人志松本のNHKな話 | 皆様ご機嫌いかがでしょうか 

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【久保田光彦オフィシャルブログ】 

先日二夜連続で、松本人志がNHKの特番に登場した。ご覧になった方も多かったと思います。金曜日に『松本人志のコントMHK』。土曜日に『プロフェッショナル』。たまたま編成が重なったわけでは、もちろんない。『プロフェッショナル』の中に、『コントMHK』の収録現場が取り上げられていた。『松本人志のコントMHK』は、松ちゃんのコント番組であり、『プロフェッショナル』はドキュメント番組である。つまり意図的編成でありますネェ。

ダウンタウンは断るまでもないが、カリスマ的な人気を誇る漫才師(漫才は、もうやらないが…)・お笑い芸人である。在京キー局でのレギュラーは週4本、それぞれがピンで出ている番組を合わせると6本の、超売れっ子タレントだ。そのダウンタウンは、NHKにはほとんど縁がない。NHKが避けているのか、ダウンタウンが嫌っているのか。私の知る限りでは、浜ちゃんが紅白に出場したときに、松ちゃんが応援で出演したのと(95年)とRE:JAPAN(01年)の時の2回だけだと思います。それ以前は知らない。

何故今、NHKは松本人志なのか。『プロフェッショナル』はまだ分からなくもないが、コントの特番とは…。中身はフジとは違って、NHK的な大したことなのないモチーフだった。それと一つ気付いたのは、スタッフの笑い声が、収録で入り込んではいなかった。あのヤラセ的な、ヨイショ的盛り上げ効果狙いの笑い声は、時として邪魔くさいのだが、さすが天下のNHKは、どんな些細な仕込みも容赦しないのでしょう。なんとなく、アレに慣れているせいか、妙に静かな違和感が漂っていた。

ウ~ン、疑問に答えていないナァ。何故、松本なのか。どちらが先に言い出したのか。もし松本サイドからなら、一つ思い浮かぶ答えがある。それは、”コントが民放では作れない!”というもの。コントは、手間暇がかかる割には、レーティングに反映されないジャンルだそうで、『ごっつええ感じ』が終わってから、松ちゃんはテレビで本格的コント番組は手がけていない。テレビでは限界を感じたのか、ライブ(武道館の)や映画に活動の場を移したのだと思っていました。

そこにいきなりのNHKである。民放と違ってNHKは、予算と時間をかけて、じっくりとコントを作り込むことができるのだろう。レーティングも関係ないし、ある意味挑戦ができるのかもしれない。無論NHKの放送倫理の枠内に収まることが、大前提ではあるだろうけど…、例えば差別ネタや下ネタ、CM関連等を避ければいいわけで、『劇的ビフォアーアフター』をパロッていたのには、少し驚きましたがネ。

しかし、今テレビ業界は空前のお笑いブームなのだが(=バラエティーブームなのだが)、本当の笑いや本当のバラエティーは皮肉にも出来ずらくなってきている。テレビは芸を消費するメディアで、芸を育てることはできない。笑いで天下を獲った欽ちゃんでさえ、テレビで芸を見せたのは1度しかないそうです。もし本当にNHKでしか本物のコントが出来なくなったとしたら、それこそ「なんということでしょう~!(加藤みどりさんのナレーション風に)」である。