サトラレ | エキセントリックギャラクシーハードボイルドロマンス         

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〜文学、お笑い、オートバイを愛する気高く孤独な三十路独身男の魂の軌跡〜 by久留米の爪切り

「ラーメンですか?」


初来店の僕に対して、女性店員氏が訊いた。どうしてわかったのだろう。僕が注文したいもの、食べたいものが、ラーメン、だってことに。知らないうちに僕の思考は世間にダダ漏れしているのだろうか?

久留米市螢川町5-7「南京千両 マリン店」、そこは細長い造りの店だった。店全体が茶色っぽく、薄暗い。天井の壁紙が剥がれているのはデザインの一環なのだろうか。しっとり落ち着いた雰囲気だ。黒ずんだ木のカウンターテーブルには、紺色と桜色のランチョンマットが交互に敷かれている。目の高さに煉瓦調のブロックが見え、その上に黄色い花と白い花、それぞれ花瓶に活けられていた。カウンターの端っこ、ワイングラスを片手にした初老男性客が、カウンター越しに、簡易な椅子に座った高齢そうな婦人とその娘さんらしき店員氏相手に、和気藹々と雑談に耽っていた。かなりくだけた物言いから、よっぽどの常連客であるのだろうと推察された。


「ラーメン」は500円だった。チャーシューとメンマがどちらも短冊状に細かく刻まれている。見た目が似ており噛むまでどっちか判別し難い。豚肉の脂身の柔らかさとメンマのコリコリ、二つの異なった食感が二択ルーレットだ。麺は割と太かった。よくスープを吸った麺をにゅるっと啜った。どこか懐かしい味がする。スープの口当たりはまろやかで、あっさりしている。昔ながらのシンプルなラーメンなのだろう。豚の臭みは殆ど無いけど、僕は何らかの薄らした雑味のようなものを感じてしまった。好き嫌いが別れるかも知れない。


「焼酎ですか?」


僕の隣りにドカッと腰を下ろした、生命力が旺盛そうな男性客に、女性店員氏が言った。ふむ、こちらも常連さんみたいだ。刺身を注文している。うまそうだ。完全に居酒屋として利用されている。


どうやら、一見さんは大体ラーメン注文しがち、というのが「南京千両 マリン店」に於ける鉄板あるあるネタ、ということだったようだ。まあ、それは完全に僕の事に他ならないのである。



南京千両  マリン店ラーメン / 西鉄久留米駅櫛原駅
夜総合点★★★☆☆ 3.5