夕食の席に着いた時、妻から「はっきりとは分からないけれど、妊娠したかもしれない」と告げられたのは、毎月のものが来る予定日の約1週間後だったという話を前回までで書いた。とにかく僕は喜んだ。「はっきりと分からないんだったら、妊娠検査薬でチェックしてみるか、一度病院で診てもらったら?」と勧めてみたのだが、妻は「すぐに病院で診てもらっても、はっきりしないことが多いらしいから、病院はもう少ししてから」と言う。



ずっと待ち焦がれていてようやく訪れた吉報なので、一日でも早く両親に伝えたかったのだけれど、妻は「はっきりするまではご両親にはまだ伝えないでほしい」と言う。正直に言って不満だったが、妻の言う通りにすることにして、その後、親と何度か会う機会があったがずっと黙っていた。



妊娠の話があって約3週間後、妻は自分の実家の近くの病院に行った。もちろん、妊娠しているとのことで、写真ももらって来ていた(赤ちゃんの姿はほとんど分からない)。「午前中に行ったのだけど、予想以上に人が多くてかなり待った。来ている人は妊婦さんと言うよりも、不妊治療の人が多いようだった」というようなことを話すので、僕は黙ってうなずいたけど、心の中で「年内に恵まれなければ、僕たちもそういう形で病院に行くつもりだったんだよ」とつぶやいた。



病院から紙切れをもらってきており、そこに「予定日は4月○日です。お住まいの市区町村の窓口に行き、妊娠届を提出し、母子健康手帳を受け取ってください」というようなことが書いてあった。「予定日は4月○日」というのは何かの間違いではないかと思った。僕の計算では5月のはずだったので、妻に「予定日は間違っているような気がするので、今度病院に行ったときに確認しておいて」と言っておいた。



僕のそれまでの知識は、「妊娠期間は、最後の生理の初日から数えて十月十日(とつきとおか)」だった。「とつきとおか」という言葉は、子どものころからよく聞いており、また起点日は受精日や行為日ではなく、最終月経初日から数えるということもどこかで聞いて知っていた。つまり、妊娠期間は最終月経初日から、10ヵ月と10日=約314~315日後だと計算していた。しかし、ネットで調べてみると、これは間違いだったのである。



産科業界(?)では妊娠期間は「40週」と言われており、最終月経初日から40週=280日目が出産予定日となる。また、「妊娠○ヵ月」と言うときの「月」は「1ヵ月=28日」で計算し、しかも全て「数え」で表示する。つまり、最終月経初日がすでに「妊娠1日目・妊娠1週目・妊娠1ヵ月」なのであり、「生理が1週間たっても来ない(最終月経初日から約28~30日プラス7日=約35日後)」と妊娠に気づいた時点で「妊娠35日目・妊娠6週目・妊娠2ヵ月」なのである。



では、「とつきとおか」という言葉は一体なんだったのか? ネットで調べると、「現在の太陽暦でなく、旧暦で計算すれば合っている」という説が有力なようだ。また、「語呂合わせで、覚えやすい数字にしている」説、「特に初産は予定日より遅れることが多いので、10ヵ月に10日をプラスして、妊婦さんが焦らないようにしている」説なども間違いではないような気がする。



病院で正式に妊娠していることが分かったので、早速、自分の両親に連絡した。もちろん、親はたいそう喜び、メールも送ってきた。その文末には「有り難うございました」と書かれてあった。