高濃度の放射能たまり水の対処法 | 窪田博士の研究室

高濃度の放射能たまり水の対処法

専門家を差し置いて僭越だけれども、一応私案を述べさせてもらう。この汚染水、そのまま海に流されると大変面倒な事になる。というのもセシウム・ヨウ素以外の何10種類もの放射性同位元素を含み、複合汚染になるからだ。

水を注ぎ続ければこのような事が起こることは、2号機の復水機周辺が内圧で破損した後、当然予測できる事態だったと思う。

さて、過去に文句を言っても始まらないので、病状をなんとかしなくては。

まずは廃タンカーを活用してはどうだろうか?タンカーの内張りを突貫工事で行う。また内部を多数のセルに分ける。30万トン級のタンカーを使用すれば、30万立方メートル貯蔵できる。つまり一日1000トンの注水を行ったとして300日分。これで時間稼ぎを行って、次の手を打つ。

ただし、このタンカーの鉄には不純物としてコバルトが含まれており、水に含まれるプルトニウム240やカリフォルニウム252等の自発核分裂や光中性子反応による中性子捕獲で多少放射化する。このコバルト60は半減期も長く、ガンマ線のエネルギーも強いので厄介だ。このタンカーはそのまま長期間係留しておく必要があるので、そのあたりは考えておく必要があるだろう。

次に敷地内に至急プールを建設する。

50m×40m×10m(深さ)のプールを10数個程度至急建設。これは天井には帆を張って、気体の放射性物質の拡散を抑制する。これを端から順番に接続する。川上から川下にゆっくりと流れるようにすると、ヨウ素131を初めとして半減期の短いものは最後のプールに行くまでに消滅し無害化する。始めの頃のプールにはセシウムの沈殿材を入れてできるだけ沈殿させ、浚渫して高レベル放射能を低減する。

後半のテントのいくつかは半透明として太陽光で水を蒸散させる。後半のプールに行くと揮発性かつ半減期の短い放射能はあらかた消滅している。水蒸気の出口にはフィルターを設置し、放射能を含まないように工夫する。ここで水が減って濃縮が起こる。多段濃縮を行った後再び沈殿させ、セシウムやルビジウム、ストロンチウムなどを更にもう一段減少させる。

プールからはできる限り排水せず、全て浄化した水蒸気として環境に排出する。溜まった高レベル廃棄物は通常の処理過程を通す。実際には20年程度冷却した後、ガラス固化体として地層処分(大地に戻す)のが一番安全だろう。(ただし、大深度に処理する必要がある。)

ヨウ素131は半減期8.02日で非放射性の希ガスキセノン131に変化する。5ヶ月後には100万分の一にまで減少するので、この性質を利用する。またセシウムだが、水への溶解度が低い複塩があるようなので、これを利用してできるだけ沈殿させて集める。またストロンチウムの沈殿は2価のイオンなので比較的容易だ。

アクチノイド・TRU・その他の遷移元素類も比較的沈殿しやすいモノが多く、こういった貯蔵槽は結構使えると思う。

なお、次の地震と津波でこの「最強毒物」が撒き散らされないように、防水対策はきちんと行ってもらいたい。

(文:窪田敏之)

にほんブログ村 科学ブログへ
にほんブログ村