食生活のこと、北海道の暮らし、栄養士という職業、読んだ本の記録。生活問題を考えるオフィス(KS企画)の代表が日々考えていることを綴ります。


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2016-06-22 07:30:12

邱永漢の『口奢(おご)りて久し』

テーマ:栄養士・管理栄養士
 これまで配信してきたまぐまぐメール『栄養士は本を読め』をアメーバブログに再録しています。

 今回は、<2014年9月1日号>の邱永漢『口奢(おご)りて久し』です。


口奢りて久し/中央公論新社

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 邱永漢(きゅうえいかん)は直木賞作家でもあり、400冊以上の本を残していますが、「お金もうけの神様」あるいは「株の神様」として知られていました。作家というよりも、経済評論家、経営コンサルタント、実業家の方がなじみやすいと思う人が多いかもしれません。

 邱永漢の食に関する本のなかでは『食は広州に在り』があまりにも有名ですが、今回取り上げるのは、別の本です。『食は広州に在り』から半世紀ほど経て書かれた、著者が70代の頃に出版された食に関するエッセイ本です。2000年1月から2004年5月号までの『中央公論』に連載されていました。
 
 邱永漢の本を紹介するならば、当然『食は広州に在り』だと最初は考えていました。しかし、あらためて再読してみると難しい漢字が多い。中国読みのフリガナがたくさん打っている。

まぐまぐメールでは変換できない字が多用されている。こうした理由からなにか別の本はないかと探して見つけたのが本書です。

 著者ご自身も『食は広州に在り』は「はじめからおしまいまで、漢学の素養がいかにあるかを一生懸命見せびらかしていますもの」と糸井重里との対談(『お金をちゃんと考えることから逃げまわっていたぼくらへ』)で述べています。

「何をきかれても即答ができるほどの料理の知識と故事来歴の講釈に不自由はしな」いと自ら書いているだけあって、『食は広州に在り』では、中国食文化の奥深さを垣間見ることができます。

 一方、本書は中華料理だけでなく日本料理にもフレンチにも言及しています。さらに食べものそのものに関することもあれば、経済評論家としての視点から言及したものもあります。

ときには食通として、ときには世界中を飛び回る実業家としての見聞の広さをもとにして、またレストラン経営をアドバイスする立場からも書かれていて、食べものを題材としている社会批評的な食エッセイとなっています。

 食べ歩きのテレビ番組を引合いに出して、味のわかる人が少なくなったと嘆きます。なんでもおいしいという芸能人の味覚オンチぶりから、厳しい指摘もしています。以下にその一部を引用してみましょう。青字が引用部分。



味のプロのレベルが上がっているのに、味に対する一般大衆の要求は逆に下がっているから、味のわかる人とそうでない人の二極分化はいよいよ激しくなる。

それでも味のレベルの高いレストランが結構、ハヤるようになったのは何を食べてもおいしい人たちが大挙して押しかけるようになったからに違いない。タレントの食べ歩きはこうした光景にふさわしい取り合わせと言えないこともない。

 進化とは、違った角度から見れば退化のことだから、これは無理からぬことかもしれない。ちょうど自動車が普及すれば足が退化するように、自分で料理をする必要がなくなれば、舌も退化する。アメリカ人がその先端を切っているが、日本人もやがてそのあとを追うことになろう。

だが、そうなっても無形文化財に声援を送るのが文明国の美風良俗であることに変わりはないだろう。

(邱永漢『口奢りて久し』中央公論新社、2004年、21ページ)

 若い世代がインスタント・ラーメンとハンバーガーで育ち、家庭内で味の訓練を受けるチャンスが少なくなってしまうことを危惧しています。

 数多い料理方法もあらゆる食素材にも精通していた著者は、「値段は安くともおいしい料理のできる素材はいくらでもある」から「そのへんのところは頭を使ってコストダウンをはかること」を勧めています。

