ドイツ世論調査・脱原発についてなど | Hidy der Grosseのブログ

ドイツ世論調査・脱原発についてなど

ドイツ世論調査・脱原発についてなど




ドイツの公共放送 ARD (ドイツ公共放送連盟)が調査機関 Infratest Dimap に委託して行っている月例の世論調査 DeutschlandTrend (ドイツの傾向)の結果を紹介します。

http://www.tagesschau.de/multimedia/bilder/crbilderstrecke244.html


ARD を「ドイツ国営第一放送」と訳しているサイト等がごくまれに存在するようですが、ARD は国営 staatlich 放送局ではなく、公共 öffentlich-rechtlich 放送局です。


ARD Arbeitsgemeinschaft der öffentlich-rechtlichen Rundfunkanstalten der Bundesrepublik Deutschland の略です。日本では一般的には上記の「ドイツ公共放送連盟」と訳されているようです。この訳で大きな問題はないと思いますが、より正確に訳すと「ドイツ連邦共和国の公共放送局の共同事業体」という感じになります。

(Arbeitsgemeinschaft をいつでも「共同事業体」と訳せるかというと、そういうわけではなく、むしろ、「ワーキンググループ」と訳した方がしっくりとする場合が多いと思います。)


BR バイエルン放送・MDR 中部ドイツ放送・rbb ベルリン‐ブランデンブルク放送等の地方放送局など、10ばかりの放送局が、共同番組を作成するなどの目的で結成している共同事業体です。

中央への権力集中・情報集中をなるべく避けようとしているわけです。

全国に流される共同番組のメインスタジオ Hauptstudio も、ベルリン Berlin ではなくてハンブルク Hamburg に置かれています。

(もちろん、ベルリンのスタジオから全国に発信される共同番組もあります。)


長々と説明しましたが、「要するに日本で言うとNHKみたいなもの。ただし、中央にデンと組織の重要部分が鎮座しているわけではなく、民法のネットワークのようなイメージ」ととらえておけば、だいたい合っていると思います。


では、20116月の DeutschlandTrend の結果です。

(画像クリックでオリジナルサイズを表示(別ウインドウ))


Konrad Nachtigallのブログ-201106DeutschlandTrend01

Konrad Nachtigallのブログ-201106DeutschlandTrend02

Konrad Nachtigallのブログ-201106DeutschlandTrend03

Konrad Nachtigallのブログ-201106DeutschlandTrend04

Konrad Nachtigallのブログ-201106DeutschlandTrend05

Konrad Nachtigallのブログ-201106DeutschlandTrend06

Konrad Nachtigallのブログ-201106DeutschlandTrend07

Konrad Nachtigallのブログ-201106DeutschlandTrend08

Konrad Nachtigallのブログ-201106DeutschlandTrend09

Konrad Nachtigallのブログ-201106DeutschlandTrend10

Konrad Nachtigallのブログ-201106DeutschlandTrend11

Konrad Nachtigallのブログ-201106DeutschlandTrend12

Konrad Nachtigallのブログ-201106DeutschlandTrend13

Konrad Nachtigallのブログ-201106DeutschlandTrend14

Konrad Nachtigallのブログ-201106DeutschlandTrend15

Konrad Nachtigallのブログ-201106DeutschlandTrend16

Konrad Nachtigallのブログ-201106DeutschlandTrend17

調査方法(1)

・ 母集団:ドイツに住んでいる18歳以上の有権者。

・ 標本:無作為代表標本

・ 聞き取り方法:コンピュータのアシストを伴う電話調査(CATI)

・ 事例数(標本数):回答者(被問者)1007

・ 聞き取り期間:201166日~7

・ 「今度の日曜に選挙があったら…」の事例数:回答者1507

・ 聞き取り期間:201166日~8



Konrad Nachtigallのブログ-201106DeutschlandTrend18

調査方法(2)

・ 「食べ物の品質」の事例数:回答者502

・ 聞き取り期間:201166

・ 「EHEC 情報政策」の事例数:回答者505

・ 聞き取り期間:201167

・ 誤差:1.4%*3.1%**

・ 回答者500人の場合の誤差:1.9%*4.4%**

* 回答の割合が5%の場合、**回答の割合が50%の場合



最後に、「誤差」についての注釈。

全数調査ができずに、標本調査(サンプル調査)を行ったとき、その標本調査によって得られた結果は、全数(母集団)の本当の値とはズレているかもしれません。


例えば、母集団が1000人で、そのうちソバ派が600人、ウドン派が400人だと仮定します。

標本として10人を選んで聞き取り調査したとき、ソバ派が6人、ウドン派が4人になるとは限りません。

もしかしたら、ソバ派が3人、ウドン派が7人になるかもしれませんし、ソバ派9人、ウドン派1人という結果が出ても、不思議ではありません。


しかしながら、標本を増やして例えば300人にしてみましょう。母集団におけるソバ派‐ウドン派比率を標本が正確に反映していれば、ソバ派180人、ウドン派120人になるはずです。この場合には、「ソバ派90人、ウドン派210人」とか、「ソバ派270人、ウドン派30人」とかいった、母集団における真の比率から大きくかけ離れた結果が出るというのは、めったに起こらなさそうですね。


