プロ野球選手に対して「得意なスポーツは何ですか」と尋ねる、国営放送で大相撲中継を観て「みんなとても太っている」と感想を漏らす、どちらも愚の骨頂である。知性の欠片も無い。全く馬鹿げている。
「餃子李 」は絶大な人気を誇る繁盛店で、そのギョウザはとても大きくてうまい、周知の事実である。福岡人に遍く知れ渡っている常識と言っていいだろう。今更わざわざインターネットに公開する情報では無い。
「うわあ、でかいねー。マジでかい。うん、とてもでかいね。餡もみっちり詰まっとる。それから…でかいね」
男は只管“でかい”を連呼した。語彙が貧困だった。きっと男は馬鹿なのだろう。
羽根つきのギョウザは皮がパリッと焼き上がり、一口ではとても飲み込めない大きさだった。大量の肉汁が滴り落ちるかと身構えるも、ぴゅーっと汁が飛び出たり、飛び出らずやや乾燥気味だったり、割と個体差があった。餡も大きくすぐ腹一杯になる。ニンニク臭さ、油っこさも全くない食べ易い薄味だった。タレは酸味が強く、さっぱりしていた。
作り置きされていた小鉢が二品あった。コリコリのザーサイが美味い。
そんなサタデーランチ「焼餃子定食」は720円だった。中国で焼餃子はサオジャオヅと発音するらしい。
「シャイマセーキサマラトリザラーシャンハイブッコロス」
忙しなく立ち働く生粋の中国人らしき店員達の言葉に、時折物騒な単語が混じっている気がしたのは、単なる男の思い過ごし、空耳であって欲しかった。