ヤマハ、よりリアルになった「VOCALOID3」発表 制作ソフト一新、API公開も | とある私立生徒の情報コピペブログ

ヤマハ、よりリアルになった「VOCALOID3」発表 制作ソフト一新、API公開も

ヤマハの推測によると、ボカロ曲制作者は1万人、同人などの2次創作は8000人、コアなリスナーは10万人、一般リスナーは500万人 写真:ITmedia
ヤマハの推測によると、ボカロ曲制作者は1万人、同人などの2次創作は8000人、コアなリスナーは10万人、一般リスナーは500万人 写真:ITmedia

 ヤマハは6月8日、歌声合成ソフトの新バージョン「VOCALOID3」を開発したと発表した。「初音ミク」などに採用されてブームになったVOCALOIDの基盤ソフトの最新版となり、よりリアルな歌声を合成できるようになるという。9月末にヤマハが専用音楽制作ソフトと歌声ライブラリを発売するほか、ライセンスを受けた他社も歌声ライブラリの開発を進めているという。




 初代VOCALOIDは2003年に登場。歌詞とメロディーを入力するだけで歌声を合成するソフトで、2007年リリースの「VOCALOID2」を使った「初音ミク」などがブームに。VOCALOID専門のクリエイターや熱烈なリスナーが多数現れ、音楽以外のジャンルにも飛び火するなど、ネット内外で大きな現象になった。

 約4年ぶりのメジャーバージョンアップとなるVOCALOID3は、合成アルゴリズムを改良するとともに合成音の品質も向上。「さらにリアルな歌声」を合成できるようになったという。

 さまざまな声・発音などを記録しておく歌声ライブラリは、これまでより大きな単位でサンプルを持つことができるようにした。例えば「子音+母音+母音」といった単位でサンプルできるようになっており、より滑らかな合成音が可能になるという。

 また、従来は苦手だった早口の合成音に改良を加え、より自然な発音で合成できるようになったという。VOCALOID2では音程が変化すると、サンプルが切り替わるところで突然音色が変化してしまう場合があったが、VOCALOID3のエンジンでは音色の変化がスムーズになるよう改良しているという。

●歌声ライブラリと「VOCALOID3 Editor」は別売りに

 新たに楽曲制作ソフト(VOCALOID Editor)と歌声ライブラリを分離し、別々に販売する。従来は両方をバンドルして販売していたが、今後は歌声ライブラリだけを追加していくことが可能になっている。

 単体販売される楽曲制作ソフト「VOCALOID3 Editor」はユーザーインタフェースを一新し、従来のピアノロール画面に加え、DAW(Digital Audio Workstation)のようなトラックビュー画面も導入。最大16トラックの編集が可能で、各トラックには複数のパートを配置することもできる。

 新機能として、伴奏(オーディオトラック)再生機能を搭載。ステレオ・モノラルのオーディオデータが各1トラックずつ再生でき、合成した歌声とオーディオトラックを同時に聴きながら楽曲を制作可能になっている。「VOCALOIDソフトを購入したものの、何を入力していいのか分からず『カエルの歌』を入れただけで終わってしまった方もいると聞いている。カラオケトラックを活用するなどして新たな楽しみ方が増えるのでは」(ヤマハの剣持秀紀さん)

 VST Hostにも対応し、合成した歌声にリバーブなどのエフェクトを付加するなど、単体で一通りの楽曲制作が可能になっているという。

 新たに対応したのが「VOCALOID Job Plugin」。プラグインを追加することで歌声トラックの編集機能を拡張できるもので、音符やコントロールパラメータなどの楽曲内部のデータに外部モジュールからアクセスして変更することもできるという。産業総合技術研究所が開発した「VocaListner」をヤマハがプラグインとして開発し、販売する予定だ。

 VOCALOID2の歌声ライブラリは、付属するインポートツールを使えばVOCALOID3 Editorから利用できるようになる。ただ、インポートできるのは一部のライブラリで、有料の場合もあるとしている。

 VOCALOID3 Editorの対応OSはWindows XP/Vista/7。Mac OSへの対応は「Macは重視している。インタフェースなどをVOCALOID3に合わせた形にし、なるべく早い時期に」(剣持さん)。

 VOCALOID3 Editorは「VOCALOID Store」で販売する予定。価格は未定だが、1万円前後を想定している。

 歌声ライブラリには機能限定版の「Tiny VOCALOID3 Editor」が付属。編集可能トラックが1トラックのみ、最大17小節などの制限がある。

 VOCALOID3 Editorと同時に、ヤマハは自社ブランドのVOCALOIDソフト「VY1」(女声)、「VY2」(男声)をVOCALOID3向けにリファインした歌声ライブラリを発売する予定だ。

●さまざまなソフト開発が可能に

 合成エンジンのAPI公開も始める。契約した個人・法人に対して仕様を公開し、新しい歌声合成ソフトの開発も可能になる。VOCALOID Job Pluginの仕様も公開し、独自プラグインを開発することも可能に。開発したソフトはVOCALOID Storeで配布できるようにする。

 合成エンジン自体のライセンス提供も行い、歌声合成機能を使ったPCゲームソフトなども開発できる。

 多言語対応が図られ、従来の日本語、英語に加え、新たに中国語、韓国語、スペイン語に対応。各国語のライブラリを用意すれば歌声合成が可能になる。今後対応言語は増やしていく。

 秋には韓国のSBSグループが韓国語のVOCALOIDソフトを発売する予定だ。

●VOCALOID文化醸成にも積極的に

 これまでヤマハはVOCALOID技術とソフトの開発というモノ作り中心だったが、今後はVOCALOIDカルチャーの支援・強化も積極的に展開していく。

 4月にはVOCALOID Storeを運営するビープラッツに委託し、VOCALOIDクリエイター向けに楽曲の著作権管理を請け負う企業「自主制作コンテンツ出版管理機構」を設立し、このほど活動を始めた。VOCALOID開発者の剣持さんもアドバイザーとして活動に携わる。レーベル機能も持ち、CD制作や販売にも関わるほか、権利関係の知識の普及や、クリエイター同士の情報交換も支援していく。