1兆ベクレル(10の12乗)ってどのくらい? -大きな数に慣れよう | 窪田博士の研究室

1兆ベクレル(10の12乗)ってどのくらい? -大きな数に慣れよう

ベクレルというのは非常に敏感な単位だ。なにしろ崩壊する原子核を一個ずつ数えているのだ。なぜこんなに細かく数えられるのだろうか?それは放射線一本、(粒子一個)のエネルギーが大きいからだ。そこで、普段の化学的、あるいは生物学的な方法で検出するのとは桁違いに敏感だ。

(だからこそ、放射性同位元素を使用した様々な同定法が実用化され、医学や生物学の研究に役立っている)

そこで、事実上無視できるような値でもそこそこ大きな数の表示になる。たとえば4000兆ベクレルのヨウ素131って実際はどのぐらいの量だろうか?

さてここで皆さんアボガドロ数 6.02×10の23乗というのを思い出しただろう。これって中学や高校の化学でよく出てくる「巨大数」で、直感的なイメージが沸かないためか評判があまり良くなかった。

この数は何を意味しているのか?

これ、結局目の前にあるその物質、いったい何個の分子や原子でできているの?という数だ。原子は物質の基本単位だから、とても小さいものだ。だから目の前にある、目で見えるような大きさの物質に含まれる原子の数が多いのは当然。だから10の23乗なんていう巨大な数になってしまう。

ちなみに人体を60kgとして平均の原子量を10とする(かなり乱暴だけど)と10gで6.02×10の23乗個。だから60kg(つまり6.0×10の4乗グラム)÷10(g)×6.02×10の23乗=36.12×10の26乗。

我々の体はだいたいこのぐらいの数の原子でできているのだ。

さて「一兆」ってどのぐらい?これは10の12乗だ。つまり人体は概ね1兆の1兆倍のそのまた360倍ぐらいの数の原子でできている事になる。

ところで大きな数の呼び方だが地域文化によって多少異なっている。

万・億・兆・京・垓・・・という漢字式万進(一万倍づつ呼び名が上がる)の多桁表示は10の4乗づつ増えてゆく。

万:10の4乗
億:10の8乗
兆:10の12乗
京:10の16乗
垓:10の20乗

一方、メートル法なんかではK(キロ)・M(メガ)・G(ギガ)・T(テラ)・P(ペタ)等の単位が使い習わされているけれども、こっちは10の3乗づつ増えて行く

K:10の3乗
M:10の6乗
G:10の9乗
T:10の12乗
P:10の15乗

という訳で和式と洋式でも10の12乗(兆とテラ)は同じ桁なので大きな数を把握するのには便利だ。

さてここで本題の1兆ベクレルだけれども、これは一秒間に1兆個の原子核が崩壊して1兆個の放射線を発生する放射能の強さだ。

仮に、ヨウ素の原子量を130とすると、1モル、つまり6.02(≒6)×10の23乗個の放射性ヨウ素の重量は130g。1兆ベクレル相当だと崩壊する量は130g×10の12乗(一兆)÷6×10の23乗なので21.7×10のマイナス11乗。

洋式で小さいほうは

m: 10のマイナス3乗
μ:10のマイナス6乗
p:10のマイナス9乗

なので 0.02ピコグラム。・・・・直感的に言ってもこの量はかなりの少なさだ。

この物質の半減期は約8日なので

崩壊原子数の公式 1-2の(1/T)乗でTは8日=3600×24×8=619200秒を入れると、

原子核1個あたり1.0×10のマイナス6乗毎秒崩壊。これに130gを掛けると0.78×10のマイナス3乗、つまり0.78mgだ。

つまり1兆ベクレルのヨウ素131というのは実際の重量だと1mg足らず。綿埃の一粒程度の極微量であることが判る。だからナンダという訳ではないが、身体感覚に近いレベルまで持ってくると直感的理解に役立つのではないだろうか?

4500兆ベクレルは概ね3.5グラム。10円玉2個分程度の量という事になる。たったこれだけの量で広い台地を汚染するのだから放射能は怖いとも言えるけれども、この程度の量しか撒き散らさない程度の爆発や事象しか起こっていないようだ、という見当をつけることもできる。

ちなみに上記の計算式から判るように、放射性セシウム137のように半減期が長くなると、どんどん同じベクレル数に対する物質量は増えてゆくことが判るだろう。

ちなみに人体はもともと6000ベクレル程度の自然放射能源になっている。これは半減期が12.77億年のカリウム40が主な原因と言われている。

(文:窪田敏之)

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