来週からの本入部に向けて絶対にクリアしておかなければ行けない事柄があったのです。
それは、事実上バスケ部が二つに分裂状態であったということです。
わたしがキャプテンに指名された遡ること約半年前…、
実はキャプテン候補はわたし以外にもう一人いたのです。
同じ学年(当時2年生)でポイントガードの板野まどか。
当時、次期キャプテンは冷静沈着で司令塔的立場の彼女が指名されるものと
大半の人が思っていました。
事実、わたし自身もそう思っていたのだから、誰もが疑う余地がなかったと言えます。
しかし、フタを開けてみれば指名されたのはこのわたし…。
この日を境に分裂状態が始まっていたのでした。
今では、実質わたしのグループと板野グループに別れて練習している状態で、
これでは新入生たちに申し訳ないと思ったのです。
だからわたしは彼女と話し合うことにしました。
午前の練習が終わり、静まりかえった体育館…
そこにはわたしと板野の二人。
しばらくお互いに沈黙が続く…。
その沈黙を打ち破るかのように先に話し掛けたのはわたしである。
「あの、さあ…まどか…」
「もっと早く話しておかないといけなかったことなんだけど…」
「今の状態、どう…思ってる?」
彼女はこの問いに深いため息をつき、一拍おいて答えた。
「…はあ~」
「……」
「良いわけないでしょ。」
「このままだと仮入部の娘たちもすぐに辞めちゃうかもね…」
「わたしも何とかしないといけないと思うよ。」
彼女の答えにわたしは少し安心した。
少し緊張が解きほぐれたわたしは彼女に
「そ、そうだよね~」
「わたしもどうしたらいいかなあって思ってたんだよね~」
「どうしよう…」
と言うと、彼女はすかさず
「あなたがキャプテン降りれば済むことよ!」
とさらっと言ってのけた。
わたしはその言葉に”コイツは!”と思ったが、
すぐに彼女は
「冗談よ!」と続けた。
コイツが言うと冗談には聞こえん!
彼女はその後こう続けた。
「あなたがキャプテンだと言うことをどうこう言うつもりはないわ。」
「あなたが決めたことじゃないし、第一あなたを慕ってる部員たちだっている。」
「最初の頃は監督は何考えてんだろうと思ったこともあったけど…」
「よく考えれば、キャプテンて別に上手い人がやるって決まってる訳じゃないし…」
「どっちかって言うと2、3番目に上手い人がやってるところが多いかなあって。」
「だから、わたしね。」
「あなたのこと、キャプテンて認めてあげてもいいかなあって最近は思ってるの。」
わたしはこの上から目線の言葉にブチと来ながらも高ぶる感情を抑えて彼女に言った。
「あ、ありがとう。本当にそうなら嬉しいなあ(^_^;)」
わたしがガマンすることで丸く納まるならと思い、
これなら何とかなりそうだと思った次の瞬間、彼女の口から思わぬ言葉が出たのであった。