経済音痴の私が言うのもなんですが、病院(医療法人)こそ全て株式会社にしてしまう方が最もシンプルでフェアだと思います。

年末年始と、いくつもの医療機関の方と海外進出の件などでご面会をさせていただく機会がありました。
そうすると面白いことに、それぞれの医療機関によって困っていることが、まさに「てんでんばらばら」なのです。

それを分析していくと、それぞれの医療法人の「種類」によって税金や行ってよい事業、禁止事項、出資に関する規定などが異なっていて、その違いから、例えば、同じ病院でも海外に資本を移す方法、移せる金額の規定などが大きく異なり、また、こういった医療法人の取り決めには、海外進出などを想定した規定がなく、政府や都道府県によって解釈がかなり異なっている背景も分かりました。

で、私が冒頭のように感じたのは、「社会医療法人」という医療法人の存在です。
こんな医療法人を認めた厚生労働省の見識を大いに疑いたくなります。

何しろ、法人税、地方税、固定資産税、不動産取得税など一切の税金がかからない上に、役員報酬の上限が明確に設けられていないのです。(不当に高額でない、と記載があるようですが、不当の定義はありません。)

社会医療法人の取得には、「医療法人のうち、救急医療、災害医療、へき地医療、周産期医療または小児救急医療のいずれか1つ以上を実施し、かつ、公益法人などと同様に公的な運営が確保されているもの」とされ、その取得は難しいようですが、社会医療法人の認定をする都道府県は、認定に関わる会合については原則非公開性であり、認定後の都道府県内の医療にどれほど貢献しているかの判定も実施していないのが現状です。

同じ医療市場の中で、30%の法人税を課されている法人と税金が全くかからない法人が存在するなんて、どう考えてもフェアではないでしょう。
そんなことなら医療法人が株式会社としてきちんと国庫に税金を納める方が、余程日本に貢献していると思いますし、きちんと税金を支払うことを考慮したうえでの効率的な運営を行うことができ、国際的にも競争力のある医療機関になりえると思います。

また、TPPでは、こういった医療法人の支払う税金などの問題にも言及してくるでしょう。
こういったあまりにもフェアではない制度は、追及や交渉の材料にされるのが必須と考えます。

最後に、私は「社会医療法人」の税制度があまりにもフェアではない、と申しましたが、「社会医療法人」を取得した医療機関がフェアではない、とは全く思っていません。
この制度を作った政府が悪いわけで、医療法人の立場からすれば、経営基盤の安定や税負担の軽減を考えれば取得するのが当然と思いますし、私もこちらの立場に立てば、かならず「社会医療法人」を取得する方針を取るでしょう。

また、この社会医療法人は、「都道府県の医療貢献の重責を担っている」関係上、他の医療法人よりも海外進出が難しい規定になっています。
しかし、その規定も都道府県ごとにかなり解釈が異なっており、厳格に取り決められているところと、拡大解釈を認めているところがあります。
こういった同じ法人格でありながら、都道府県によって解釈が異なることも、別の意味でフェアではないと思います。

こんなことを数日考えながら、いっそのこと、医療法人をすべて株式会社にしてしまった方が、ずっとフェアですっきりするのにな、国内でももっと海外に通用する医療機関ができるだろうな、と思った次第です。