 「これから料理屋をうまく経営して行こうと考えている人にとっては研究に値する学問」ととらえています。

 グローバルな視野をもち国際事情にも明るい、しかもわかりやすく切れ味の良いエッセイ。スッキリする読後感が得られる一冊です。



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2016-06-08 07:31:27

窪美澄の『アニバーサリー』

テーマ:栄養士・管理栄養士
 これまでまぐまぐメールで配信してきた『栄養士は本を読め』をアメーバブログに再録しています。

 今回は<2014年8月1日号>の窪美澄『アニバーサリー』です。


アニバーサリー (新潮文庫)/新潮社

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 3.11をアニバーサリーとした小説。

 昭和10年生まれで妊婦対象のスイミング教室の講師をしている晶子(あきこ)とそのスイミング教室の生徒で真菜の二人が主人公です。

 晶子は栄養士の資格をもつ料理好きの専業主婦で、真菜は著名な料理研究家を母にもつという設定です。食べることと生きることが主題となっています。

 第一章は、晶子の人生。東京目白生まれの晶子は、疎開経験があり、飢えを実感した世代です。第二章は真菜の半生が語られます。

 だんだん著名になっていく料理研究家の母とはうまくいかず、真菜は家族愛に満たされないまま成長しました。父親のいない子どもを妊娠し、独りで産み育てようとします。

 そして第三章。東日本大震災の夜をきっかけにして二人の人生は交差していきます。大震災の5日後に出産した真菜は、まだ続いている地震の恐怖に加え放射能にも神経を遣う生活になっていきます。

 本書のキーワードはタッパーです。「ほら、食べなさい」と晶子が妊婦たちに手作りのおかずを入れたタッパーを差し出す場面から第一章はスタートします。

「缶詰の鮭を中骨ごと入れた卯の花炒り、仕上げにレモンを搾って鮮やかな色に仕上げた、さつまいもの甘煮、若い妊婦にも食べられるようにベーコンでこくを出したひじき煮」をタッパーに詰めて晶子はマタニティスイミングの教室に出かけます。スイミングのあとに「昼食会」を開き、妊婦たちに食べてもらうのです。

 多くの妊婦たちが晶子のおかずを喜んで食べてくれますが、ただ一人はっきりと拒絶したのが真菜でした。真菜はタッパーに入った食べものが食べられません。

 真菜が中学生のころ、母親が「作った日付と、雑誌名や番組名の書かれた小さなシールが貼られていた」タッパーが整然と冷蔵庫に入って、それらを皿に載せてレンジで温めるだけの食事をひとりで摂っていたのでした。

 タッパーに入れられたおかずは手作りだけど冷めている。母親不在の味気無さをそのタッパーに感じながら成長したのでした。

 出産後の真菜の身を案じて、晶子はおせっかいにも真菜の自宅を訪ねます。沐浴を手伝い、真菜のために食事の準備もします。

 以下は、タッパーに入ったおかずが食べられない真菜のために晶子が食事を作ってあげる場面です。青字が引用部分。


冷凍庫を開けると玄米ご飯が一食分ずつ冷凍されている。それをレンジで温め、青菜と鮭と豆乳を入れた雑炊を作った。副菜はアスパラガスの白あえと、千切りにんじんとツナのサラダ。瞬く間に作り終え、ダイニングテーブルに並べた。

「冷めないうちに、ほら、ね。絵莉菜ちゃん抱っこしてるからゆっくり食べて」
 れんげですくった雑炊に真菜はゆっくりと口をつける。その目が一瞬、ほんのりと光を帯びたような気がした。

「・・・・・・あったかいです」

「まだあるから・・・・・・。たくさん食べなさいね」

 お腹に何も入っていなかったのか、真菜は早いペースで雑炊を口に運ぶ。
 おいしい、とは決して言ってくれないけれど、タッパーに入れたおかずみたいに、食べたくない、とはっきり言われるよりはいい。


(窪美澄『アニバーサリー』新潮社、2012年、252ページ)

