『グリーン・ノウの煙突』 | 手当たり次第の本棚

『グリーン・ノウの煙突』

えんとつのある家って、小さい頃から、憧れだったんだよな。
どうしてかって、それはとっても単純な話だ。
「えんとつがないと、サンタ・クロースが入ってこられない!」
これです、これ( ‥)/

もっとも、日本家屋って、昔も今も、ヨーロッパの家みたいなえんとつは、ないよね。
だから、えんとつのある家が、あこがれ。
もし、グリーン・ノウみたいな屋敷に住めたら、そしてもちろんそれが子供の頃だったら、私も絶対、えんとつを探検したと思う!
絶対に面白そうだもの。

さて、ここでは、1作目と同じく、トーリー少年が主人公。
もはやすっかり、グリーン・ノウは、トーリーの家という感じがして、いいなあ、と思う。
もっとも、持ち主のオールドノウ夫人は、ちょっと手元が不如意なので、もしかしたら、暖炉の上の大きな肖像画を手放してしまうかもしれない、とのこと……!
もしそうなったら、トーリーは、せっかく友達になれた、過去のオールドノウ家の少年少女たちと再会できなくなっちゃうじゃないか?

そこで、ある時うしなわれてしまった、宝石のゆくえを探すという、ちょっとしたミステリ風の冒険を、トーリーがする事になるのだけど、トービーやリネットに会えないかわり、トーリーは別の時代の子供たちと出会う事になるのだな。
しかも、それは、目の見えない女の子なのだ!

19世紀の目の見えない少女の生活を、本人に、直接出会うことと、オールドノウ夫人の昔話で、トーリーは知っていく事になるんだけど、オールドノウ夫人がお話をする時の様子が、実にいいって思うのだ。

お話は、もともと、「織る」と表現されるよね。
運命の女神が、しばしば、糸を紡いだり織ったりするように、人の運命や、なしとげた事も、織物の上にあらわされるという魔法がある。
で、オールドノウ夫人の場合、古い時代の服をほどいた端布(はぎれ)を使って、いろいろなキルトを作っているわけだな。パッチワークっていうやつだよね。
そのパッチワークに使ういろいろな端布が、誰のものだったのかをきっかけにして、グリーン・ノウにちなむ、昔話をするわけだ。
まさしく、お話の方も、パッチワークなのだ!
お話をする事自体は、魔法でもなんでもないのだけれども、お話=過去の人々;断片=キルトの端布 という意味深な関係が、素晴らしい。

で、えんとつに話を戻す!
タイトルになっているくらいだから、このえんとつが、大活躍をするのだ。
いや、正確には、「トーリーの時」と、「スーザンとジェイコブの時」、両方の時代で、冒険の舞台になるわけだ。ラストのあたりで、(スーザンの時代の)グリーン・ノウが、火事に遭うところが出てくる。
その時のえんとつのシーンが、なかなか、すごい。
それがあるので、ラスト、トーリーが宝物を見つけ出すところが、よけいに素晴らしく感じられるんだなあ。


著者: L.M.ボストン, 亀井 俊介
タイトル: グリーン・ノウの煙突