けとなり、 作業が進まなくなってしまいました。

番組そのものは昨年 放送されたものです。


この番組の中で、 辻井さんは

  ショパンの「バラード第4番」




  ラヴェルの「夜のガスパール」




そして、 ラフマニノフの「ピアノ交響曲第三番」に挑みます。


合間に CM音楽の作曲、 演奏と出演。

映画「マエストロ」のエンディング音楽の作曲と演奏…というお仕事もあり、
多忙な中で、 練習を重ねていかれます。


辻井さんはラフマニノフの「ピアノ交響曲第三番」という大曲 (40分) に挑むにあたり

「長いので、 体力と集中力が必要です。でも、 オーケストラと合わせるのは楽しいですね」と答えておられます。


ウラジミールーアシュケージ氏の指導を仰ぎ、 ラフマニノフがこの曲に課した技術的、 音楽的要求についての理解を深め、

相前後して、 子どもの頃からの指導者である川上昌裕氏 (東京音楽大学准教授・当時) の元で技術を磨きました。

川上先生の解説を伺うだけでも、 素人の私にも その難曲であることが伺えます。










普通のピアニストにとっても弾くのが難しい この曲を、 楽譜を読めない辻井さんが「先生の演奏を聞くだけ」「この音はこの指で、 と教わるだけ」で、 丸暗記して 弾くというだけでも驚愕します。


音楽評論家の伊熊よし子氏は…

「 辻井さんが あえて難曲に挑むということを伺った時に
『やっぱり彼は こういう難しいことに挑むことで、 自分を鼓舞していく。もっともっと自分を高みへ上げたいんだな』ということを感じました 」と。


演奏の場所は、 英国のイングランド北部 リヴァプール。
ビートルズの故郷として世界的に有名な街です。




「ロイヤル リヴァプール フィルハーモニー」の楽団員との練習を重ねて、 いざ 本番。

指揮者のヴァシリーーペトレンコ氏の腕に掴まり、 ピアノの元へ誘導してもらいます。





ピアノの前に座ると 雰囲気が一変します。




楽譜の置かれないピアノ


ピアノの脇にカメラが設置され、 ずっと辻井さんの手元を映しています。




どうして パッと離れたところにある鍵盤を迷いなく叩けるのか…不思議。

凄いスピード。

途中、 左右の手の交差するところもあるし、 独奏も多いので、 神経を張り詰めておられるのが分かります。




完全なるピアノとの 一体感から生みだされる旋律…。

よく耳にする「第三番」の 有名なフレーズ(終章のクライマックス) に到るまで なんと長いことか!

もう 食い入るように見てしまいました。



オーケストラとの息の合った演奏は終わりました。




番組では 終了後の観客の反応も拾っていましたが

「こんな演奏は初めて聴いた」
「辻井は日本の宝」といった声が多い中、




「自分の子どもも目が悪いがピアノのレッスンをしている。辻井のコンクールの様子をTVで知った息子にせがまれ、 今日一緒に聴きにきた」という女性の声が印象的でした。


フィギュア(フランス杯)のライストを待ちながら見ていたので…

つい、 フィギュアのことも連想してしまいました。

男子シングルの「4回転ジャンプ競争」となった今シーズン。

その中で 更に 芸術的な高みを目指そうとする 羽生結弦選手や、 そのライバルの選手たちのことを…。


「 難しいことに挑むことで自分を鼓舞していく。もっともっと自分を高みへ上げたいのだ 」

という言葉は、 アーティストにも アスリートにも 共通する想いなんだな~と、 思ったことでした。

 

ちなみに先ほどのコンサート。
アンコール曲は、 同じラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」でした。

(=^ェ^=) お馴染みの旋律を、 にこにこして弾いておられましたね~。