人民銀が利上げに踏み切ったのはなぜか? | C株で稼ぐ

人民銀が利上げに踏み切ったのはなぜか?

 「中国網日本語版(チャイナネット)」

2010年10月21日 :より一部、抜粋+編集

人民銀が3年ぶりに利上げに踏み切ったのはなぜか

 銀行6行に対し差別的な預金準備率を実施することを発表したのに続き、中国人民銀行は19日、預金・貸付準備金率を0.25ポイント引き上げるという予想外の発表をした。専門家は、これはインフレ圧力を抑制し、「マイナス金利」状態を逆転させるのがねらいであると同時に、資産価格バブルの抑制に有利となり、中国経済の均衡かつ健全な発展を推し進めると分析する。

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 突然の利上げ発表 インフレを抑制

 利上げはあまりにも突然訪れたが、ほぼすべての専門家は、中国経済はその時を迎え、インフレ観測を抑制し、「マイナス金利」状態を逆転させるのに必要な措置だとしている。

 中国商務部が19日に発表したデータによると、国慶節の連休後の1週間、全国36の大中都市で穀物や食用油の小売価格が小幅上昇した。庶民の間で緑豆やニンニク、しょうがの価格高騰を揶揄する「豆処ン玩」「蒜処ン狠」「姜処ン軍」という言葉がよく聞かれるようになったほか、砂糖の価格高騰を表す「糖高宗」という流行語が新たに登場した。国内外資本に押し上げられ、中国の砂糖の価格は過去最高値に達し、上海などの都市では1トン6000元を超えている。1年以上前の価格は1トン2700元だった。

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 建設銀行上級アナリストの趙慶明氏は、利上げにより預金が増加し、企業や個人の貸付ニーズが減少し、通貨需要の低下やインフレ予期の抑制に有利にはたらくと見ている。これまで人民銀が利上げを急がなかったのは、物価上昇率が年間目標の3%に抑制できると判断したからだ。ところが、近ごろになり野菜や穀物、大口商品など新たな価格上昇要因が集中したことで物価上昇にさらに圧力がかかったため、インフレを懸念し、人民銀は利上げに踏み切った。

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 「利上げはマイナス金利状態を逆転させるのにプラスとなり、国民の福利への損害を避け、低金利下における富の配分の『マタイ効果』を正す。これは中国共産党第17期中央委員会第5回全体会議の精神とも一致している」と、清華大学ブルッキングズセンターの肖耿主任は話す。

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資産価格バブルを抑制

 その一方で、近ごろの資本市場のすさまじい動きを見れば、利上げが通貨当局の資産バブルに対する懸念を表していることがわかるだろう。

 米国政府が量的緩和策を引き続き採ることが予測される中、米国の為替レートは下がり続け、国慶節以降、世界の金や非鉄金属などの大口商品の価格は高騰している。また、中国株式市場も続伸し、国慶節の連休後、上海・深セン株式市場の上げ幅はともに13%を超えた。

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 中欧国際工商学院・金融研究センターの張春氏は、「マイナス金利状態の中、国民は通貨価値を保証したり、高めるために不動産や株式などの資本市場に投資する傾向にあり、これにより資産バブルが引き起こる。日本は円高が急速に進む中で経済活力を維持するため、緩和的な通貨政策と財政政策を継続し、最終的に深刻な資産バブルと巨額の財政赤字につながった。中国は日本の二の舞を演じることは望んでいない」と述べた。

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 明確な構造調整のシグナル

 「利上げは中央によるさらに明確な構造調整のシグナルでもあり、中国が発展モデルの転換を加速化する決心の表れだ。中国は経済発展の速度でなく、質に一層重視するようになる」と、張春氏は話す。

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 一連の経済データにより、各界の中国経済の後退に対する懸念は徐々になくなり、好転の動きがより明確となっている。8月以降、製造業PMI(購買担当者指数)や発電量などの指標は前月比で回復し、工業伸び率は3カ月続けて13?14%を維持するなど、中国の経済運営が回復に向かう積極的なシグナルが現れた。9月の中国製造業PMIは53.8%で前月比2.1ポイント上昇し、中国経済が減速から安定した成長に転換したことが示された。

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 また、9月の大規模な貸付額は、流動性の抑制が必要であることを意味する。人民銀のデータによると、9月の人民元の新規貸付額は5955億元で前年同期比788億元増、前月比500億元増だった。この数字は、計画されていた貸付投下のリズムと規模を大きく上回る。

 肖耿氏は、「利上げは、中国政府が経済構造を合理化し、所得配分、リスク抑制、公平・効率などの面からバランスを取ろうとしている努力の表れだ」と述べている。