来るクラウドコンピューティングの時代に | 「コジブロ」コナミ小島プロダクション公式ウェブログPowered by Ameba

来るクラウドコンピューティングの時代に

「PWがMGSの正当派続編なのはトレーラーを見てわかったよ」
「でもだとしたら、やはり次世代機で出すべきだ!何故PSPなんだ?!」

TGSから一週間経った今でも、国内外からこのような批判を多く頂きます。

勿論、僕も次世代機で最先端のテクノロジーを使って、新しい「MGSやオリジナルゲームを創りたい!」気持ちはあります。
しかし長い目で見れば、将来、ビデオゲームから「携帯」や「据え置き」と云った「ソフトの垣根」の無くなる日が必ず来ると思っています。

既にテレビの放送がそうであるように。音楽やインターネットがそうであるように。電話がそうであるように。
ビデオゲームも、他のエンターテインメントと同じ道を辿ると思います。
いずれは「携帯」でも「据え置き」でも、どちらでもかまわない、両者を跨ぐような、全方位的ビデオゲームが生まれてくるはずです。

しかしながら、「どこで楽しむか?」によって楽しみ方は変わります。その「場所の特性を最大限に活かした楽しみ方」は未来永劫なくならないと思います。
携帯ならではの携帯ゲームもありですし、大画面でしか遊べないアトラクション的なアーケード・ゲームもありです。

ここで云いたい事は、無くなるのは「ハードの垣根」ではなく、その中身である「ソフトの垣根」だという事です。


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時代が動いているのは確かです。
携帯電話の普及(標準化)により、いまやリビングの据え置き電話を使わない人も出てきました。
またiPodなどのデジタルプレイヤーの普及により、以前と違って、音質に拘る人は減りました。
ホテルに行けば、自分のiPodを挿すだけで音楽が聴けるオーディオ装置が用意されています。
自分がCDからデジタルファイルに落とした(いくらかは劣化している)音質をそのまま据え置き型として楽しむシステムです。
同時にMTVやTV番組、映画、ニュース映像など、あらゆる映像(いくらかは劣化している)を、YouTubeを代表とするwebサイト経由で見る人が増えています。

僕らの世代は「映画こそ、大きなスクリーンと音響設備の整った環境で観たい!」と願いました。
音楽にしても、少しでも「いい音」を求めてはコンポを買い、自宅では味わえないような「凄い音」を出せるライブハウスや喫茶店に押し掛けました。
いわば常に「凄い音」や「凄い画質」を追い求め、自宅では少しでも「いい音」や「いい画質」を体感できる環境を創り上げる、それが僕らの世代の美徳だったのです。

では今の時代どうでしょう?
音楽、映像、書籍、ゲーム、電話、TV、WEB……全てが持ち運べるようになりました。
その結果、21世紀の生活スタイルに大きな変化が起こっています。

現在の若者たちには画質も音質もそれほど関係ないように思えます。
ネット世代の彼らは画や音のクオリティではないところに目を見張り、耳を澄ましているのです。
つまり、ここから先は「画質や音質」の勝負ではなくなってきているのです。



「それじゃ、ヒデオは据え置き型プラットフォームを否定しているの?」とメディアの人によく突っ込まれます。
そんな気持ちは毛頭ありません。

携帯機が据え置き機を、その性能やIOで上回る事はないと思います。
しかし、出力される端末によって表現は多少変わりはすれど、同等の内容(ソフト)を同じように提供できるようにはなると思います。
画質や音質に拘らない世代がそれを望めば、インフラとしての「クラウドコンピューティング」が一般化し普及する前に、一足先にその時代がゲームに到来するかもしれません。

家からでも、会社からでも、外出先(ホテルやアーケードなど)からでも、移動中でも、同じゲームを場所を変えて、継続して遊べる、そんな夢の時代が必ず来ると信じます。
その世界では「携帯だから、据え置きだから」という基準でゲームを評価する時代ではなくなっていると思います。

そんな近い未来を見越しての実験、それが「PW」なのです。
最終的なMGSでの夢は、家でMGSをやり、携帯で続きを遊び、職場や外出先では仲間と続きを共有し、帰宅してまた続きをリビングで遊ぶという普遍のスタイル。


それは携帯用のMGS、据え置き用のMGS、アーケード用のMGSといったバラバラのMGSの集合体ではありません。
自分のライフスタイルに融け込み、持ち運びができ、その「場」にあった続きを楽しめるシステム、たったひとつのMGSなのです。

そんな途方もない夢の第一歩として「PW」を制作しています。