 タッパーに入ったおかずは手作りを象徴しています。そして同時に、作る人と食べる人との信頼関係を必要とする食べものでもあることを伝えています。

 作った人と食べる人の信頼関係がなければ、タッパーに入ったおかずを食べることはできません。おそろしくまずいかも知れない。毒が入っているかも知れない。腐っているかも知れない。タッパーに入れた食べもののやり取りは人間関係そのものをあらわしているのです。

 東日本大震災を契機にして世代の異なる女性たちがつながっていく応援小説と受け止めました。


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2016-06-01 07:30:20

「続・栄養士は本を読め」は、『眼で食べる日本人』

テーマ:栄養士・管理栄養士
 6月1日号のまぐまぐメールを配信しました。今回は、野瀬泰申の『眼で食べる日本人 食品サンプルはこうして生まれた』(旭屋出版)です。


眼で食べる日本人―食品サンプルはこうして生まれた/旭屋出版

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2016-05-22 07:30:41

中島京子の『平成大家族』

テーマ:栄養士・管理栄養士
 まぐまぐメールで紹介している栄養士に薦める本を順次アメーバブログでも再録していくことにしました。

<2014年7月1日号>は、中島京子の『平成大家族』です。


平成大家族 (集英社文庫)/集英社

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 少子高齢化に伴い家族はだんだん小さくなっていくのが平成の世ですが、この小説は逆に大家族になってしまう一家の物語。ただし、ひとつ屋根の下で大家族が仲良く暮らすほのぼのとした家族小説ではありません。

 緋田家は72歳の元歯科医と6歳年下の妻、92歳になる妻の母親、引きこもりになっている30歳の長男の4人家族でした。ところが、長女の夫が事業に失敗して長女一家3人が同じ敷地内で暮らすようになります。次女も離婚して戻ってきて、おまけに妊娠していることまでわかってしまいます。

 それぞれの家族がかかえている問題をそれぞれの家族の視点で語っていきます。最初と最後は緋田家の当主である龍太郎。しかし、当主とは名ばかりで龍太郎は家族の状況を何ひとつ把握しておらず、自分勝手に生きています。

 高齢者の介護問題、学校でのイジメ、ひきこもり、事業の失敗など平成の世に出現しているあらゆる問題が大家族の構成員それぞれにもおこってきます。読者の多くはどこかに思い当たることが感じられ共感することができるでしょう。それらの心理状態の描写が実に巧みなのです。

 たとえば、30歳のひきこもり長男の克郎がどんどん太っていく様子を分析するくだり。思わず笑ってしまうほどの筆運びです。一部を以下に引用してみましょう。引用部分は青字。



 太る、ということについて、克郎は考察してみたことがある。
 自分はなぜ太ったのか。
 第一義的には、それはふりかけのせいだった。

 佐賀の『いかふりかけ』が彼の人生を変えたのだ。父方の伯母が送ってくる、このふりかけのインパクトは、三十年の食遍歴の中で、国民的スナック『うまい棒』をすら凌駕(りょうが)した。『いかふりかけ』さえあれば、彼は他におかずがなくても、何杯でもおかわりをすることができた。

それは、とりもなおさず、電子ジャーの中にごはんが入ってさえいれば、好きな時間に好きなだけ、飯を腹に入れられるという事実を示していた。
 
 しかし、そういった物理的な要因ではなく、彼自身にもっとも切実に感じられたのは、傷つきやすい内面を脂肪の重なりで防御するという感覚だった。


(中島京子『平成大家族』集英社文庫、2010年、151~152ページ)


 精神の傷つきやすさをいかふりかけの「脂肪の重なりで防御するという感覚」という表現は意表を突き、妙に納得さえしてしまうのです。

 ひきこもりの克郎はインターネットトレードで生活費を稼ぎ、通販で欲しいものを購入するという生活を送っています。

 しかし、家族の誰もがどれくらい稼いでいるかは知りません。長女はひきこもり生活になってしまった弟の姿をひとり息子の将来と重ねて案じています。ひとり息子のさとるは、私立中学に入学しましたが親の破産によって都立に転校させられます。さとるはそこでいじめにあって独りで苦しみます。

