華夷思想、冊封体制、事大主義。俺と先輩の。 | エキセントリックギャラクシーハードボイルドロマンス         

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〜文学、お笑い、オートバイを愛する気高く孤独な三十路独身男の魂の軌跡〜 by久留米の爪切り

如何にも安物で縫製が粗く、厚みに欠けた白いダウンジャケット。それを羽織った先輩は颯爽と寒空の下へ煙草を吸いに出て行った。「ディスカウントストア ダイレックス 」にて1500円で買ってきたダウンジャケットらしかった。先輩はゲレンデの貴公子を夢見ていたのだ。


「1500円っすか!安いっすねー。やっすう~」


外へ出ていく先輩の着膨れした白い大きな背中へ俺は声を掛けた。俺の小馬鹿にした物言いが癪に障ったようで、怒気を孕んだ強い口調で先輩は言い返した。


「お前のいつも着とるペラペラの黒ジャンパーよりマシたい!」


俺は、何も言えねえ。確かに俺がほぼ毎日通勤の際に愛用している黒いジャンパーは、歯磨きした際に飛び散った無数の白い飛沫が襟の辺りに付着しており、袖は煙草の焼け焦げで丸い穴も空いているし、貧相でみすぼらしい代物だ。ペラペラの素材感も、事実だ。


ただ、俺と先輩の服には、或る一つの共通点があった。


二枚とも「MADE IN CHINA」だったのだ。

嗚呼、遙かなる中華人民共和国、青年よ夢を抱け、俺は中華料理を食べる。

巡礼冊子に「料理人はすべて中国人なので、本格的な中華料理を味わいたい方は、ぜひお越しください!地元産の食材を多く取り入れており…」と紹介されている久留米市東町459-1、西鉄久留米駅より徒歩5分「上海夢飯店」さんを訪れた。

中国語のポップスが響き、テーブル席が多い店内は、ゆったり寛げる空間だ。広大な中国大陸を具現している。

担々麺680円を注文した。素早い提供だった。

白いスープが豚骨ラーメンを想起させるが、味は全く異なる。胡麻の風味が感じられるが、ざらざらした食感は極力抑えられているようだ。麺は細く縮れており柔らかい。もやしのさくさくした歯応えとの対比が見事なコンビネーションである。不揃いな黒胡椒の粒が爽やかな辛味を演出している。


うん、おいしかった。俺は満足した。


極寒の外から、居室に戻った俺は着ていた黒ジャンパーを脱ぐと、そのまま洗濯機へ放り込んだ。

上海夢飯店上海料理 / 西鉄久留米駅櫛原駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8