毎年注目されるAKB48の総選挙。

この中継番組を毎年楽しみに見ている。

この番組がなぜ面白いのか、それは「言葉の力」が

たくさん鑑賞できるからだ。

 

そんな中、ひと月以上前の今年の総選挙で、

一番強く心に残ったのは、5位になったNGT48の

荻野由佳さんのスピーチだった。

 

荻野さんは、数か月前まではほとんど知られていない

いわば無名のアイドルだった。

それがいきなり5位に躍進した。快挙だった。

 

感激のあまり、言葉がしどろもどろになってしまうかもしれない。

と多くの人が危惧したと思う。

ところが、そのスピーチは涙声ではあったが極めて秀逸だった。

 

まず、話を自分がAKBに入る前のところから導入し。

速報一位、最終結果五位になったことを驚き、喜び、

ファンに感謝している。

そのあと、素晴らしい一言が出る。

 

「わたしは落ちこぼれでした。夢は絶対に叶わない。

努力は必ず報われる? そんなの嘘に決まってるじゃん

そう思っていました。」

 

この一言は、AKBを知る人ならぐさりと来る。

なぜなら、このセリフがあの「たかみな前総監督」の

名言だということは誰でも知っているからだ。

それを「嘘に決まってるじゃん」と、大先輩の名言を切り捨てたことがその後のスピーチで生きてくる。

 

このまま、たかみな前総監督に触れずにスピーチが終われば、少々しこりが残ったかもしれない展開だったが、荻野さんはうまく組み立てる。

 

「高橋みなみさんに、努力は必ず報われますかとききました。」と、カリスマと言われる前総監督を話に登場させる。「次はおぎゆか(荻野由佳)が努力は必ず報われる(こと)を証明してねと言われました」

 

そしてこのスピーチのフィニッシュブローを荻野由佳さんは放つ。

「私は努力は必ず報われるを証明できていますか。」

観衆に向かって問いかけたのだ。

万雷の拍手は、自然と心底から湧き上がるものだった。

 

まさに、言葉の力の真骨頂を見た気がした。

 

これほどのスピーチ。おそらく、荻野さんは情熱と緻密さが

同居している人に違いない。

今後が楽しみな異色アイドルだ。

見慣れた AKBのメンバーの中に、おぎゆかがいることが

いまとても新鮮だ。

本当の世代交代をしているのか。AKB。