 家族とはほとんど関わらない生活をしている克郎が、ひょんなことから祖母の元に週二回訪れるヘルパーと出会って仲良くなっていきます。思わぬ展開は、読者に安堵感と与えてくれます。

 克郎の将来に光が見えてきたように、新たな仕事として葡萄農園を考えている長女の夫とその家族にも希望があり、お笑い芸人の子どもを産むことになる次女にも幸せな人生を期待してしまいます。

 家族そろって食卓を囲むなごやかな場面は出てきません。小説の最終章に家族の晩餐が繰り広げられることになりますが、家族全員で夕食をとったことのない緋田家にとっては奇妙な雰囲気の宴会なのです。

 問題をいっぱい抱え、どうしようもなく不幸に思える平成大家族が、それぞれ希望を見いだして生きていこうとする姿は、さわやかな読後感につつまれ読者をも幸せにしてくれる一冊だと思います。



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2016-05-08 07:30:41

夏井睦の『炭水化物が人類を滅ぼす』

テーマ:栄養士・管理栄養士
 まぐまぐメールで紹介している栄養士に薦める本を順次アメーバブログでも再録していくことにしました。


<2014年6月1日号>は、夏井睦の『炭水化物が人類を滅ぼす』です。


炭水化物が人類を滅ぼす 糖質制限からみた生命の科学 (光文社新書)/光文社

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 タイトルにいかがわしさを感じて敬遠していたのですが、読んでみるといかがわしさは無く、むしろ学術的な印象をもってしまいました。大反響大増刷の話題の本です。

 以前に本まぐまぐメールでも紹介し、拙書『食の本棚 栄養満点おいしい人生を与えてくれる70冊』の一冊にも入れた江部康二さんの本と併せて薦めます。

『主食を抜けば糖尿病は良くなる!』が糖尿病治療食に特化して論じているのに対して、本書は、連綿と受け継がれてきた栄養学の基礎を根本から覆すような疑問を提示し、人類の進化を視野に入れ農耕の起源にまで及ぶというダイナミックさが特徴です。

 著者は湿潤療法の創始者で傷ややけど治療の専門家。著者自身が50歳を過ぎてごはんを減らす食事にしたところ体重が減り、高血圧も高脂血症も自然に治り、昼食後に居眠りをしなくなったという体験話から始まります。「やってみてわかった糖質制限の威力」(Ⅰ)です。

 続いて、「糖質制限の基礎知識」(Ⅱ)や「糖質制限にかかわるさまざまな問題」(Ⅲ)といった糖質制限そのものについて述べています。「糖質セイゲニスト、かく語りき」(Ⅳ)では、著者のインターネットサイトを読んで糖質制限を実践した、著者以外の人びとの感想や意見を載せています。ここまでが前半部分です。

 本書の特徴は、Ⅴ章以降の中盤から終盤へのダイナミックな展開です。

 中盤は、「糖質制限すると見えてくるもの」(Ⅴ)と「浮かび上がる「食物のカロリー数」をめぐる諸問題」(Ⅵ)。節のタイトルは挑戦的なものが多く、そこが本書の強烈な魅力にもなっていると思えます。
 
 たとえば、Ⅴ章の(1)は「糖質は栄養素なのか?」。中学校の家庭科教科書にも栄養学のテキストにも「糖質(炭水化物)、タンパク質、脂質が三大栄養素」と記載され、世の多くの人びとはそう教えられて生きてきました。それをいきなり疑問符つきで投げかけるのです。

 「食事バランスガイド」はそもそも科学ですらないと書かれると、食事バランスガイドを推進している大多数の栄養士たちはおやっと思うでしょう。さらに糖尿病治療の矛盾点を指摘していきます。

