国松登 「晩夏」油絵
当店には生意気にも非売品が1点あります。
お客様より「なぜ非売品なのか(笑)」と
質問があったのでここに書きたいと思います。
この作品の作者は北海道を代表する画家・国松登画伯の作品です。
同業者間で行う絵画交換会にて良い作品だと思い入手しました。
国松画伯の人気シリーズ「眼のない魚」や「氷人」のちょうど中間にあたる時期に制作したものと考えられ、珍しい作品だと思い落札しました。また「左下部分に描かれているのは、国松さんの気に入っていた円山のお地蔵さんだ」という出品者の言葉にも強くひかれました。
入手してから間もなくして、私はイベント会場にてこの作品を販売しておりました。
するとそこに北海道のある有名なコレクターが偶然通りかかりました。
たまたまイベント会場の近所に住んでおり、食料品を買いに来たらしいのです。
そのコレクターはどうして有名かといいますと、
入手困難な北海道・岩内の画家・木田金次郎の油彩を
を約30点も集めた方だからです。
木田金次郎は有島武郎の「生れ出づる悩み」のモデルの画家として世に知られるようになりました。当時から人気実力を兼ね備えておりましたが、1954年に起こった「岩内大火」にて殆どの作品が焼失してしまうという事件が起こりました。その後精力的に作品を制作しましたが、その殆どが美術館に収蔵されており、一般市場に出る作品はとても希少性が高く入手困難といわれるようになりました。(補足ですが近年ではNHK「日曜美術館」で紹介されたのを機に全国的に人気に火が付き高額な金額でオークションで取引されています。)
そういうこともあり、以前北海道の某大手画廊の社長がそのお客様に「○○さん、こんなに手広く商売やってても木田金次郎の作品は3年に1点しか入手できないのだから、どんなに頑張ったって10点も集められませんよ」とお客さんに言ったことがありました。
するとそのコレクターはその社長の言葉に火が付き、な・な・なんと約10年ぐらいで30点も集めてしまったのです。
そのお客様がイベント会場にて私に「なんだ。その国松さんの作品はあんたが買ったのかい!その作品は売らない方がいいよ!」と真面目な顔でおっしゃいました。
突然だったので私も「?」という顔をしてると、
「その作品は元々私のコレクションで、左下にいるお地蔵さんのお蔭で木田の作品が30点集まったのだから」とおっしゃいました。
その話を聞き私は慌ててその場で非売品にしたのです。
思い返してみると、最近順調に作品が集まっていたのは「この作品のお蔭なのか」と。
自己満足かもしれませんが、今のところは引き続き順調に良い作品が入ってくるので大事にしております。
しかし商売の世界も甘くありませんので、もし売りに出ていたら、そおっと察してくださいね(笑)