実は「こうすれば必ず子どもに恵まれる」という定説はない。基礎体温表などを使って排卵日を予測し、その前後に行うという「タイミング法」が全てである。「前後」と言っても、それでは具体的にいつ行うのがベストなのか? 排卵日当日か、1日前か、2日前かということは判然としていない(後よりは前に行った方が確率は高いとは言われている。卵子(半日程度)の寿命より精子の寿命(3日間程度)の方が長いからである。また、2日、3日と連チャンで行うなど数をこなすことが重要だとも言われている)。とにかく、想像以上に卵子や精子の寿命は短く、その寿命の長さにも諸説あり、排卵日前後のいつ行うのがベストなのかという定説がなく、本によってバラバラなことに驚いた。



さらに、では具体的に行為の最中やその前後にどのようにすれば子どもができやすいのか、できにくいのか(例えば、正常位ができやすいとか、行為直後は横になったままの方が良いとか、さらに膝を折り曲げて腕で抱え込んだ状態でじっとしていると良いとか、直後にウォシュレットを使わない方が良いとか)というような具体的で実際的な話は本やネット上には、ほとんど掲載されていない。せいぜいネット上の掲示板に匿名の誰かが真偽の定かではない話を断片的に書き込んでいる程度なのだ。



また、妊娠する確率は女性が30~35歳を過ぎればかなり下がる(20代で約50%の妊娠確率が30代後半で約10~20%に下がると言われている。32歳からがくっと下がるという話もある)。男性だって30代後半にもなれば、個人差はあるがかなり性欲が落ちてくる。そして、「子どもになかなか恵まれない」という悩みを抱えている夫婦は約1割いるとも言われているのだ。



正直に言って、こんなことになっているとは全然知らなかったし、それまで誰も教えてくれなかった。子作り、妊娠に関する正確な知識、詳しいノウハウというものが、特に男性には全然伝わっていないのである(もちろん、結婚するまでちゃんと調べなかった僕も悪いとは思うが)。「危険日に中出しすればできる」「健康な男女が結婚すれば自然にできるものだ」という程度の認識でしかなかった。それよりも、「エッチするなら必ず避妊しないといけない」「エッチするのはいいがエイズや病気がコワイ」「出来心でエッチしちゃうと女性は後がコワイ」「キュートでナイスバディの若い子とエッチしたい」というようなことばかりに気持ちがいってしまっていた。



一方、女性の方はと言うと、「妊娠、出産は30代でもまだまだ大丈夫」というようないい加減な意見や情報がネット上で散見され、女性誌や女性向けのWebマガジンなどでは意図的に「年齢」や「出産」という問題から逃げ、ますます高齢化が進む独身女性たちに都合の良い言説ばかりを並び立てているとしか思えない、という話は以前に当ブログで書いた。結局、現状では子作りや妊娠の正しい知識、詳しいノウハウは隠された状態にあり(本やネットである程度時間をかけて根気良く調べないと分からないようになっている)、それはうがった見方をすれば、「不妊治療」で病院を儲けさせるためではないかと勘ぐりたくなるほどなのである。



僕たちが小・中・高校生の時に受けた性教育は、「避妊をせずにセックスをすると妊娠してしまい、両親が若年者の場合は色々と困った問題が起きる」「不特定多数の人とセックスすると、梅毒など恐ろしい病気になる(当時はエイズはまだなかった)」ので、セックスはみだりにするものではなく、また行う場合は避妊することが大切だというようなものだった。今、小・中・高校でどのような性教育が行われているのかは知らないけれど、避妊の方法や病気の怖さを教えるのはもちろん大切だが、どうすれば子どもが生まれるのかという「タイミング法」とそれでも絶対的な子づくりの定説はないという事実、男女の間には「未婚」「晩婚」「DV(ドメスティック・バイオレンス)」「不妊」「ED(勃起不全)」「セックスレス」など、さまざまな問題があり、多くの人たちが苦しんでいるという厳しい現状をキチンと知らせるべきではないか。



そして、もっと言えば、「晩婚」が大きな原因となって「不妊」や「ED」などが起こり、多くの男女が苦しんでいる現実を知れば、「相性が合わないような気がする」などと言って、お見合い相手を断ることがワガママ以外の何物でもないということを理解できるのではないだろうか。