「この辺で味噌ラーメンがウマいのはどこだ？」
今まで生きてきて、その質問が僕に向けられたのは、記憶によると通算で四回、だと思う。ちなみに訊いてきた人数は二人で、いずれも中年のおじさんであり、そのうちの一人は同じことを何回も繰り返し尋ねてくる、少々物覚えに難がある、はっきり言うと面倒くさい人であり、そっちのおじさんが時期をずらし、都合三回訊いてきた計算である。
久留米はやっぱ豚骨やけんですねー、僕は相手の心情を深く慮っている体で、憐憫の口調、同情の憐れみを醸し出すような声色を使って、その質問をなんとかはぐらかした。内心では、知らねーよ、カップ麺食っとけ、と毒づいていた。
しかし、僕は今日から答えを出せる。五回目の質問が最後になる筈だ。僕は声を大にして言うだろう。
うまい味噌ラーメンは、久留米市国分町1444「中華屋 ひすい亭」さんにあります！、と。
「特製味噌ラーメン」650円を注文した。
もやし、玉ねぎ、コーン、ミンチ肉が小高い山を形成していた。スープには胡麻が浮かんでいる。スープを一口飲むと、あっさり、さらっとした口当たりで、味噌のいい香りが心地良く鼻に抜ける。麺は細く、やや縮れている。、もやしと玉ねぎが顎の上下運動に合わせて、シャッシャッと小気味良くリズミカルな音を立てるのが、口の内側からダイレクトに耳へ届く。いかにも新鮮なものを食べている、そんな軽やかな食感だった。丼の底に沈んでいたコーンとミンチ肉を、残さずかきこんだ。ああ、おいしかった。ウマい味噌ラーメンはここにあった。
きっと他のラーメンもうまいに違いない。次回は辛い麺もあるようなので、是非そちらも挑戦したい。土曜日の夕方６時過ぎの訪問、つまりサタデーアーリーナイト、だったが、時間が経つにつれぞろぞろと客足が途切れず、なかなかの人気店であり繁盛している様子だ。木目を基調とした店内は、清潔感があって居心地よく、落ち着ける空間だった。
