想也の整った顔がしかめっ面へと変わった。

「俺の顔見た瞬間その表情って酷いなあ。君、どんだけ俺の事嫌いなの。」

「…なんでここにいるんですか。私が貴方をどれだけ嫌っているか二時間は余裕で語れますね。」

「うわ酷っ」

その原因は緩い笑みを浮かべている目の前の男…彩雲だ。

どうやってここを知ったかは知らないが今奏は照陽と共に外出中。

「…奏はいませんよ。なんの用事ですか。用がないならさっさと帰ってください。」

帰れ、と言わんばかりにシッシッと手を振った想也に若干顔をひきつらせ、ため息を吐いた彩雲だったが一瞬目を伏せ、ゆっくりと開いた。

「…?」

「テレビ。」

「は?」

「テレビ、点けてみなよ。」

「何を言っ…「早く。」」

さきほどまでとは違う雰囲気を纏う彩雲に怪訝そうな顔をする想也だが、彼から発しられた鋭い言葉に僅かに不機嫌そうにしながらも大人しく従う。

「癒羅。」

部屋の中にいた癒羅は声をかけるだけで想也の意図が分かったらしく、こくりと頷きテレビのチャンネルを手に取る。

渋々画面を見つめている想也の表情が明らかに変わった。

テレビから流れているのは、大型デパートから原因不明の爆発が起こったとの情報。

普段の想也だったなら特に表情も変えなかっただろう。

しかし今、あそこには。

「っ!」

「行かせないよ。」

玄関を飛び出そうとした想也の行く手を阻む。

「…っ退いてください…!あそこには…!」

「知ってる。お譲ちゃんもハスキー君もあの爆発に巻き込まれた。でも、君は行かせない。」

「…っ!退け…ッ!!」

「……。」

想也が唸るように告げても彩雲は動かない。

「仮に、俺がここを退いたとして、君になにが出来る?あそこは今野次馬やら警察やらで中には入れないよ。…どれだけ想っていても、今は君にお譲ちゃんは助けられない。」

気持ちだけじゃ、命は助けられないんだよ。

淡々と、残酷に事実だけを述べる彩雲を想也が睨みつける。

それを見て、薄く笑みを浮かべ、彩雲は想也の前から退く。

「それを聞いて、まだ行くっていうならもう止めない。どーぞご自由に?」

「っ」

「あーあー…愛されてるねえ。お譲ちゃん。」

道を譲った瞬間駆け出した想也と、想也を追うように駆けていった癒羅を見て、彩雲が呟く。

彼等があそこに駆けつけたところで、彼等には何も出来ない。

彼女を今、救うことが出来るのは。

「…最後のチャンスだよ。」

ハスキー君。

彩雲の声は誰にも届く事はなく、消えていった。







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~作者から~

想也達sideでした。

こういうとき想也は何も出来ない自分の無力さに腹が立ってるんだろうなあ。と思いながら書きました。

そして久しぶりの癒羅りんwwwセリフないけどねwwwごめんねwwwwww

引っ張ってすみませんww次回は奏達saideです。

…今回本編の文字数少ないなあ。