長らく研摩を続けてきたお刀が、何とかカタチになりました!


伝統工芸職人って・・・

この度のお刀は、研ぎ上がりの状態で当工房へ持ち込まれましたが、どうも不自然な形状をしていました。おそらく、下地研ぎの段階でグラインダーが用いられたと見えて、鎬筋がグニャグニャに曲がったまま仕上げ研ぎを施されていたのです。しかも、部分的に深く肉がえぐられており、数箇所芯金が露出しています。


このような加工を施してしまうと、刀身のグニャグニャを取り除くためには、最も肉が落ちた部分に合わせて全体の余分な肉をそぎ落とさなければなりません。

それではお刀がペラペラに減ってしまいますし、芯金が全面にわたって飛び出してしまう危険性もあります。


そこで、必要最低限の整形と目の錯覚を利用した肉置きを工夫します。


当初、このような加工を施したお刀ですので、あまり気にも留めていなかったのですが、研ぎが進むにつれてすごい古名刀であることがわかってきました。

酷い職人に減らされてしまったことが悔やまれます。一度失った鉄は二度とくっつけることができないのです。


このお刀は、刃中の働きたるや一日見ていても飽きません。

時々、初心の愛刀家の方から、刃中の働きの見方について質問をいただくのですが、おそらく後刃を刃紋と思って鑑賞されていらっしゃるのだと思います。


ちなみに、この刀の刃中は以下の通りです。


伝統工芸職人って・・・

これが本来の刃紋なのですが、研ぎ方によってはこの上から化粧を施して日本刀の美しさを強調させます。

このお刀の場合は、化粧をしていませんので、本来の刃紋がよく見えます。