では、今回の ARD DeutschlandTrend ではどの程度の誤差が見込まれるかというと、それについて述べているのが、「調査方法(2)」の「誤差」以下の部分です。

直感的につかみやすいように、表にまとめました。


Konrad Nachtigallのブログ-FehlerToleranz_(Statistik)

回答者数の多いほうが誤差が小さくなるというのは、納得いただけると思います。


誤差が回答の割合に依存する、という方は、少々分かりにくいかもしれません。

こんな風に考えてください。「母集団10万人。そこから、サンプルとして400人を選びました。質問Aに対する回答は、賛成45%(180)、反対55%(220)。こういう微妙な結果のときには、確定的なことは言いにくい。母集団では、賛成55(55000)、反対45(4万5000)ということも、たまにはあるでしょう。けれども、質問Bに対する回答では、賛成が15(60)でした。こういう極端な結果のときには、さっきのように10%もズレがあるということは、起きにくい。母集団では実は5%でしたとか25%でした、という可能性は低いですよ。」


さて、DeutschlandTrend の誤差は、例えば回答者=1000 & 回答の割合=50%のときに 3.1% ですが、「46.9%53.1% の範囲に絶対に収まる」という意味ではありません。ARD の説明書きには明記してありませんが、誤差の△% というのは、信頼度 95% の範囲を表しています。


どういうことかというと… 先ほどの例で言うと、「46.9%53.1% の範囲に収まる確率は、95% ですよ。もしもドイツの全有権者を対象として調査を行ったときに、これより小さな値、あるいは大きな値が出る確率は、5% ありますよ」ということ。


もう一つ、回答者=500 & 回答の割合=5%の場合も見ておくと、「ドイツの全有権者を対象に調査を行った場合、95% の確率で 3.1%6.9% の範囲の数値が結果として出るはずです。これよりも小さな値や大きい値が出てくる可能性は、5% ですよ」ということです。


ちなみに…  社会調査では、信頼度 95% とならんで、99% という基準というかハードルを採用することもあるようです。DeutschlandTrend でどちらを採用しているのか分からなかったので、自分で計算しました。計算の仕方に興味がある方は、以下のサイトをご覧になると良いと思います。

基本的な考え方:Wikipedia 日本語版「信頼区間」→ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%A1%E9%A0%BC%E5%8C%BA%E9%96%93

実践的:サイト「高校数学の基本問題」より、ページ「母集団,標本,平均,分散,標準偏差」(ページ後半に練習問題があり、その4番目の問題群「母比率の推定」が今回のような問題を解決する役に立ちます)http://www.geisya.or.jp/~mwm48961/statistics/sample1.htm



最後に少し難しい話をしましたが、ここまできちんとお読みになられた皆さん、お疲れ様でした。「統計トリックに騙されないために…」というような宣伝文句の本は、色々と売られているはずです。あまり数学が得意でない方にも分かりやすい本も、何種類も刊行されていると思います。これを機会に統計学をかじってみられてはいかがでしょうか。



終わり




Tags ドイツ ドイツ連邦共和国 ARD ドイツ公共放送連盟 ドイツ国営第一放送 世論調査 社会調査 社会意識調査 DeutschlandTrend ドイッチュラントトレンド ドッチュランドトレンド Sonntagsfrage ゾンタークスフラーゲ 政党支持率 東西ドイツ 統一問題 政治文化 脱原発 原発廃止 2022年 意思決定 政策決定 迅速性 早急性 原子力発電所 原子力利用 安全性 党利党略 選挙対策 一貫性 市民の責任 送電網 送電線 風車 風力発電 増設 新設 迷惑施設 電気料金 電力料金 値上げ 値上がり 価格高騰 放射性廃棄物 核のゴミ 最終貯蔵施設 最終処分場 腸管出血性大腸菌 EHEC O104 食料価格 食糧価格 食べ物の値段 フェアトレード 公正な取引 公平な貿易 南北問題 地方格差