カンプノウで行われるクラシコに、また今年もやって来ました。これで4年連続です。本当にWOWOWのサッカー班には感謝しております。思い返せば、初めてクラシコを担当したのが、07年3月。カンプノウでの対戦は、3-3の引き分け。まだ子供子供していたメッシが、なんとハットトリックをやらかして、隣にいた現地のコーディネーターは声を嗄らしながら絶叫していた。終了直前の同点劇は、今でもはっきりと思い出す。
私は現地で生で、世間で言われるダービー・ライバル対決・因縁の一戦を見たことが無いので、他との比較は出来ないが、これまで経験してきた数ある中継・観戦試合の中でも、その音量やどよめき圧倒感は、間違いなく№1である。とにかく、ブーイングの音が半端ないし、観客が床を踏み鳴らすとスタジアムが揺れるんですヨ。大袈裟じゃなく、最初は何事が起きたのかと思ってしまった。
去年も世界中の注目を集めたが、今年は輪をかけてすごいことになっている。その最大の理由は、モウリーニョの存在だろう。ご存知のように、モウリーニョは90年代にバルサで通訳とアシスタントコーチを務めていた。その後超一流監督になっていくのだが、事あるごとにバルサをライバル視し、挑発的言動をとってバルサ関係者やサポーターを怒らせてきた。モウリーニョという人は、頭が切れて人心掌握術に長けた、アジテーター的な性格な人だと思う。マスコミと対立しながら、それをうまくコントロールして、否が応でも、盛り上がるように仕向けているようにさえ見えますネ。
そのモウリーニョが会見で、「引き分けでもいい。」という発言をした。これがまた憶測を呼ぶ。バルサのペップや選手達は、その発言をどう受け止めるのか。意に介さないのか。表面は平静さを装いつつ、考え分析しているのか。昨季のチャンピオンズリーグ・インテル戦のことがある。バルサは苦杯を嘗めさせられた。リベンジに燃えていることは想像に難くない。だからなおのこと、陽動作戦と捉えてしまうのは、下種の勘繰りというヤツでしょうか。
去年のクラシコは”カンテラ(育成組織)vsカルテラ(財布)”といわれ、レアルが金に飽かせて選手を集めたことを揶揄して、皮肉っぽく新聞に書かれていた(もちろんバルセロナの地元紙)。今年クラシコにタイトルと付けるとすれば、”W杯優勝チームvs世界選抜”でしょう。まさにドリームマッチである。しかもガチンコ、親善試合とはわけが違う。28年ぶりの月曜開催も、特別感があっていいですネェ。
自分のことで恐縮だが、過去にユーロの決勝や五輪の決勝、93年Jリーグ開幕戦、それにあの”ドーハの悲劇”など、何百試合と実況してきたが、クラシコはまったく別物である。なんだろう…、カテゴリーが別とでもいうのか、匂いが違う、舌触りが違う?ウ~ン、うまく表現できませんネェ。改めて29日の夜、その辺のところをカンプノウで確かめてみたいと思います。