 Ⅵ章では「世にもあやしい「カロリー」という概念」を説明し、低栄養状態でも生きている動物のナゾや哺乳類の摂取エネルギーを例に挙げながら、「カロリー」という概念がいかにあやしいものかを説いていくのです。

 なぜ食物をカロリーで考えるようになったのか。17世紀後半にまでさかのぼり、アトウォーターやルブネルの考え方も説明しています。カロリーの算出法を説明したうえで、カロリー数への疑問を示します。

 箇条書きにした4点を以下に引用してみましょう。引用部分は青字。


◇体温は最高でも、せいぜい40℃であり、この温度では、脂肪も炭水化物も「燃焼」しない。つまり、人体内部で食物が「燃えて」いるわけがない。

◇そもそも、細胞内の代謝と大気中の燃焼はまったく別の現象である。

◇各栄養素ごとの物理的燃焼熱は、少数点1~2桁の精度で求められているのに、エネルギー換算係数を掛けて得られた熱量はどれも「キリのいい整数」であり、数学的に考えると極めて不自然で恣意的だ。あえていえばうさんくさい。

◇動物界を見渡すと、食物に含まれるカロリー数以上のエネルギーを食物から得ている動物が多数存在する。


(夏井睦『炭水化物が人類を滅ぼす』光文社新書、2013年、167ページ)


 お説ごもっとも、です。カロリー計算を主な仕事としてきた栄養士にとっては天地がひっくり返ってしまうような内容かもしれません。

 終盤は、「ブドウ糖から見えてくる生命体の進化と諸相」(Ⅶ)と「糖質から見た農耕の起源」(Ⅷ)です。生命の進化と農耕の起源について糖質を軸にして論じた章です。

 「うさんくさい」と言われて、シャッターを降ろし思考停止に陥ってしまうか。もう一度最初から一つひとつ考え直してみるか。どちらか選択を迫られているようにも思えます。

 知らないと逃げたり無視したりすることはもうできないでしょう。特に栄養士が丁寧に読んでみることで基礎的な能力が強固になり、ものの考え方が広がるのではないかと思いました。





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2016-05-01 07:30:58

「続・栄養士は本を読め」は『コンビニコーヒーは、なぜ高級ホテルより美味いのか』

テーマ:栄養士・管理栄養士
 5月1日号のまぐまぐメールを配信しました。今回は、川島良彰の『コンビニコーヒーは、なぜ高級ホテルより美味いのか』です。

コンビニコーヒーは、なぜ高級ホテルより美味いのか (ポプラ新書)/ポプラ社

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2016-04-22 07:30:19

赤瀬川原平の『ごちそう探検隊』

テーマ:栄養士・管理栄養士
 まぐまぐメールで紹介している栄養士に薦める本を順次アメーバブログでも再録していくことにしました。


<2014年5月1日号>は、赤瀬川原平の『ごちそう探検隊』です。

ごちそう探検隊 (ちくま文庫)/筑摩書房

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 私のように生真面目ひと筋に生きてきた人間にとってはショック療法ともなり得る本です。最初の「グルメの丸ぼし」でやられてしまいました。

 「私はグルメが好きである。とくにグルメの丸ぼしが好きだ。ちょっと固くて、噛むとゴリッとした歯ごたえがあり、独特の苦みがある。」と始まる書き出しを読めば、あれっグルメという食べものがあるのかな?と思ってしまったのです。

 さらに、友人の鰺北正男(あやしい名前です)という人物がペルー出身で、年に1回ほどペルーからグルメが送られて来ると続きます。友人の鰺北は、そのグルメを食べるときはきまって正装して、食べる前にはお祈りらしき言葉を発するとあれば、あまりに具体的で事実なのかと思ってしまったのでした。

 グルメがグルメザンパリオという川に棲む哺乳類とまで書いてあり、どれだけ珍しく貴重な魚なのだろうと思い込んでしまっても不思議ではありません。読者をだますことに良心がとがめたのか、後半は以下のような言い訳をしています。

