皆さま、おはようございます。
リスタートする前に、途中で放置してしまったお話を完結させたいと思います。
また、以前書いていたものを編集する場合がございますので、ご了承願います。
最後に、無事完結できることを祈って頂けると嬉しいです(笑)
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【ご注意】
このお話には性描写を含む箇所があります。
不快に思われる方はスルーして下さい。
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第一話「禁 断の実を食べた二人」
とても静かな夜だった。
夕方から降り始めた粉雪は、夜半過ぎには牡丹雪へと変わり、私が眺めているガラス窓の向こうで、ふわりふわりと舞い降りている。
「何…見てるの?」
私の背中越しの声は、シーツ1枚を纏(まと)った体をゆっくりと包み込んだ。
「ん…雪がね、牡丹雪に変わったなって…」
少し冷たくなったその肌に触れ、私の体はブルっと震えた。
「ごめん。冷たかった?」
「ううん、平気よ。それにしても…」
私はそう言いながら、肩から胸元に回されたその手に自分の手を重ねた。
背中に触れている肌よりも、重ねた手の方がずっと冷たくて、私は思わずその手を両手で包み込む。
「正臣の手は…本当に冷たいわね。今度、あったかい手袋、編んであげる…」
指先まで冷たくなった正臣の手を両手で摩(さす)った後、私は温かな唇をそっと手の甲に落とした。
「あったかいね…」
正臣の安心したような声を聴いて嬉しくなった私は、何度も正臣の冷たい手に唇を落としていく…
正臣の指先に唇が触れると、されるがままだった正臣の指先がゆっくりと動き出し、私の唇の形を確かめるようにな ぞりだした。
「正臣、くすぐったいわ…」
私がそう言葉にした瞬間、私の体はふわりと舞って正臣の方へと向けられた。
言葉を発する間も無く、私の唇はひんやりとした正臣の薄い唇に塞がれる。
愛おしむように唇を吸われ、舌を絡 ませてくる正臣に応えようと、私は正臣の首に両手を回した。
体に纏(まと)っていたシーツがするりと落ち、波紋のように床へと広がる。
生まれたままの私の体は、正臣にしっかりと抱きすくめられ、ベッドへと運ばれた。
「今日はやけに静かだね…」
シンシンと降り積もる牡丹雪の音まで聞こえてきそうなほど、静かな夜だった。
広い部屋に正臣の声が響き渡って、まるでこの世に二人だけしか存在しないような錯覚さえ覚えさせた。
「今夜はね、四条先生に頂いてた眠り薬で、皆…夢の中よ。この日の為に眠れないのをずーっと我慢してたんだから」
「どおりで静かな訳だ。…頑張ったね」
正臣はいたずらっぽく笑うと、私の唇に軽いキスを落とした。
啄(ついば)むようなキスは、やがて深いキスへと変わり、唇から漏 れる吐息が熱 を帯びてくる…
正臣の冷たかった指先も、私の肌の火 照りを吸い取るかのように、いつの間にか暖かくなっていた。
「今夜は眠らせないからね」
正臣の甘い声が私の耳元に囁かれると、その言葉が合図となり、正臣は私の体の至る所に痕(あと)を残していく。
正臣のつけていく痕(あと)は、私を悦 びに震わせ、そして、気が狂いそうなほど正臣への情 欲を剥 き出しにさせた。
静かな部屋に、二人の昂(たかぶ)った声が熱く乱 れた吐息と交 じりあって、背 徳の快 楽へと導かれていく。
「正臣…愛してる。愛し…てる」
「俺もだ…」
囁やきあう言葉は更に二人を昂 らせ、塵(ちり)一つ入り込む隙を与えないほどの二人だけの甘美な空間を作りあげていった…
夜明けが近づいてくる…
降り積もる牡丹雪が、まだ暗い街灯の消えた夜道にぼんやりと浮かび上がった。
愛 欲を貪 りあって火 照った体は、冷たい空気を浴びてもまだ、その名残を惜しむかのように着込んだ服の下で燻(くすぶ)り続けている。
「行こう…姉さん」
差し出された愛しい者の手を、私は迷うことなく握り締めると、生まれ育った大きな屋敷を振り返ることなく、雪道をしっかりと歩き始めた――
第二話 「弟」へ
「凍える手 / 辛島美登里」