前の記事では横浜・東京あたりは放射能の影響はほとんど無い、と書きました。それではもう少し原子炉に近いところはどうでしょう?

放射線の強さは距離の二乗に反比例して下がってゆきます。たとえば距離が100倍になると一万分の一です。また大気はガンマ線の吸収が良く、概ね中心部から10キロ以上離れれば、殆どのガンマ線が吸収されてしまい、届きません。つまり原子炉からの直接の放射線は10km以上離れれば殆どゼロになります。

次に放射能(放射性物質)の拡散があります。こちらのほうは多少厄介です。それでも30kmも離れれば、放射能の量はかなり少なくなります。また放射能の成分は短期間で弱くなるものが多く、悪名高きヨウ素131は8日間ごとに半分が消えてゆきますので、2ヶ月半ぐらいで1000分の一、5ヶ月で100万分の一まで消滅して殆ど害はなくなります。

原子炉の中ではヨウ素131の他にも何100種類もの多様な放射性物質が生成しています。その中で半減期の短いものも長いものもありますが、平均すれば放射能の強さは概ね3ヶ月で1/10程度になるようです。そしてこれらの放射性物質は多くが重金属です。従って塵といっても比較的重いものがおおく、あまり遠くまでは飛散しません。事故後の短い期間はヨウ素131、放射性キセノンなど、揮発性の高い物質や気体物質が流れてきますが、これらはいずれも希釈しやすく、さらに半減期もそれほど長いものが無いので、あまり心配ありません。

今回の原子炉事故はチェルノブイリとは異なって、核爆発を伴っていませんし、炉心の火災もありませんので、舞い上がって飛散した放射性物質はかなり少ないと予測されます。以上を総合的に考えると、30キロメートル圏内から避難すれば大丈夫と考えています。

ただし、事故後数ヶ月は強い放射能を持つ塵(ホットパーティクル)が落ちてくる可能性があります。これを体内に取り込むとその塵の場所だけ集中的に被爆をすることになって、あまり好ましくありません。

これはホコリの防御なので、基本作戦は花粉症対策と似ています。マスク、めがね、防止、肌をさらさない、外から帰ったら手洗い・目洗い励行、入れに入る前、玄関でホコリを払い落とす、外に洗濯物を干さないといった対策が有効です。

また、雨にも(特に振り始め30分程度は)数ヶ月は当たらないように注意したほうが良いようです。もし雨に当たった場合には最低限ふき取ります。できれば水道水のシャワーを浴びたほうが良いです。

以上の注意はあくまでも原子炉から80km以内程度の比較的近い場所での事で、それ以上離れている人たちは心配したり対策したりする必要は今のところありません。

核分裂の全放射能は時間とともに急速に弱くなってゆきますので、非常に近く(30km以内)の方々は放射能が弱くなるまでのしばらくの期間疎開をするといった事も有効です。

(文:窪田敏之)