引用は青字部分。


 グルメはたしかに高品位の料理であるが、いろいろ過剰な手をかけることなく、ずばり丸ごとが本筋だと思う。その思いがあまって「グルメ」の丸ぼしというのを物体として実在させたわけだが、もともとアンデスの高地の川に哺乳類が、棲息できるわけがないといわれた。しかしグルメの本質について考える熱情のあまりに、ついついそんなことまで書いてしまった。

これを読んで、アンデスの高地までグルメ釣りに出かける用意をしている人がいたとしたら、申し訳ないがすぐチケットを取り消してほしい。もちろん行くのは自由であるが。

 私としてはこういうことを書いてしまった以上、いずれはアンデスの高地の川へ行って、形だけでも釣糸を垂らしてみたいと思う。おそらく七十歳ぐらいには可能だと思う。そうしたら案外釣れたりして。


(赤瀬川原平『ごちそう探検隊』ちくま文庫、1994年、16~18ページ)


 後半の「クサヤ菌の奇蹟」でもグルメの丸ぼしについて触れていますから、それなりに気を遣ったのでしょう。

 人を食ったようなエッセイからはじまり、病院の点滴こそダイレクトグルメと妄想し、焼き肉、牡蠣鍋、機内食、回転寿司、クサヤ、山菜、プール帰りにタコ焼きを食べる話にまで及びます。巷間使われるいわゆるグルメのご馳走とは程遠い題材と内容になっています。

 その順番が優れています。最初の「グルメの丸ぼし」でガツンと読者にショックを与え、二番目にはグルメの正体を探るために東京築地に出かけます。そして最後は「遠くを見るお茶」。ヤカンで湯を沸かし、急須を出してお茶を入れます。いろんなものをたらふく食べたあとは、お茶で締めくくりたいということなのでしょう。

 そのお茶の入れ方、飲み方も仰々しいものではありません。不注意で割ってしまった蓋をそのまま使い、金網の茶こしを使って日本茶を入れます。どこか不完全で、くずした入れ方をしているのは、いかにも赤瀬川流といえます。

 最初から効果的な全体構成を練りに練ったうえで書いているのだと、最後まで通して読んでみて実感しました。だから、途中から読まずに順番に最後まで読んでいってほしい。

 本書は、『小説新潮』(1985年4月号~1986年12月号)に「グルメの丸ぼし」と題して連載されたもので、『グルメに飽きたら読む本』(新潮社、1989年)として刊行され、1994年に『ごちそう探検隊』とタイトルを変えて文庫本になりました。

 1980年代のグルメブームとは距離を置き、批判とも風刺ともとれる内容ながら、著者本人は声高にグルメ批判をしているわけではありません。その脱力感が魅力なのでした。赤瀬川ワールドにはまった人は、『明解ぱくぱく辞典』(中公文庫、1998年)も併せて薦めます。


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2016-04-08 07:30:28

遠藤彩見の『給食のおにいさん』

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 まぐまぐメールで紹介している栄養士に薦める本を順次アメーバブログでも再録していくことにしました。


 今回は、<2014年4月1日号>の遠藤彩見『給食のおにいさん』(幻冬舎文庫)です。


給食のおにいさん (幻冬舎文庫)/幻冬舎

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 東京都S区立若竹小学校の臨時給食調理員に採用された給食のおにいさんの物語です。

 28歳の佐々目宗(ささめ・そう)は調理師免許をもち、数々の料理コンクールでの受賞歴をもつ料理人。料理にはちょっとしたプライドをもつ主人公が、学校給食の現場に立って悪戦苦闘します。

 “給食のおばちゃん”ではなく“おにいさん”を主人公に設定しているだけでなく、大事な脇役も男性です。しかも若い。

 学校栄養職員は、「国立の栄養大学を出て三年」の毛利恵太。家庭科担当で給食委員会の顧問もやっている先生は深津孝介。男性です。学校給食を舞台にした青春小説で、読みやすいライトノベルに仕上がっています。

