IMF新専務理事選出について
Dominique Strauss-Kahn ドミニク ストロス‐カーン (ストロスカーン) 前専務理事の辞任を受けて、IMF (国際通貨基金)は、新専務理事の選出方法を決定・公表しました。
時事→ http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110521-00000044-jij-int
毎日→ http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110521-00000031-mai-bus_all
産経→ http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110521-00000121-san-int
現時点(2011.05.21. 16:47)では、朝日・読売はまだ報じていないようです。
後任専務理事としては、Christine Lagarde クリスティーヌ・ラガルド蔵相(大蔵大臣・財務相・財務大臣・財政相・財政大臣)が有力視されていますが、新興国・発展途上国は、ヨーロッパ出身者が専務理事に就くという慣例を破りたいようですし、合衆国も欧州に対して揺さぶりをかけているようです。
産経→ http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110520-00000642-san-int
ロイター→ http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110521-00000251-reu-bus_all
確かに、IMFの専務理事の座が事実上ヨーロッパ人の独占席となっている慣行は、最近10~20年間の国際経済上の大変化に対応できていないと言えます。したがって、今回の不祥事を転じて福となすために、古いしきたりを打破することは必要でしょう。
けれども、IMFを根本的に生まれ変わらせるうえで、後任専務理事が欧州人なのか、非欧州人なのかというのは、二の次の問題です。
重要なのは、IMFを社会原理重視の方向で改革するのか、それとも、旧態依然とした市場原理主義路線を固持し続けるのか、ということです。
市場主義・自由主義を過度に押し付けるIMFの政策が、アジア金融危機(アジア通貨危機)の際に各国の経済を却って悪化させた ― という批判は、まだ記憶にある方もいらっしゃるでしょう。
「ヨーロッパ人による専務理事ポスト独占という旧弊に風穴をあける」と、合衆国主導で次期専務理事選任が進められて、合衆国流の市場原理主義・自由主義路線が一層強められてしまっては、「角を矯めて牛を殺す」ことに他なりません。(もっとも、合衆国は、「安全保障上の観点から」という言い訳をして他国の企業を競争から排除したり、他国の「非関税障壁」にケチをつけながら自らはヤード・ポンド法を使い続けたり、農業保護に莫大な公費を投じたり(小規模農家の保護には役立っていないようだが)と、自分の都合の良いように複数の基準を使い分ける「なんちゃって市場主義」ではありますが (ダブルスタンダード、マルチスタンダード))。
日本政府からはIMF新専務理事の選任に関して、今のところ何の意思表示もされていないようですが、ぐずぐずしていてはいけません。
欧州側、非欧州側が自陣の候補者を固めてしまってからでは遅いのです。
「日本としては、次期専務理事には社会原理を重視する人が望ましい、と考える」と、早急に世界に向かってメッセージを発するべきです。