 保健室登校になっている六歳児、親からネグレクトされ給食だけで生きている子ども、元子役の肥満児になってしまった女の子、乳製品の食物アレルギーをもつ児童など次々と問題を抱えた子どもたちを登場させ、学校給食を通して見えてくる子どもの問題とリンクさせています。

 現実はそんなに甘くない、ありえない展開だよと特に小学校教員や学校給食関係の仕事に就いている人は感じるかも知れません。フィクションですが、なるほどと思ってしまったのは、おそらく緻密な取材をしたうえでの執筆と思われ、ところどころに給食調理の本質を突いた記述が見えて光っていると感じたからでした。
 
 たとえば、佐々目が仕事に就いた1日目の出来事。味見をした佐々目は味が薄いと感じて塩を加えようとしますが、毛利に止められます。何のために味見の皿があるのかと問う佐々目に対して「調味料がムラなく混ざっているか確認するためです」と毛利は答えるのです。

 給食調理の「一に安全、二に栄養、カロリー、塩分、予算。味は、その次」という鉄則を守らなければならない学校給食のむずかしさを垣間見せています。

 食べる楽しみを給食に取り入れようとくじびきハンバーグを作ったり、「ふれ合い給食」のイベントに関わったりと給食を題材にした小学校での取り組みの様子もよくわかります。
 
 かつての同僚で今は看板シェフとして活躍する枝衣子が、佐々目の学校に「シェフ給食」を作りにやってきます。佐々目が給食調理の大変さを枝衣子にわかってもらおうと話す場面の一部を以下に引用してみましょう。引用は青字部分。



 「それをみんな、俺もだけど、気をつけて頑張って、調理している。だけど怖さとか危険とかはいつもある。切り傷や火傷や、あと打ち身とか、小さなケガもしゅっちゅうだし」

 切れた、取れた、潰れた、飛んだ。給食調理で十年のキャリアを持つ妹尾からは、寒気のするような話もいろいろ聞かされている。

「妹尾さんたちがさ、よく言うんだ、メニューとか手順とかを『面倒くさい』って。最初はなんだこいつら、って思ったけど、働いてるうちに分かったんだ。『面倒くさい』の中には『危ない』『怖い』も入ってるんだって」

 振り返った枝衣子に向けて言った。

「異物混入や調理ミスなんかにも気をつけなきゃなんない。その上、限られた時間内に細かい作業を無理にたくさん詰め込めば、それだけ危険だって増える。頑張ればどうにかなるってだけの話じゃないんだよ」


(遠藤彩見『給食のおにいさん』幻冬舎文庫、2013年、264~265ページ)


 給食調理場は大量調理だから、大きな回転釜でお湯は沸騰しているし、ずばずば切れるスライサーはあるし、揚げ物の油だってすごい量なのです。普通の厨房ならケガですむようなことが、給食調理では『死霊のいけにえ』(というスプラッター映画)の世界になってしまう、その怖さと隣り合わせで仕事をしている厳しさを枝衣子にわかってもらおうとする場面では、それまでの佐々目とは異なり、彼の成長ぶりが伝わってきます。

 8品メニューの「シェフ給食」を考えていた枝衣子は佐々目の助言に従い、4品に減らしたのでした。

 料理人になる夢を捨てがたい佐々目ですが、1年間の臨時給食調理員を経験して次にどんな選択をするのかが小説の結末になっています。

 栄養士や小学校教員、食に関する仕事に就きたいと目指している若い方々に是非手に取ってほしい一冊です。



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2016-04-01 07:30:53

「続・栄養士は本を読め」は『シズコさん』

テーマ:栄養士・管理栄養士
 4月1日号のまぐまぐメールを配信しました。今回は、佐野洋子の『シズコさん』です。

シズコさん (新潮文庫)/新潮社

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2016-03-21 07:30:40

山田風太郎の『あと千回の晩飯』

テーマ:栄養士・管理栄養士
 まぐまぐメールで紹介している栄養士に薦める本を順次アメーバブログでも再録していくことにしました。


 今回は<2014年3月1日号>の山田風太郎『あと千回の晩飯』です。


 山田風太郎の作品は、「戦時中の日記」「推理小説」「忍法帖シリーズ」「室町時代もの」「明治開化もの」「生老病死をめぐるエッセィ」と六つの分野に大別されます(「解説にかえて」『人は死んだらオイマイよ。』)。今回紹介するのは、「生老病死をめぐるエッセィ」に含まれる一冊です。

 初出は、朝日新聞家庭欄の連載で、「いろいろな徴候から、晩飯を食うのもあと千回くらいなものだろうと思う。」という一文から始まります。

 連載を始めた当初、山田風太郎は72歳。「別にいまこれといった致命的な病気の宣告を受けたわけではない」のです。しかし、連載中に糖尿病であることがわかり、パーキンソン病の徴候も発見されました。治療のために入院し、朝日新聞の連載を中断してしまいます。

一度は退院するものの、幻覚症状により再入院。「白内障と書字困難症と前立腺肥大」という「新しい障害が戦列に加わってきた」山田風太郎。ご自身の老いに向かっていく姿をニヒリズムとブラックユーモアで綴っていきます。

 糖尿病の治療では「インシュリンを使わず、食餌療法でゆくという方針」でカロリー制限の食事が出されるのですが、三度三度全部をたいらげることができません。その理由を書いた文章を以下に引用します。引用は青字部分。


 食欲がないわけではない。

実に申しわけないことだが、出される食事の味に飽きてきたのである。

私はふだん一日二食だが、それも御飯だけ食べているわけではない。パンを食べたり、うどんやそばを食べたりして変化をつける。が、病院のキッチンがそんな斟酌(しんしゃく)はしない。病院食はほかにもいろいろあるのだ。それに糖尿病食の場合レパートリーが単純だから、どうしても同じ味になる。

 それから私の食事は一日二回なのだが、夕食の際コップ一杯のウィスキーを飲む。そのときの酒のサカナとして肉や魚や乳製品をとり、それが私の唯一の栄養源になっている。

 ところが病院ではむろん酒タバコは厳禁である。病院の昼、夕方のメニューは、朝のメニューに焼き魚の切り身、茶碗むしなどを加えた程度のものだが、それが酒がないものだから、のどを通らないのである。


 (山田風太郎『あと千回の晩飯』朝日文庫、2000年、63~64ページ)

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 「はからずもこのエッセイは、私の老人病のいきさつを長々と書く羽目になっ」ていきます。山田風太郎らしいのは、古今東西の有名人の死に方を千人ほど書いた話から、ご自分の体験記に加えて有名人の食事や死にざまについても語るのです。

 正岡子規の『仰臥(ぎょうが)漫録』の食事記録を取り上げ、「いのちがけで食っている」子規を絶賛します。「食物に常人ならぬ関心を持った子規はエライ」と褒めたたえるのです。その一方で、夏目漱石、森鴎外、勝海舟の「極端な粗食は誤っていると言わざるを得ない」と切り捨てます。

 タイトルの「あと千回の晩飯」に自縄自縛になって、あと千回くらいの晩飯の献立表を作ってみようとさえします。結局、晩飯予定表を作る計画は挫折するのですが、人間の死に方についてテーマは移っていきます。

 老いを現実のものとして受け止め、どう死んでいくのか。七十を超えても「その年齢においてみな初体験」なのだから、その初体験を楽しんでいるようにも感じられます。

 「死ぬ事自体、人間最大の滑稽事かもしれない」と最後に結ぶこのエッセイは、大作家が晩年に食べることを通して死と向き合った人生の本質をテーマにしています。極上のエッセイであることに間違いありません。



 これまでのまぐまぐメールを再編集して新書にまとめています。↓


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